五話・侵入者
「…………」
メシアとアインが眠り、〈HEAVENS〉のアジトは真夜中の静寂に支配されていた。
アジト内の雰囲気は、あれだけ騒いでいたというのに、今は静かだ。
しかし、その静寂を破る侵入者が、アジトに忍び寄っていた。
「…………ッ!」
そんなアジトの一室、先ほどアインに説明されていた魔術師のキョウトが、気配察知の魔術式が反応したことで目を覚ました。
彼は緊急時だと思い、懐から杖を取り出す。
「侵入者か……暗黒蓮華機関か? クソッ。これは姫様に知らせねばならないな」
キョウトはそう呟きつつ、自室から飛び出て反応のあった場所へ行く。
そこは、メシアの自室に近かった。
それと同時に、他の〈HEAVENS〉のメンバー達も侵入者に気付いていた。……全員ではないけれど。
サクラやダイスケ、姫壊メシアから信頼されている(と自分で勝手に思っている)サポート役(自称)であるユキも、部屋から廊下に出ていた。
その中、サクラは偶然近くにいたキョウトを見つけた。
「ねぇキョウト……侵入者、だよね?」
サクラがキョウトに尋ねる。
「ああ、そうだな。姫様はこういう事の感知が苦手だ、まだ気が付いていない可能性が高い……」
「うん、早く知らせないと。ねぇ、あのロボットさん……えっと、アインは?」
「彼女もメシアの部屋にいる筈だ。急ごう」
キョウトとサクラはお互いに頷き走る。
この時点で、キョウトは嫌な予感があった。
──バンッ!
メシアたちに侵入者を伝えるために、勢いよくドアを開けた。
「姫様、起きてください! 此処に侵入者が……」
……その瞬間、キョウトとサクラの二人は驚愕し、次には戦意を見せていた。
「──お前、誰だ?」
「ほう……もう来たか」
そこには、侵入者らしき人物が立っていた。
すぐさま布団を見るが、そこにはメシアもアインも居ない。
キョウトが目を戻したその男の服装は、その銀色の模様が入っている黒いシャツの上に黒いラインの入った白衣……暗黒蓮華機関の制服だ。
……話は変わるが、暗黒蓮華機関には階級というものがある。
"五級魔術師"
"四級魔術師"
"三級魔術師"
"ニ級魔術師"
"一級魔術師"
数字が小さくなるほど強力な魔術師であり、更にその上には幹部といえる最高階級の"神秘の到達者"という別枠があり、そこにいるのは機関長を合わせてたったの七人なのだが……まぁ、それは今はいい。
そして、その階級は白衣に入っているラインの色で明確に分かる。
五級はライン無し、四級は青色、三級は赤色、ニ級は緑色、一級は黒色だ。
そして、目の前に居る男の白衣のラインは黒色……つまり。
「お前たちは、姫壊メシアの仲間か?」
その侵入者の階級は、トップに近い"一級魔術師"!
「くっ、【強化せよ】っ!」
サクラがナイフを取り出すと同時に身体強化を発動させて斬りかかるが、侵入者はそれを軽く躱し、手元に不気味な魔法陣浮かべて発動させる。
「……これが、お前たちへの最後の慈悲である。姫壊メシアをこの私に引き渡すのだ。もし断るというのなら──ここにいる者全てを葬る」
魔法陣に魔力が収束していき、部屋の中を妖しい光が包む。
その様子に、キョウトとサクラは冷や汗を感じた。