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宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
その後の展開
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焼きそばとココの変貌

 久しぶりにミルク温泉に来た。

 相変わらずの盛況ぶりで、予約待ちの人でロビーが溢れかえっていた。チージョ星で行列を見たのは初めてである。新設された食事処も満員御礼のようだった。

 食事処のすぐ横には、自販機が設置されていて、物珍しそうに購入する人もチラホラ見受けられた。全体的に赤を基調とした作りで、遠くから見たら達磨にしか見えなかったが……。

 温泉に浸かり、自販機で喉を潤し、腹が減ったら食事をする。待ち時間は景色を見て回ったり、休憩所で知人とおしゃべりしたり。ミルクさんの思い描いた温泉がそこにはあった。


「大盛況だな」

「いつ来てもこんな感じだよ」

「チージョ星で行列かぁ~。ある意味スゲェーな」

「ホント。新鮮な感じね」


 ついこの間までは考えられなかった光景だ。「待つ」という概念がない世界での行列は感慨深いものがある。

 受付フロアーを不思議な感覚で眺めていると、室内と露天を繋ぐ渡り廊下から知的メガネ美女がしなやかな足取りでやって来た。


「あれ、宮本君?」

「おおっ、ミルクさん!」

「こっちに来てたの?」

「はい。色々事情がありまして」

「来てるなら連絡してよ。水臭い」

「ハハハ。ごめんなさい」


 いつ見てもいい女である。知的センス溢れるメガネから覗く柔らかな瞳。弾ける笑顔の奥に潜む妖艶な香り。つやっぽい唇に良質なボディー。

 しかも仕事の出来る知的美女。俺のハートを鷲掴みにする最高の女性である。


「そうそう。宮本君に報告があるの」

「何ですか?」

「あのね……」


 チンカースバロ星人対策に置いて行ったホースと水風船は意外にも役に立ったという。

 あの後、住宅街に何度か出没した。ミルクさんのマンションにも姿を現したんだとか。そこで、俺からレクチャーされた方法を実践してみた。住民が一丸となってホースや水風船を使った所、難なく退治できたらしい。住民も安心して暮らせるようになり、マンション内に笑いが戻ったという。


「ホント、宮本君には感謝してるわ」

「いやぁ~。まあ~」

「住人も助かったって喜んでるわよ」

「何があっても俺に任せて下さい!」

「ありがとうね」


 そう言うと、ボヨ~ンと抱っこされた。

 はあぁ~ん。心安らぐ弾力。僕はミルクさんが大好きです!



「そうだ。ココ焼きそばが完成したの」

「ラムから聞きました。今日はそれを食べに来ました」

「それなら好都合よ」


 ミルクさんは俺らを食事処へ案内した。

 そして厨房へ行き、奥から出来立てホヤホヤの焼きそばを持ってきた。


「これがミルク温泉名物のココ焼きそばよ」

「おおっ、旨そうですね」

「私も食べたけど完璧よ」


 皿に盛られた一品は、どの角度から見てもまさしく焼きそばだった。肉系は入っていないものの、キャベツ的なものと一緒に炒められていて、ソースの焦げた匂いまで忠実に再現されていた。


「ラム。半分こしようぜ」

「うん」


 取り皿を貰い半分ずつ食べた。

 少し甘味の強い味だが決して不味くはない。味覚に関しては好みの問題で、俺はしょっぱい方が好き。けれど甘味の強いチージョ飯に慣れている人なら、断然こちらが美味いと感じるであろう。


「ソースは、ココのお父さんが試行錯誤して作ったの」

「飲料メーカーですから、新製品開発はお手のものですね」

「それでも結構大変だったらしいわよ」

「そうでしょうね。この星には無い味ですからね」

「ようやく形になったから、今度は商品化を目指しているらしいわ」

「さすが社長。抜かりないですね」

「ハハハ。ホントね」


 温泉でまったりして欲しいというミルクさんの望みも叶った。ココが意地を張ってでも貫いたチージョ焼きそばも形になった。自販機も周知されるようになった。

 時折、ガタン!とカプセルが出てくる音が聞こえると、色んな思い出が蘇って目頭がヌプヌプする。


「良かったですね」

「それもこれも宮本君のお陰ね」

「いやぁ~。それほどでも」

「あと、宮本君にちょっと聞きたいんだけど」

「何でしょうか」

「最近のココなんだけど、少し様子が変なのよ」

「え?」

「銃みたいなモノで木の葉を撃ち抜いてるの」

「……」

「注意したら「隊長の心意気」とか言って聞かないのよ」

「……」

「何か知ってる?」

「……いや、あのう」


 お前の心意気は分かる。そっちの世界にいざなったのは俺だから申し訳なく思う。ただ、影響受け過ぎだぞ。将来スナイパーにでもなるつもりかよ。


 ココの変貌に何とも言葉が見つからず「まあ、そのうち飽きるでしょ」と、やんわりスルーした。



 ミルクさんはやることが満載で忙しく働いていた。

 この所は惑星全体に周知されたらしく、昼夜を問わず多くの人が訪れるという。

 地球のように割り込んだり、難癖を付けたり、意味不明なクレーマーはいないが、それでも多少のトラブルがあったりと、心安らぐヒマがないんだとか。


「ミルクさん。あまり無理しないでくださいね」

「大丈夫よ。私こう見えてタフだから」

「健康第一です」

「ありがとう」


 これ以上邪魔しても悪いと思い、俺とラムは帰宅した。





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