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カタストロフィ・メシア  作者: 汐海朔夜
一章『出会いと始まり』
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七話・始まり

 三人がキョウトの元へ駆けつけると、そこでは侵入者との激しい戦いが繰り広げられていた。


「姫様、アインさん! 大丈夫ですか?」

「サクラか……姫様も、ご無事でしたか」

「ああ、よく耐えてくれた。後は任せろ」


 侵入者は三人を見つけ、特にキョウトの前に庇うように進み出たメシアを笑顔で見ながら口を開く。


「さて、新たな手駒か。だが、お前の存在は私には無駄なのだよ、姫壊メシア……【魔力を喰らえ(マナイーター)】!」


 侵入者は奇怪な呪文を唱えると、先程とは別の魔術式が浮かび上がる。


 ──ぐらり


 四人の身体から、力が抜けていく。


「なん、で……もしかして……力が、吸い取られるの……!?」

「これは……強力な【魔力吸収(マジックドレイン)】ッ! まずい、このままじゃ!」


 侵入者の奇策に対し、メシアは真っ直ぐと侵入者を見る。


 その間にも侵入者は魔術をどんどん強化していき、魔力の全て奪わんとする。


 しかし、メシアは一歩も退かずに侵入者を冷たく見る。


「……ふぅ」


 小さくため息をこぼし、右手でサングラスを外すと。


「……その右目の黄金の瞳孔は……まさか、魔眼か……ッ!?」


 侵入者の言うとおり、メシアの右目は"滅界の魔眼"と呼ばれる全てを滅ぼすことができる"魔眼"だ。


「──"滅界の魔眼"」


 メシアの右目が黄金に輝く。それは、全てを滅ぼす力を秘めていた。


 メシアが、魔眼を開放した。


 次の瞬間、全てが壊れていた。


 侵入者の【魔力吸収(マジックドレイン)】も、先程まで猛威を振るっていた侵入者の魔力も……侵入者自身も。


「ぇ…………ぐ、ぁぁあああああああ!?!?」


 侵入者の顔が歪み、彼の周囲の魔術が崩れ去る光景が広がる。


 メシアが所有する"滅界の魔眼"は、侵入者の存在そのものを消し去り、彼の力を奪い取ってゆく。


 その男の全てが分解されて"魔眼"に吸収されていき……ついに、男は欠片も無くなった。


 それだけで、この戦いは終わった。


「これで、終わりだ……」


 メシアは静かに言葉を漏らすと、"魔眼"を閉じ、右手でサングラスを再びかけた。


「姫様、すごかったです! めっちゃ強い!」

「ありがとう、サクラ。キョウトもちゃんと無事だな」

「ええ、大丈夫です」

「それにしても……本当に強力ですね、その"魔眼"」


 メシアの"魔眼"。


 それは、暗黒蓮華機関の施設によって被験体とされていた時に獲得したものだ。


 つまりアイツら暗黒蓮華機関のお陰なのだが……感謝はしない。というかしたくない。


 侵入者の残骸が消滅し、部屋の静けさが戻ってきた。


「よし、皆、お疲れ様。これで一段落だな」


 キョウトが言うと、サクラは安堵の表情を浮かべた。


「……残念(ディサポインティング)。私の活躍が……」


 アインは活躍できず微妙な顔だが。


 しかし、その時、アジトの外から異変が伝わってきた。


「……何だ、これは?」


 メシアが窓の外を見ると、暗い影がアジトを覆い尽くすように迫ってきていた。


「……まだ、終わらないようだな。次が来る」


 メシアの言葉が、次なる戦いへの序章を告げていた。


「何が起きているの?」

「外を見てみろ。このアジトを包む影がある」


 メシア言う通りに、サクラは窓から外を見た。


 そこには。


「これって……まさか、帝国の大軍と同じぐらい?」

「さすがにそれはない……筈だ。だが、それなりの数だな……おそらく、暗黒蓮華機関の手先だろう」


 キョウトがサクラの問いに答える。


 先程の戦闘によって集まってきていた他の団員たちも、その言葉に動揺を見せる。


「キョウト……それは、我々に襲い掛かってくるということか?」

「まぁ、そうだろうな。今回の侵入者も、おそらくその前哨戦といったところだろう」


 突如として訪れた静寂を、団員達の緊張感が満たしていく。


「姫様、どうします?」

「……戦うしかないだろうな。私達を狙ってきた奴らが、ここまで来て引き下がる訳がない」


 メシアの視線が、一瞬冷たくなる。


「……皆、準備を整えろ。すぐに次の戦いが始まるだろうからな」


 団員たちはメシアの指示に従い、迫りくる脅威に駆け足で備え始めた。


 剣を装備する者。


 銃の弾を確認する者。


 魔道具を揃える者。


 それらを横目で見たあと、メシアは昨日拾ってきたアインに目を向けた。


「アイン……すまない。巻き込んでしまったな」

問題皆無(ノー・プロブレム)。当機はマスターに従うだけです」

「……従ってくれるなら別の部屋で寝てほしかったが、それは言わないようにしよう」

指摘アイデンティフィケーション。マスター、言っちゃってます」

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