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宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
惑星チージョの革命児
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チージョ星人の弱点

 危険な張り紙を完全スルーして病室を訪れると、パパが全身を包帯でグルグル巻きにされてベッドに横たわっていた。


「パパさん。大丈夫ですか?」

「おお三次君。来てくれたのか」


 一応元気そうで笑顔も見せていたが、時折「うっ」と唸りを上げて顔を歪める。その姿を見ると俺までヒリヒリする。


「ケガの方はどうですか?」

「先生のお陰で何とかなったけど、今でも少し痛むね」

「大変でしたね」

「そうなんだよ。ちょっと油断しちゃったから」


 ラムから聞いた話だと、ハカイダナデシオでの調査中に足を滑らせて湖に落ちたらしい。

 この湖は地球と同じ塩分濃度でチージョ星には珍しい塩水である。

 体質的なものなのか、星特有の何かが作用しているのか。この星に住む人々は長時間塩水に浸かると体が火傷を負った状態になるという。

 通常、彼らが泳いだり遊んだりする海は砂糖水。海で取れる自然の恵は砂糖である。

 塩水は惑星内でもハカイダナデシオしか存在せず、未知なる物質として調査が行われているほど珍しい存在だった。


 パパを始めとして様々な学者が真相究明に奔走していた時、湖内に海洋生物らしき生命体を確認した。

 以前、俺が見た魚であると思われる。あの時パパに「魚が泳いでました」と報告すると、信じられないような顔をしていた。

 半信半疑ではあるが、俺の言葉を思い出して海洋生物学者と共に調査進めて行くうち、本当に生命体の存在を確認出来たらしい。

 未知なる生命体は学者たちの大好物である。

「これは新たな発見!」とばかりに謎の生物の特定を急いでいたのだが……。

 パパが魚を捕獲しようと手を伸ばした際、うっかり足を滑らせて塩水に落ちてしまった。

 慌てて岸に上がろうとしたが、体が思うように動かなかった。しばらくして全身がピリピリと痛み出してきた。

 身動きが取れず湖内でもがいている姿を見た者たちが全員で引きずり上げた。ようやく岸に上がったパパの皮膚はベロベロに剥がれて見るも無残な姿になっていた。

 そのまま病院へ緊急搬送されたという。


 まさか湖に落ちてヤケドを負うとは思いもよらなかった。その事実を目の当たりにした学者たちは、ある仮説を立てた。


『もしかしてチージョ人は塩水に弱いのでは』


 現在、塩水とチージョ人について調査が続けられているらしい。


「これが判明すれば、さらに調査内容が深くなるよ」

「体を張ってまでやる事ではないと思いますが」

「新発見に危険は付き物だよ」

「……そう、ですか?」


 頭の中に熱湯風呂が浮かんだが、それについては無視しておこう。



「ところで、用件ってなんですか」

「そう。その事なんだけど……」


 俺がハカイダナデシオの独自調査を行っていた時、パパに「地球の海は塩水」という事をしゃべった記憶がある。

 ごく普通の発言をしたつもりが彼らからしたら摩訶不思議に映ったのだろう。目を丸くして驚いていた。


「確か地球の海は塩水だって言ってたよね」

「そうですが」

「塩分濃度も同じなの?」

「そこまでは分かりませんが似てると思います」

「それじゃ塩水に関しては私より知識があるね」

「いえ。そんな知識は……」

「私の代わりに調査を手伝ってくれないかな」

「なっ……」


 何を言い出すかと思ったら、完全にヤバイ方へ話が転がった。

 地球でも最下層に位置する頭脳の俺が科学の進んだチージョ星の学者たちと調査をする。百歩譲っても危険な香りしかしない。しかもパパという天才学者の代役とは。

 塩水に関する俺の知識は「しょっぱい」以外に持ち合わせていない。


「俺には無理ですよ」

「いや。三次君なら新たな展開を見つけられると思うんだ」

「パパさんは俺を買い被り過ぎですよ」

「いつも想像もつかないアイデアを生み出してくれるじゃないか」

「俺のアイデアでは……」

「頼む! 私の代わりに行ってくれないか」


 褒められたら調子に乗る。頼まれたらイヤとは言えない。宮本家に代々伝わる始末の悪い血が沸騰したヤカンのようにピィーーと鳴り響いた。


「ところでパパさん。退院の見込みはいつ頃ですか」

「うーん。明後日くらいかな」

「あ、明後日?」

「もう3日もこの状態で大変だよ」

「……」


 まあ、お大事に!




 チージョ星の医療技術に脱帽しながらラム家へ戻り、ハカイダナデシオへ向かう準備をした。

 準備と言っても酸素メットと大量の水を持って行くだけである。


 前回、単体で乗り込んで地獄の苦痛を味わった。息を吸ったたけで口の中の唾が瞬間蒸発して咳が止まらなくなった。殺人光線が皮膚細胞を破壊し、全ての表皮が真っ赤にズル剥けた。水をかけると「ヒィー」となり、お湯に浸かって「うぎゃぁぁ」と叫んだ。

 大自然の脅威に成す術もなく、人間の弱さを痛感した記憶がある。

 現在は学者、医療関係、防衛軍など惑星の主要人物がワシャワシャいて活気に満ち溢れているという。

 ハカイダーとサンジーのサシの対決ではないので幾分か楽である。万が一の事があっても誰かが助けてくれると思えば、さほど気合を入れなくても何とかなりそうな気がする。


「大丈夫? 気を付けてね」

「任せておけ。俺は宇宙を駆け巡る三次様だぞ」

「もし三次に何かあったら……」

「な、泣いてくれるのか!」

「大笑いしてあげる」

「……」


 よし決めた。今からロケットを発射する。大気圏を突破すれば母なる宇宙が広がるんだぞぉ~。





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