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宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
惑星チージョの革命児
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愚かな地球人

 ミーーン、 ミーーン。

 セミの鳴き声がした。


 久しぶりに聞くと心が弾むが、何回も聞いているとこめかみ辺りがジンジンして心が荒む。



 地球へ戻った俺は、自宅倉庫を漁った。

 親父が一時期釣りにハマっていた事もあって竿は何本もあった。熱しやすく冷めやすい性格のため、燃えている時は何本も竿やリール新調し、どこの海で何が釣れるのか研究する。しばらく楽しんで満足すると急激に興味を失う。そして竿は倉庫に放り投げられ、使わなくなって埃が被る。

 親父の趣味で我が家の倉庫はゴミ箱と化している……。


 道具は一通り揃っているので買う必要はない。この辺は有難い。網だけは年月を経て破れていた。


「仕方がない。買いに行くか」


 釣竿をケースに入れて商店街へ向かった。


 最近はお小遣いの全てをチージョ星のために使っている。漫画もゲームも中古品ばかりだ。本に至っては奴らの手垢や色んなモノが飛び散った薄汚いブツで我慢していた。

 財布に100円以上入っている事はなく、3人で焼きそばを食べても俺だけソースを舐める状況に陥り、友則や克己に「悲惨ジー」と呼ばれている。

 チージョ星では英雄扱いで、色んな人から謝礼を貰ったり金一封などでウホウホ状態だが、地球ではケダモノ扱いで万年金欠病。このまま地球で暮らしても良い事は無さそうである。いっその事、住民票を移してチージョ人になった方が未来は明るい。

 ブツクサ文句を言いつつ、釣具店で網を選別していたのだが……。

 なぜか知らんが、店内にいた客の全員が驚きの表情で凝視していた。俺が一歩踏み出すと一歩後退する有様だった。レジへ持って行くと女性店員が「イヤァァ」と微かな叫び声を上げ、怯えながら釣り銭を手渡してきた。

 店を出て商店街を歩いている時も道行く人々が「なっ!」と息を止めて二度見する。

 交番の前を横切ると、例のBカップ警官がホルスターに手を置いてこちらを睨んでいた。


「何なんだよ。感じ悪りぃーな。これだから地球はダメなんだ」


 地球人の愚かさに落胆しながらウィンドウに映る自分の姿を覗き見た。

 レースのアイマスクと首輪と鼻ピアスをし、棒状の大きな荷物を背負っている変態中学生が映り込んでいた。


 愚かなのは俺だった……。


 気怠さ満載のまま宇宙船へ乗り込んだ。


 フィーーン、フィーーン。

 シュパッ!と面倒くさい音が聞こえた。




 ここからの2時間弱がさらにゲンナリを助長させる。


 実は以前、俺専用木馬に娯楽品を持ち込んだ事がある。

 ゲーム機、お菓子や飲み物、布団など。ポータブルDVDと叡智な雑誌は要必須である。

 俺の生活に無くてはならないアイテムを取り揃えて宇宙船へ運んだ。


「これで退屈な2時間を有意義に過ごせる」


 そう喜んだのもつかの間。


 地球を飛び立って10分くらいだろう。ポータブルDVDが発熱炎上し、ゲーム機がパン!と音を立てて爆発した。何が起こったのか分からないが、地球の機械類は宇宙を越えられないらしい。ブラックホールとか空間の歪みとか、そんな類なのかも知れないが真相は闇の中である。

 爆発炎上で船内に煙が立ち込め、警報機がウーンウーンとけたたましく鳴り響いた。スイッチ類が見当たらないので止め方が分からない。

 耳をつんざく音と鳴りやまぬ警報機にウンザリしていると、それから10分後に布団が風船みたいに膨れ上がって中身の綿が弾け飛んだ。それと同時にポテチの袋が破裂してジュースの缶が暴発した。無重力状態に耐えられなかったと思われる。

 綿が空中を優雅に舞い、ポテチがフワフワと漂い、ジュースの液体が玉のように浮いていた。すぐ近くで焼けただれたDVDが燻っていて、未だ警報機が激しく鳴り響く船内。自力ではどうにもならず、体育座りで涙を流しながら2時間弱をやり過ごした。


 チージョ星に到着すると重力が生まれる。今まで空中を彷徨っていた奴らが一気に下降して体に張り付いた。

 船内を出た俺は、甘い匂いを放って綿帽子を被った変質者になっていた。

 ついでに、ラムに叡智な本を見つかってビリビリに破られ、心の恋人はチージョ星の青い空に散った……。


 僕、もう疲れたよ。





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