相変わらずのパパさん
ミーーン、 ミーーン。
セミの鳴き声がした。
ラムは勢いよく飛び出し、俺は首をもたげ重い足取りで降り立った。
10万光年をこう毎回毎回行き来してると、すぐ近所に感じる。しかも見慣れた風景に慣れ親しんだ場所。太陽が3つあるのが当たり前で、地球に帰って朝起きたら「あれ? 太陽が足りない」と思ってしまう自分がいる。
もうチージョ星が我が家でいいんじゃないか?
ラムは連絡を取るため瞬間移動して行った。
その間、俺はパパの研究室に顔を出した。
「こんにちは」
「おお三次君。久しぶりだね」
「ご無沙汰しております」
「今日は何?」
「いや、ラムに頼まれて来たんです」
「そうか。三次君も大変なだね。ところで……」
パパが片隅に置かれた丸型の箱から何やら取り出した。
脈拍がハンパじゃないくらい高速で動き、全身から嫌~な汗がしたたり落ちた。
「これ、新しい花火なんだけど」
やっぱり。そう来ると思ってたよ。
ただ、前回の大掛かりなものとは違って今回は小さめであった。ドラゴンより少し直径が細いタイプで、地球サイズと比べてもちょうどいい大きさだった。
「今回のは小さいですね」
「そうなんだよ。少しコンパクトにしてみたんだ」
「これって噴出ですか?」
「そう」
「このサイズは安全ですね」
「前のは大きくて大変だったからね」
最初からそうしろ!と突っ込みを入れたかったが、小さいからといって油断できないのがパパ作である。
「ちょっと見ててね」
そういうと躊躇なく点火した。
だから、室内でやるなって何度も……。
シュバババーーと勢いよく上がった火花は、赤青黄緑紫の5種類の色を変幻自在に輝かせて舞い散った。
「キ、キレイだ!」
「でしょ? 渾身の作だよ」
地球と遜色ない。もしかしたら元祖よりもキレイかもしれない。花火を見慣れた俺でさえウットリする美しさである。
しかも燃え方は強烈でその時間も長い。2分たっても3分たっても消えない。
「パパさん。凄いで……」
褒めようとした時、ババッシュバーーと勢いが増したかと思うと、20メートル以上の火花が舞い上がった。
「あっ、あち、あっつーー!」
「うわ、アチチッチッ!」
天井まで吹きあがった火花は、あっちこっちに火の粉を散らして飛びまくり、それから数秒で鎮火した。
火花じゃなくて火柱だろ、これ!
「うーん。最後の調整が難しいな」
パパは何事もなかったかのように腕組みをして再び机に向かった。
研究するのはいい。熱心なのも認める。ただ、今後は室内でやるな。天井が焦げてるんだよ!
咳き込みながら研究室の窓という窓を全開にしていると、ラムが帰って来た。
「話をしてきたわ」
「はい」
「明日、モジャチンカ山で待ち合わせ」
「はい」
「温泉の出る場所が分からないから、三次、案内頼むね」
「はい」
「なんか気のない返事ね」
「いいえ」
ひじょ~に面倒くさい。
提案したのは俺なので文句は言えないが、相手がオタク娘の血統だと思うとテンション爆下がりである。温泉について聞かれても知識はほとんどないため、質問攻めをされたらパニックになる。
パニックになった俺は、全裸になって温泉源を探し始めるだろう。
ティンコレーダーという最新の器具を使って!




