未来は俺が守る
地球へ戻った俺は倉庫へ飛び込んだ。
「確かこの辺だったよな」
小学生の時、例のイカレポンチ2人と河原で遊んだウォーターガンがある。空気の圧縮で飛ばすため割と飛距離が出るやつだ。
初めは小型のピストルタイプで「ビチャビチャになったら負け」というルールを作り、和気あいあい遊んでいた。俺と友則は運動神経がいいので攻撃を上手くかわしていた。克己はちょっとドジなところがあり、負けるのはいつも奴だった。
何度も負け続けた克己は、金に物を言わせてショットガンタイプを持ち出した。これは卑怯な手口である。小型ピストルとショットガンでは飛距離が違う。向こうは長距離から狙い撃ち出来るが、こっちは接近戦でしか撃ち合えない。高笑いしながら俺らを壊滅させた。
すると、怒り狂った友則が噴霧器を背負ってやって来た。
もはや遊びではなくなった。最終的には「ビチャビチャになった者の勝ち」になった。
そんな心温まる思い出の品がこの辺に……。
「あった!」
ショットガンが2丁とピストルタイプが1丁出てきた。小型ピストルを制服のポケットに入れ、ショットガンを両手に構えた。
「よし。次!」
水鉄砲を手に庭へ向かった。そして庭先に置いてあるホースを肩から斜めにぶら下げた。
俺的にはゲリラ戦に向かうコマンドーの気分である。
「さて、最後に」
準備を整えた俺は、その格好で近所の駄菓子屋へ走った。
「こんにちは。お久しぶりです」
「ギ、ギャァァァーーー」
平和な店先に突如現れた変態コマンドーを見てパニックになる駄菓子屋のおばちゃん。
「さ、三次。とうとう狂ったのかい?」
「おばちゃん。ゴム風船を全部くれ」
「な、何を言ってるんだい?」
「ちょっと訳アリでね。あるだけ全部欲しいんだ」
かなり気の毒だと思ったのだろう。奥から大量の風船を箱ごと出してくれた。俺は持てるだけ購入し、それら全てをポケットに詰め込んだ。
「あんた。本当に大丈夫かい?」
「別に狂った訳じゃないよ。これは特殊任務だから」
「中学生にもなって……」
あきれ果てるおばちゃんに別れを告げ、ダッシュで宇宙船へ向かった。
ホースを斜めにぶら下げ、両手に水鉄砲を持ち、ポケットをゴム風船でパンパンに膨らませ、「チンカス退治じゃぁぁーー」と叫びながら商店街を駆け抜ける制服姿の中学生。もはや通行人は目を合わせる事さえ拒んでいた。
宇宙船へ飛び乗った俺は戦闘モードで考えた。
もし奴らが町中を襲ったとする。素早く駆け寄ってウォーターガンで殲滅する。俺一人じゃ大変だから町の人にも手伝ってもらおう。ホースで水をぶっかけりゃ、あっという間に消滅するから女子供でも楽勝だな。
ラムんちは俺がいるから安心だが、ココやミルクさんは今頃不安に駆られているだろう。特にミルクさんは1人暮らしだと聞いている。頼れる人のいない暮らしは相当な恐怖に違いない。ここで助けに向かえば、「三次。ずっと私の傍にいて!」という事になり、ミルクさんと同棲生活が始まる。
「ご飯にする? お風呂にする? それとも……」
「もちろん、君が最優先だよ」
「いやだぁ~。もう三次ったら」
「いいだろ?」
「でも、こんな所で恥ずかしい……」
「今日は君の全てを凝視しちゃうよ」
「み、見ちゃらめぇ~」
ガハッ! 明るい未来が待ってるな。
ところで、チンカースバロ星人の生態ってどうなっているのだろう。それが分かれば対策も楽になるかもしれない。あの見た目だと男だと思うのだが、もしかして女性バージョンもいるのかな。
もしいるとしたら……こりゃ俺の圧勝だな。
日頃から女体に関しては猛勉強しているからな。奴らの弱い所をドンドン突いてやる。
チージョ星のみんな、待ってろよ。今すぐ助けに行くからな!




