反省だけなら友則でも出来る
それから1週間。友則は学校へ来なかった。クラスメイトは天変地異の前触れだと恐れを成していた。
みんなの意見は間違っていない。健康優良児を地で行く奴である。小学校から今まで一度たりとも休んだ事がなかった。基本的にバカだから風邪は引かない。魚の骨までバリバリ食ってしまうので骨太で丈夫である。骨折も無縁の男だ。
唯一弱いのは脳みそだけである。
「なあ三次」
「何だ?」
克己がニヤニヤしながら寄って来た。
「あいつが休んだ原因って、もしかして……」
「たぶんな」
俺らには分かっていた。同人イベで頭のクラッカーが破裂し、元に戻らなくなったと推測する。
車椅子に乗せて自宅へ送り届けた時、「文明開化!」と叫んでベッドへ倒れ込んだ。そこからピクリとも動かなくなった。実際はコテカを握られただけなのだが、奴にとっては我が家を優しく愛でられた感覚なのだろう。溢れる欲望に押さえが利かなくなり、チョークスリーパーで絞め落とされたと同時に悦に入った。
現在は夢の中でセクシー刑事とお戯れをして元の世界へ帰るのをイヤがっていると思われる。
「帰りに寄ってみるか?」
「そうだな」
とりあえず学校が終わったら顔を出す事にした。
超絶つまらない授業が終わったその足で友則宅まで行った。
勝手知ったる我が家である。
友則ん家に着いたら、まず裏手に回る。塀から屋根へよじ登る。そして窓を開けて奴の部屋へ突入である。
俺らは毎回この手法で各人の部屋へ侵入していた。
玄関を使うと両親に挨拶したり、見つかってはいけないモノがあったりと、色々説明が不足する事態に陥る。
以前、友則んちに克己が大量のDVDを持ち込んだ事がある。倒産した店からタダ同然で仕入れしたらしく、割と大きめの段ボール1箱分だった。
そんな物を持ち込めば当然尋問を受ける。母親に「それ何?」と聞かれ、「宿題の資料です」と答えた。しかし段ボールの外側にR18指定と印刷されていたため速攻でバレた。
また、友則が俺んちへ来た時。
わざわざ雨降る中を紙袋を持って登場した。母親に挨拶をして部屋へ上がろうとした際、びしょ濡れの紙袋が破れて下着類やら叡智な本が散乱した。おもちゃ的な代物とローションもあった。
それ以来、奴は我が家を出禁になった。
仕方がないといえば仕方がない。我々は恋多き中学生である。超敏感なお肌に我慢は禁物である。ブツを手に入れるためなら手段を選ばない。両親に見つかる確立を最低限に減らしたい。
「侵入箇所はカギを閉めるな」が俺らの合言葉だった。
ごめん、話が脱線し過ぎた。気を取り直そう。
部屋へ上がり込んでベッドを覗いた。奴は恍惚の表情で眠っていた。時折「もっと!」とか「ご主人様ぁぁ」という寝言を発していた。
「なあ克己。こいつ、いい夢見てんだろうな」
「セクシー刑事の愛撫は狂騒曲だぜ」
「このまま放置するか?」
「いや、起こそう。そして現実を見せてやろうぜ」
「そうか」
俺はリュックから定規を取り出した。そして奴の額をビシッとしばいた。
「はふぅ~ん。じ、女王……何だ!?」
「正気に戻ったか?」
「な、何でお前らがここに居るんだ」
「記憶がないのか?」
「……少しだけ」
我が家を優しく包まれ、自らコテカを外した辺りから記憶が断片的らしい。何をしたのかさえ曖昧だとか。
俺と克己は一部始終を詳しく説明した。それを聞いた友則は己の愚かさを痛感したようだった。
「克己。すまん!」
ベッドにひざまづいて土下座をした。
「お前の趣味をバカにしてすまなかった」
「な~に。分かればいいのよ」
「コスプレがあんなに楽しいとは予想外だったよ」
「人それぞれに楽しみ方があるんだよ。それをバカにするのは最低だぜ」
「確かに……」
今日は気持ち悪いくらい良い子だった。奴なりに足りない頭で考えたのだろう。
克己やオタクの趣味を否定してみたが、実際にやってみると新たな世界を発見する。それに気付いただけでも成長である。変態コテカをやった意味がある。
「克己。今度はいつ開催されるんだ?」
「当分はないな」
「そうか。もしやる時は俺に言ってくれ」
「……また変な事をするのか?」
「こ、今度は女王様に従える召使になろうかと」
「反省してねぇな、こいつ……」
呆れ果てた克己は、俺の方をチラッと見てタメ息をついた。
反省だけならサルでも出来る。サル以下の友則に反省という言葉はない。ここはお仕置きが必要であろう。俺は定規を手の平でビシバシさせた。
「よし。四つん這いになってケツを出せ」
「はぁ? 何でそんな事をしなきゃいけないんだよ」
「今度は女王様の調教を受けるんだろ?」
「ま、まあ」
「今から練習するぞ」
「何の練習だよ」
「女王様に好かれるようにだよ」
「そ、そんな練習があるのか?」
「反省しないお前のために「ケツの全貌を定規でビシバシの刑 」に処す」
「や、止めろ!」
「望みだろ?」
「それは女王様で、お前じゃねぇーよ」
「返事は「はい」だろうがぁぁ!」
そう叫び、奴を四つん這いにさせて尻を露わにした。
「さあ行くぞ。覚悟はいいな、この豚野郎!」
ビシッと定規で打ち付けた時、心の中に潜む怪しい人物が深い眠りから覚めた。




