十四話・流紋ヘクタ
気絶したフェリを背後に、メシアとアインは暗黒蓮華期間、神秘の到達者《憤怒》の流紋ヘクタと対峙する。
「貴様ら……そうか、〈HEAVENS〉のリーダーである《偽の救世主》の姫壊メシアと、あの古代から存在している研究所の侵入不可区域で眠っていた機械の乙女か」
「ああ、正解だ」
鋭い目を向けるヘクタに、メシアは笑顔を崩さない。
メシアの余裕ぶった態度に機嫌を悪くしたのか、ヘクタは舌打ちと共に魔力を引き出していく。
「……良いだろう、相手をしてやる。【我の領域を──」
──パン!
「ぐぁっ!?」
乾いた音がした。
見れば、ヘクタの右腕が撃たれたようで、ドクドクと流血していた。
「わざわざ結界を再展開させる余裕を与えるとでも?」
右手に握られているメシアの銃からは煙が出ていて。
「ぐぅ……っ、貴様ぁ! 我が怒り答えよっ、《憤怒の指輪》ッ!」
するとヘクタの右手……正確には、その人差し指にある桃色の指輪に赤黒い力の波動が急激に集まっていく。
なんて禍々しい光景なんでしょうか……と、アインは演者ぶったような反応をしていた。
「死ねッ、自称救世主め! "撃怒崩界"ッ!」
そして、ついに放たれた。
帝国魔血師団には撒き散らすことしかしていなかった純粋な破壊エネルギーを強制集束させ、それが一つのビームと化してメシア達を襲う。
そんな破壊の塊というべき攻撃を。
「アイン」
「了承。【次元完全断絶】、【展開】」
アインによって次元ごと完全に遮断されたことにより、メシア達には届かない。
「なぁッ! そんな、バカなことが──」
「──あるのさ。こんなバカなことが、ね?」
何時の間にか"撃怒崩界"という権能の攻撃に紛れてヘクタの背後に回っていたメシアは、余裕たっぷりに言い返した。
「【発砲】」
──ドパァン!
あのメシアの濃密に圧縮された魔力が入った一発の弾丸が、ヘクタの心臓を正確に貫いた。
「が、ぁ……ッ!?」
胸からは、たくさんの血が溢れ出す。
──バタン。
ヘクタの大きい身体が地面に倒れ、大きな音が響いた。
確実に、死んだ。
それを確認したメシアは、短く息を吐いた。
「楽勝。前に戦った朱翠セレアの方が強かったです」
「今のは奇襲が本当に上手く行ったからだ。あの結界に閉じ込められていたら、問答無用で何もできずに死んでいただろうな。さて……」
メシアは周りをぐるりと見回す。
「……こいつらは、どうしようか」
帝国魔血師団の団員達を見て、メシアはどうしようかと悩む。
全員死んでしまっていたらどうすることもできないが、所々血みどろながら生きている人もいるようなのだ。
連れて行くことはできないが……このまま放置するのも後味が悪い。
どうするべきかと悩みだしたところで、アインがメシアの肩に触れた。
「発見。追加で仲間の人達が来たようです」
「お、丁度良いな……こいつらを預かってもらおう。私たちはとっとと去るぞ。捕まる」
「疑問。どうして当機たちが……」
「国公認の組織じゃないからな、仕方ない」
そこまで会話すると、二人は身体強化も入れてその場から走り去った。
生き残った魔術師たちは、のちに彼女等をこう語ったという。
圧倒的な光が、全ての闇を払ったと。
謎の解説役「さて……どうも、作者の説明が下手ということで何話目からか作られた謎の解説役です。解説さんと呼んで下さい。
今回は、瞬殺された流紋ヘクタさんについてです。まず、この状況から弱そうに見えますが、結界内でのルールはクソすぎる初見殺しの技です。
『自分の攻撃は絶対に当たる』というルールにしたら実際にそうなりますし、『敵の攻撃は無効』とすればそうなります。
なので、"破界の魔眼"で結界破壊からの奇襲じゃなければ瞬殺されるのはメシアの方です。
それに、《憤怒の指輪》による破壊エネルギーによる攻撃ですが、アレは空間断絶でもなければ防げない威力です。基本的に崩壊概念が含まれているので、土の壁や障壁では直ぐに貫通されて終わりです。分かりやすく言えば、核融合による崩壊と同程度の威力です。
別の作品に出ていたら普通にラスボスやれるスペックですね……死にましたけど」




