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宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
第三部 やっぱり地球は面白い
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こぼれ話 ココとの約束

 ラムの退院祝い後、地球へ帰るために宇宙船に乗り込むと、ココがモジモジしながら話しかけてきた。


「少々お尋ね申する事がありまして」

「なに?」

「地球に行った際の、あの四角い物体ですがぁ~」

「四角い物体?」

「中から奇妙な液体が出土するヤツです」

「ああ、自販機か。それがどうしたの?」

「その者のスペックをお聞かせ願えればと想像してまして」


 地球温泉の視察に行った際、自販機を目にしたココは、その摩訶不思議な魅力に憑りつかれた。

(第二部 名残惜しいが 参照)


 丸型形状しか見た事のないチージョ星人が生まれて初めて見た真四角の箱。それだけでも驚きなのに、その箱から飲み物が出てきた。ペットボトルという未知なる入れ物で、しかもボタン1つで自分の好きな味を選択出来る。彼女にとっては前代未聞の空前絶後の斬新奇抜に映ったのだろう。

 怒涛の質問攻めに合ったのを思い出す。


 お金を入れてやると、体中を小刻みに痙攣させ、転がり出た途端に「イィィ!」と唸って恍惚の表情を浮かべた。


「オシッコ漏らした訳じゃないよね?」

「こ、これはエロスの領域!」

「……」

「さ、三次殿。吾輩を揺さぶるコヤツは何者ぞ?」

「これは自販機と言うんだよ」

「何故にゆえ、中から転がり出るので?」

「ジュースを冷やしてるんだよ」

「ほうほう。飲み物を冷やすので?」

「その方が冷たくてウマいだろ」

「なるほどの道理」

「……」


 チージョ星に自販機は存在せず、キンキン冷えた飲み物を気軽に入手出来ない状態らしい。冷えたジュースを飲みたい場合、自宅の冷蔵庫で冷やすか、スーパーなどで購入するか。もしくは喫茶店へ入って注文するのが普通である。

 日本のように「喉が渇いた。おっ、自販機がある」と、手軽に喉を潤す手法がないため、その性能の高さに度肝を抜かれていた。その後、自販機を見つける度にボタンを押していたのを記憶している。



「あのような便利グッズがあれば快楽かと」

「ま、まあ」

「砂漠の喉を満たす最高の手法」

「言われりゃ、そうだな」

「しかもチンコカチコンだぞえ?」

「……確かに冷えててウマいわな」

「内部構造が気になり、眠れぬ夜でして」

「なるほど」

「三次殿は何かご存じかな?」

「見た事はあるけど、俺も詳しい事は分かんないな」

「さようの所業で……」


 教えてあげたいのは山々だが、俺自身も内部構造を知らない。複雑な仕組みが絶妙に絡み合っている。お金を入れてボタンを押したらジュースが出てくる。この程度の知識力しかない。

 しかしココは、真っ直ぐな目で俺を捉えている。


「……地球に帰ったら調べといてやるよ」

「まことしやかか!」

「どこまで理解出来るか分かんないけど」

「三次殿。お頼み申すです」

「分かった」


 頼まれたらイヤとは言えない。固い約束をして地球へ戻った。


 その後、近所の犬に吠えられて頭に来たので、奴の縄張りにションベンを引っかけたり。

 克己がR18指定のゲームを持って来て「クリック100回だぁー」とのたまい、朝まで練習させられたり。

 友則がお尻プリプリの熟女を見てベルトに手をかけたため、危険をいち早く察知してドロップキックで気絶させたり。


 そんな忙しい日々を送っているうち、約束などすっかり忘れてしまっていた。


 ココ殿。申し訳ござらん。





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