六話・対処
「…………」
キョウトとサクラが驚愕しつつも戦意を見せる中、侵入者はその威圧的な構えを崩さないまま、告げた。
「これが、お前たちへの最後の慈悲である。姫壊メシアをこの私に引き渡すのだ。もし断るというのなら──ここにいる者全てを葬る」
魔法陣が侵入者の手元で妖しく輝き、それにキョウトとサクラは立ち向かっていた。
「……キョウト、どうするの?」
「俺たちが最優先すべきなのは、姫様たちの無事。だから、時間を稼ぐぞ」
キョウトはサクラに告げると、杖を構えて呪文を唱える。
「【召喚せよ】っ!」
それは、召喚魔術と呼ばれるものだ。
魔法陣からキョウトの使い魔である魔物が召喚される。
侵入者は一瞬動揺したが、すぐに取り直し魔術式は崩れずにいる。
「面倒な奴だな……サクラ、姫様たちが此処にいないということは、奴の引き渡せという言葉から考えると逃げたというのが妥当だ。だから、そちらは心配しなくていい。それより、この状況で眠っているアホ共を引っ張り出してこい」
「アホって……了解!」
サクラはキョウトの指示を受け、キョウトに背を向けて走り去った。
侵入者はキョウト達が従わないと見て、魔術式への魔力を高める。
「【障壁よ】」
キョウトは簡易的な防御魔術を唱え、侵入者に杖を向けた。
「さぁ、侵入者。格の違いを見せてやるよ」
キョウトが笑った瞬間、侵入者の魔法陣が発動し、奇怪な力場が発せられる。
「ぐ……!? これは……まさか、重力か!?」
「正解だ」
重力魔術……というものはあるが、制御が難解であり使い手は全くと言っていいほどいない。
驚くキョウトを前に侵入者が更に魔力を魔法陣に込めると重力が増大し──
──パリィン!
ガラスが割れるような音を出して障壁が割れて、部屋中に衝撃が行き渡る。
「ぐっ……」
キョウトはなんとか立ち上がっているが、星の力である重力の前には無力だ。
先程呼び出した使い魔は、既に押しつぶされている。
「なかなか強い障壁だが、君単独でこちらに立ち向かうのは中々に無謀だぞ」
侵入者は不敵な笑みを浮かべ、魔術の力を更に高めていく。
■□■
一方、サクラは急いで団員達を起こしていると、少し離れた場所にメシアとアインが居た。
「サクラ……? こんな場所で何をしてるんだ?」
「え、姫様っ!? 逃げたんじゃ……」
「逃げる? いや、侵入してきた暗黒蓮華機関をあらかた倒し終わったところなんだが……」
その二人の周りには、殺されている魔術師の死体がいくつもあった。
階級は、四級か五級という下っ端の者ばかり。
「実は、こちらに暗黒蓮華機関の一級魔術師が! 今はキョウトが抑えていますっ!」
「一級魔術師? ということは、こいつらは陽動……そちらが本命か。分かった、すぐに行こう」