頼み事C
「隊長ぉぉぉ」
「ぐえぇぇーーー」
ボディプレスを浴びせられて目が覚めた。
「く、黒船の襲来かっ!」
「おはようございますですぅ~」
「ココ?」
「はいな」
「どうしたの?」
「ちょっと隊長に告白がございましてぇ~」
「告白?」
「実はですねぇ~」
夏休みの自由研究で「地球人とチージョ星人の違い」をテーマに発表し、学校代表として全国弁論大会に出場した。そこでも評価が高く優勝を果たした。
優勝者にはトロフィーと金一封が授与されて終わりなのだが、内容が面白いのと着眼点が斬新だったため、特別枠として惑星対抗弁論大会に出場する事になったのだという。
「わ、惑星弁論大会ぃ!?」
「そうでございますです」
「惑星って、色んな星の人たちと交流って事?」
「名探偵も真っ青な回答ですな」
「……」
チージョ星の回りには似たような惑星がいくつも存在する。地球で言う所の太陽系だと思うと分かりやすい。
各惑星には生物が存在している。そのどれもが進化した知的生命体で、弁論大会に限らず日頃から交流を深めているのだという。
「で、俺に用とは?」
「その大会に隊長も参列して欲しいのですがぁ~」
「へっ?」
「いかがな塩梅でしょうか」
「……俺、弁論テーマ持ってないよ」
「弁論するのではありませぬ」
「は?」
「隊長は保護者ですな」
「保護者?」
「いわゆる付き人という手合いですぅ」
大会に参加するにあたり、1つの約束事があった。それは保護者を1名同伴する。という決まりだった。
チージョ星のように惑星間の行き来を自由とする星もあれば、子供が遠くへ行ってはいけません的な惑星もある。
広大な宇宙を旅するのは危険が付きまとう。実際に子供たちだけで旅行へ行き、そのまま帰って来なかった事例もある。
準備万端で出発しても、何が起こるか予測は不可能だ。それが宇宙なのである。
俺らは子供と大人を右往左往する中学生。日頃から異文化交流を進めているからといって、若干14歳の若き血潮が他惑星に1人で飛び立つのは危険である。本来は教師、もしくは大会主催者など大人の誰かが引率するはずだった。ところが、その日に限って誰も予定が合わなかった。
代わりの大人を探したのだが、パパは大企業の社長で日夜走り回っている。従妹のミルクさんは温泉施設で奮闘している。みな忙しく働いているさ中、たかだかお遊びの弁論大会に付き合わせるのは気が引ける。
誰にしようか思案していた時、俺の顔が浮かんだ。
隊長なら何があっても動じる事なく我が身を守ってくれるに違いない。勇気、行動力……ボディーガードには最適な人物である、と。
「俺、大人じゃないけど」
「隊長なら大人以上の威力を発揮するかと」
「……」
「ど、どうですかな」
キラキラと純粋な目で見つめられて「断る」とは言いにくい。常識のある大人と違い、非常識を地で行く俺が引率という大役を買って出ていいものなのだろうか。
自分で言うのも何だが、ボディーガードとしてはこれ以上最適な人物はいないと思う。物事を深く考えないので咄嗟の行動が素早い。相手が誰であろうと動じる事なく向かっていく。
仮にアクシデントがあった場合でも、俺が盾になりココをチージョ星へ逃がしてやる事くらいは出来る。いざとなれば、俺の中に潜むバーサーカーが狂乱のワルツを踊るだろう。
「分かった。引き受けるよ」
「まことしやかかっ!」
「ま、まあ」
「さすが隊長。漢の中の漢ですなぁ~」
「何があってもお前を守ってやるよ」
宮本家は、調子に乗せられ調子に乗り。これで失敗している気がする……。
「それでは早速準備いたしましょうぉ」
「大会っていつ?」
「明日でござい」
「今からチージョ星へ飛ぶの?」
「いえ。現地まで遊覧飛行です」
これから行く先はチージョ星からさらに10万光年離れた場所で、所要時間は4時間弱。距離にして20万光年だという。
宇宙空間の歪みや時差もあるため、今から地球を飛び立てば明日の大会前に会場に辿り着くらしい。
まあ、何にせよ早めの準備が得策だろう。ココと一緒に宇宙船へ乗り込んだ。
フィーーン、フィーーン。
警報らしき音が鳴り響いた。
シュパッ!と大会会場へ向けて旅立つ音が聞こえた。
「もはや作戦は完璧ですな」
「ところで、行く先はどこ?」
「惑星プルプル・パイーンです」
「パイン? 果物の国?」
「女性しかいない世界でございます」
「なっ……」
何という甘く優雅な響きだろう。この世の楽園にピッタリの惑星である。心の奥底が躍動し、全身が祭囃子を奏でるようだ。
そう言えば小池が言っていた。
星の数ほど人はいる。いつか素敵な出会いが待っている。フラれた俺には丁度いいリハビリかもしれん。
惑星プルプル・パイーン……素敵な出会いが待ってるかしら。
ムフッ!




