新たな出会いがぁぁ
ミーーン、 ミーーン。
セミの鳴き声がした。
ここから先は未知なる領域。宇宙でも類を見ない女性による女性のための惑星へと足を踏み下ろすのである。男のロマンが詰まった夢の福袋を独り占めしていいのだろうか。俺の中のフロンティアスピリッツが唸りを上げる。
高まる期待と、命令無視の如意棒がドクドクと脈打っていた。
大会会場に横付けされた宇宙船から勢いよく飛び出すと、2つの太陽が出迎えてくれた。
「太陽が2つとは、何とも斬新な心持ち」
「ホントだな」
3つの太陽に慣れている者からしたら驚きだろう。地球人としては2つも3つも変わらない気がするが。
それよりも驚きなのが町並みであった。
植物や自然の風景は地球と遜色なく、空は青く雲は白い。木々は緑の葉を付け、花々は色とりどりに咲き乱れている。
唯一違うのは視界に入る全ての物が2個づつ対になっていた。民家やお店も同じ形状の建物が2件並んでいる。道路も2本。植えられた街路樹も2本づつ。
丸、三角、四角なと様々な形が2つ並んで町を形成していた。大会会場まで2個あった。
「何か不思議な感覚だな」
「目頭が鈍る風景。まるで双子のような体裁が……」
「おっぱいみたいだな」
「既にドップーチンですかぁ~」
「ち、違うわ!」
「隊長はメスドス・ケベールですねぇ~」
「やかましいわ!」
なあココ。チージョ語を知らないと思って言ってるだろ。俺の脳は手軽な挨拶や言葉は覚えないが、エロに関してはコンピュータ並みの性能を備えているんだぞ。
いま、完全にバカにしたろ。しかもエロネタで!
建物が対になっているのも意外だったが、さらに度肝を抜かれたのが惑星住人である。道行く人の全てが女性だった。右を見ても左を見ても女性。手を繋いでいるカップルらしき2人も女性同士だった。女子高に来た感覚である。
「本当に女の人しかいないんだな」
「生まれて初めての光景に脳波の乱れを感じておりますぅ」
「何でこうなったんだろう」
「吾輩に問われても回答は無能かと」
「そうだろうな」
俺と同じく、ココも新鮮な感覚で驚いていた。
建物といい、女性だらけといい。ここと比べたらチージョ星の方が個性豊かで遥かに面白いと思う。建物は球体だが、それぞれに工夫を凝らしてオリジナリティーを発揮している。道行く人もオシャレを楽しんだり、男女でお散歩していたり。当たり前の光景が広がっている。
しかしここは……他惑星のやる事にケチを付けるのはお門違いである。
「まあ、他文明に文句を言ってもしょうがない」
「そうでございますね」
「早急に受付を済ませちゃうか」
「その前に……」
「なに?」
「にょ、尿意をもよおして来ましたです」
「……早くトイレに行けよ」
彼女は彼女なりに緊張しているのだろう。惑星大会ともなれば、宇宙の色んな所から優秀な人材がやって来る。その中でチージョ星代表として対峙するのだから、落ち着けという方が無理な話だ。
「どうだ。スッキリしたか」
「緊張でチョロチョロパッパしか出ませんでしたぁ~」
「チョロチョロパッパ?」
「ざ、残尿感がぁぁぁ」
「……」
控室で子羊のように震える彼女の肩を揉んでやり、「みんなをカボチャだと思え」という無責任な発言をして会場内の一番後ろの席へ座った。
しかし本当に不思議である。会場全体を見渡しても女性だけだった。
他惑星からの参加者や引率者の中には男性もチラホラ見受けられたが、残りは全て女性という何とも言えない光景が広がっていた。
女性は嫌いではない。むしろ大好きだ。毎日女体を研究し、隙あらばそのロマン溢れる生態に触れてみたいと願っている。考えようによっては、ここは天国に一番近い惑星かも知れない。
ただ、何て言うのだろう。最初にこの惑星を訪れた時、妙な物悲しさを感じた。
道には人が溢れていて一見すると活気がありそうだ。建物やお店などポップな色調で華やかな雰囲気。女性ならではの感性だな、と思った。
だが、オープンはしているものの、そこにエネルギーとか期待とか明るい未来のようなモノが希薄な感じがした。町全体が閑散としているように見えた。
俺の頭脳では到底答えは出ない。
最初は「女だらけ」と聞いて天に向かって伸びていた如意棒が、今は耳に入るサイズまで縮小していた。
「うーむ。思ったほどではないかも……な」
そう思いながらココの出番を待っていた。
しばらくすると、隣に人影が近づいてくるのを感じた。
「こんにちは」
「え? あっ、こんにちは」
「隣、いい?」
「はい。どーぞ」
俺は一つ隣に移り席を開けた。
「あなたって男性ね」
「はい。そうですけど」
「若い男性を見るのは久しぶりね」
「……はい?」
物凄く積極的なアプローチである。声質や言い方からして年配の女性っぽい。「若い男性は久しぶり」その言葉はエロエロな俺の脳には刺激的過ぎる。ジェントルマンだから平静さを保っていられる。これが友則だったら顔も見ずに襲い掛かるだろう。
隣の席に移動した俺は何気なく女性の顔を見た。その瞬間に閃光が走った。
確かに年齢は重ねていた。年の頃なら40近い。しかし、その顔と彼女の持っている雰囲気は、年齢という概念を全てを打ち崩して極上に美しかった。
気品あふれる眼鏡に、つやっぽい唇。メガネの奥から覗くつぶらな瞳。背筋をピンと伸ばして姿勢よく座っているその姿から上品さが感じられた。
そして肝心の……。着席しているので細部までは分からないが、95、77、98だと思われる。
今まで出会った誰よりも綺麗だった。知的で妖艶。大人の色気。知り尽くしたエロチシズム。俺の大好きな品格のある女性がそこに居た。
「君はどこの星から来たの?」
「ボ、ボキはチージョ星という星です」
「ああ、今回参加している子の惑星ね」
「そうでガンス」
「ご親戚か何かなの?」
「違いますです」
「じゃあ、彼氏?」
「いえ。バリケードでごわす」
「バリケード?」
「ボ、ボディーガード……」
緊張のあまり言葉を忘れそうだった。
カッチコチに固まっている俺を見た彼女は、「緊張するのは舞台の人。あなたはリラックス」そう笑って指先を丸めて俺の額をポンと軽く弾いた。
「私は大会主催者で、アーナ・キョウダインよ」
「主催者なんですか」
「君の名は?」
「宮本三次です」
「じゃあ宮本君ね」
「み、宮本君ぅぅーん!?」
溶ける。何かが溶け出す……。




