友情と信頼の証
チージョ星から無事に帰還した次の日。
俺は克己んちの屋根で全裸になっていた。
「おらぁー、あと10回だ」
「もう勘弁しろっての」
「うるせー。この裏切者が!」
プールに来なかったという事で「炎天下の屋根で全裸腕立て伏せの刑」に処されていた。
実は約束の当日には地球に戻っていた。行こうと思えば行けた。しかし、チージョ星でスーパーマン並みの活躍をしてクタクタになっていて、起き上がる事すら困難を極めた。頭の片隅にプールの文字が浮かんだが、今の俺に大切なのは安らかな睡眠。
疲れた体にムチ打って水着品評会をしても電波塔が電波を発する事はない。
「なんで昨日は来なかったんだ?」
例のごとく友則が追い詰めてきた。
「疲れすぎて起きれなかったんだよ」
「ヤったのか? 例の女のヤってたのか?」
「違うよ。マジで疲れてたんだって!」
「疲れてる理由は?」
「……手伝い」
「何の!」
「知り合いの仕事の……」
「どういう知り合いだ」
「か、科学者」
「おい、克己。やれ!」
克己はニヤニヤしながら俺の尻を力いっぱい押し込んだ。ご満悦の表情で俺を睨みつける友則。
「ア、アツッ。や、止めろ。分身が焦げる!」
「本当の事を言え」
「マジなんだって!」
「……」
「知り合いの科学者に頼まれて手伝いをしてたんだよ」
「科学者? お前みたいなバカがか?」
「お前に言われたくねぇよ」
「克己!」
再び押し付けられた。
「うぎゃぁぁ。いま、ジュッって音がしたぞ!」
「なあ三次。それって本当なのか?」
頑なに黙秘権を発動している姿を見た克己は、半信半疑で聞いてきた。
「お前、俺んちに何度も電話したろ。そしたら双葉が「寝てる」って言わなかったか?」
「そういえば……」
「あいつ、何度も起こしにきたけど無視して寝てたんだよ」
「……」
「ここ1週間、ずっと手伝いをしてて本気でグッタリだったからな」
「確かに「いくら起こしても起きない」って言ってたな。双葉ちゃん」
「だろ?」
そう言うと、尻を押し込んでいた手が緩んだ。
「俺は納得いかねぇな」
友則はまだ疑っているようなので、チージョ星を省いて説明した。
「知り合いの科学者がな、人出が足りなくて俺に手伝いを頼んだんだよ」
「……」
「そんで、山へ行って石を削ったり集めるバイトをしてたんだ」
「……」
「頭はダメだけど力仕事なら俺向きだろ?」
「……」
「別に約束を破った訳じゃねぇ。女でもねぇ。バイトだよ!」
真顔で訴えている俺を見て、はなはだ疑問ではあるが良しとする。という謎の上から目線で終了を告げられた。
なんだか無性に腹が立ってきた。
「おいお前ら、俺らって友達じゃねぇのかよ」
「な、なんだよ急に」
「人を疑っておいて「ごめん」も無しか?」
「は? なんで謝るんだよ」
「仲間って大切だと思わねぇか?」
「……」
「思うんだったら裸になれ」
「な、なんでだよ」
「お前ら、今から炎天下の屋根で全裸腕立て伏せの刑じゃぁぁーー!」
そう叫び、俺ら3人は素っ裸になって焼けつくトタンの上で腕立て伏せを開始した。
「さ、三次、焦げる。すでに焦げ臭い匂いが……」
「うるせー。俺はもうこんがりきつね色だ!」
「ギャァー。か、皮がひっつく」
本日の気温は38度。屋根は照り返しで45度以上。
腕立て伏せには丁度いい季節である。
「ダ、ダメだ。目玉焼きが出来上がるぞ」
「俺のフランクフルトは食べごろだぁ!」
「痛い。む、むけちゃう。大人になっちゃう」
アチィーーー。朝食が……朝食が完成しちまうよぉぉ--。




