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宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
番外編 チージョ星に危機が
92/100

戦闘準備開始

 ミーーン、 ミーーン。

 セミの鳴き声がした。



「三次。起きて」

 大丈夫だ。チージョ星は俺が守る。


「ちょっと。分かったから起きて」

 チンカースバロ星人……勝利は……我が手に。


「なに言ってんの」

 ジーク・サンジー!


「起きなさーーーーい!」

 額を硬い何かで叩かれて目が覚めた。


「ここはどこ?」

「チージョ星よ」

「チンカースバロ星人は?」

「誰よ、チンカースバロ星人って」

「……」


 俺がチージョ星の為に10万光年を往復している最中、君は優雅にお茶をしていたのかい? それはそれで構わないのだが、さっきから額がズキズキするのだ。

 ……もしかしてその手に持ったコップか?



 ラムに叩き起こされた俺は、素早く研究室へ行った。そしてホースと水鉄砲とゴム風船をパパに見せた。


「パパさん。これ作れますか?」

「何これ?」

「これはホースと水鉄砲とゴム風船です」

「……はい?」

「水を噴出させる道具です」

「水を噴出してどうするの?」

「え?」


 そういえば、慌て過ぎて説明を忘れていた気がする。


 彼らの名前はチンカースバロ星人という。地球で格闘した時に本人から直接聞いたので間違いない。彼らはチージョ星に何人も潜んでいる。仲間がどうこう言っていたので、これまた正しい情報である。

 奴を川へ投げ捨てた時、一瞬で消滅してしまった。そして持っていた銃から検出されたのは水道水である。以上の観点から推測するに、チンカースバロ星人は水に弱いのではないか。

 水に弱いのであれば、地球には水を噴出させる道具がいくつかある。

 ホースは蛇口に取り付け、先っぽを押しつぶせば遠くまで飛ばすことが出来る。しかも2匹まとめて撃退する事も可能である。

 水鉄砲はその名の通り銃で、タンクに水を積んで空気で押し出すためターゲットに近づかなくても攻撃が出来る。

 風船はゴムの中に水を入れてそれを相手に投げつける。いわば手榴弾のような役割。軽く扱いやすいので女性でも子供でも身を守る道具として使える。

 それらを思いついたので地球まで取りに行った。

 と説明した。


「す、素晴らしい。名推理だ!」

「い、いやぁ~」

「三次君。凄いよ君は!」

「それほどでもありませんよ」

「相手を見極め、弱点を推理し、行動力にも優れている。アッパレだ」

「この俺に任せてください!」

「君の天才的頭脳は宝だよ」


 た、宝なのか? 俺の頭脳が? 

 褒められたら調子に乗るのは宮本家伝統だが、いくら何でもそれは言い過ぎな気がするぞ。


「三次君。貴重な情報をありがとう。私はこれから防衛本部に報告するよ」


 そい言うと、パパは滑らかに消えて行った。

 残った俺はラムにホースの使い方と水風船の作り方を伝授した。


「この蛇口にこのホースを取り付ける」

「こうね」

「そして蛇口を捻ると水が出るだろ?」

「うん」

「この先っぽをギュッと潰すと、水が2手に分かれて遠くへ飛ぶんだ」

「へぇ~。凄いね。結構遠くまで飛ぶんだね」

「本来は花や庭に水をやる道具なんだけど」

「地球ではこれでお庭に水を撒くの?」

「そうだよ」


 蛇口の口径が合うか心配だったが、無理やりねじ込んで何とかなった。普段からMy露天風呂として何度もお世話になっている外水道である。「地球の作りと似てるな」と思っていたので、たぶんホースは取り付け可能だろうと推測した。

 ダメならパパに作ってもらえばいいし。

 20メートル以上あるホースは使いにくいため、2メートルくらいに切り刻んでショートホースにした。

 次に水風船の作り方を教えた。


「この口から水を入れる」

「ここね」

「ある程度膨らんだら、ここを結ぶ」

「こうね」

「これで完成だ」

「丸くて可愛い」

「盆踊り大会の屋台で見た事あるだろ?」

「ああ。あれって、これだったの?」

「まあ似たようなものだな」


 ラムは水風船を両手でポンポンと上下に弾いた。その拍子に風船がパン!と割れ、足元が水浸しになった。


「きゃっ。割れちゃった」

「あまり強く弾くと割れちゃうんだよ」

「繊細なのね」

「これは女の子でも扱いやすいだろ」

「うん。作り方も簡単だしね」


 これでラムは何とかなりそうだ。後はココとミルクさんである。

 色んな事で何度もお世話になり、温泉まで一緒に入った仲だ。柔らかい風船を味わった肉体関係にある。惑星イップターサイを熱望する俺にとっては、この2人の安全を確保するのも役目であろう。


「ラム。これをココとミルクさんの所へ持って行ってくれないか」

「分かった。渡してくる」

「くれぐれも町には出るなよ」

「うん。分かった」

「瞬間移動で素早く帰って来いよ」

「分かった」


 ホースと風船爆弾を持ったラムは頭上へ消えて行った。


 バシャ。バシャバシャ。


 俺の頭上に風船爆弾が降り注いだ。爆弾でビショビショになった後、ホースがコツンと落ちてきた。

 ドリフのコントかっ!


「ごめんごめん」


 ラムが再び姿を現した。


 そう。すっかり忘れていたが同化である。

 チージョ星にある物質は全てが同元素で表される。仮にラムの元素記号をHだとしよう。建物、木々や草花、水から空気に至るまで記号はHである。

 全てが同じ物質であるため、同化という特殊能力が使えるんだとか。しかし、風船とホースは地球素材の物質で次元を超えられないのだ。

 頭が壊れそうなので小難しい説明はこのくらいにするが、要するに、ラムがこれらを持って移動するのは不可能という事だ。

 となると、誰かが直接現地へ運ぶしかない。

 現時点で彼女を一人歩きさせるのは危険極まりない。いくら瞬間移動が可能とはいえ、逃げ遅れたら大変である。それに彼女は運動神経が悪い。


「仕方ねぇな。俺が行くか」

「大丈夫?」

「ココやミルクさんにもしもの事があったら大変だからな」

「気を付けてね」

「まあ、何とかなるだろ」

「無理しちゃダメよ」

「心配すんな」

「ケガだけは絶対にしないでね」

「大丈夫だ。俺を信用しろ」

「絶対に約束だよ!」

「その代わり、お前は家から一歩も出るなよ」

「分かった」


 風船をメットインに大量に押し込め、ウォーターガンを満タンにした。

 頬を2~3回ブッ叩き、気合十分でクルマイスに乗った。


「よっしゃ。どっからでもかかって来いやぁぁーー!」






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