表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
バカとオタクのコラボレーション
116/136

町田美憂からのお願い事

 その日、俺はホームセンターにいた。


「リアリティーを追及するなら木材だろうな」


 克己と友則がケンカをし、仲直りの印として奴を同人イベントに連れて行く約束をした。その際、コスプレをして参加するを条件に克己を納得させた。

 完全に頭に来ていた克己だが、俺の狂ったアイデアを面白がって許可してくれた。

 簡単に言うと「2人で奴おもちゃにして遊ぼう」計画である。

 なるべくインパクトがあって、しかも会場内に爆笑が起こりそうな品を探し求めていた。

 数ある木材の中から手頃な品を厳選していると。


「あれ、もしかしてゴキ三次で?」


 会話をするのが面倒くさいと思わせる声がした。この呼び方から察するに……。

 後ろを振り返ると町田美優が立っていた。


「奇遇の偶然すねぇ~」

「お、おう。久しぶり」

「何用の所存?」

「いや、まあ」

「隠れ蓑ですか。ゴキ三次とあろうお方が」

「……」


 ココに慣れているので、この手のタイプは苦手ではない。ただ、会話を成立させるためには脳全体をフル稼働させる必要がある。日本語だけでも容量が一杯なのに謎解きの要素も加わるためCPUが熱暴走する。


「どのような塩梅でこちらへ?」

「……」


 別に隠す必要もないので大まかな概要を説明し、近々レイヤーたちが集まるイベントはないかを聞いた。


「チャンス到来でございます」

「はい?」

「近々、我が町で開催する模様」

「それにはレイヤーも来るの?」

「体育館よりは小兵ですが、我が町では最大級です」

「そうか」

「狂ったレイヤーが多数参加しますぞ」

「マ、マジでか!」


 この時点で妄想が唸りを上げて襲ってきた。セクシー刑事より過激な衣装だった場合、頭のクラッカーが弾けそうである。友則を笑えない自分がいた。


「ところでゴキ三次」

「……何?」

「ココ殿は元気かね」

「最近会ってないから知らないけど、元気だと思うよ」

「それではこれを彼女の手中に」


 美憂はそう言って大学ノートと漫画を手渡してきた。


「何これ?」

「ストーリーメモと最新作にござい」

「ココに渡せばいいの?」

「さようの所業」

「……」


 もう頼み事はうんざりなのだが……。


 彼女はココが宇宙人だという事を知らない。美憂と会う前に「宇宙人だってバレちゃダメだぞ」と忠告した。俺の友達で外国のティージョ町から遊びに来ている、という設定にしていた。

 まあ、美憂だったら宇宙人だろうが幽霊だろうが「心のベストマッチング」とか言って友達になりそうな気がするが。


「今回は力作の超大作でありますゆえ、自信にも満ち溢れている所存」

「分かった。そう伝えておくよ」

「有難き幸せ」


 そう言うと、バレリーナのようにクルクル回転しながら立ち去った。


「……」


 どういう帰り方をしても自由だが、BGMに合わせて踊りながら店内をウロウロするのは止めた方がいい。周りの人たちが狂気の目で見ているから。それが可能なのは5歳児以下だけだ。

 美憂と別れ、友則生き恥計画の品を買い、家へ帰ってアイノデリモンクーを空へ振った。


 ココへ ヒマだったら連絡をくれ  by三次


 そして寝た。





 4日後。


「おはようござい!」

「ぐぇぇぇーーー」


 ココのヒップアタックで強制的に叩き起こされた。

 相も変わらず乱暴な起こし方である。

 一瞬でお目めパッチリになった俺は、美憂から預かったノートと新作を手渡した。


「おおっ、これは新刊では」

「力作らしいよ」

「脳髄が駆け出すくらい素晴らしい出来栄えですねぇ」

「でも、日本語は読めないだろ」

「完璧ではありませぬが、少しは理解が働きますぅ」

「少しは読めるの?」

「はいな」

「……マジっすか」


 前回会った際に語学を習ったらしい。美憂から「あいうえお表」を手渡され、漫画と表を見比べながら少しづつ覚えたんだとか。

 俺よりも圧倒的に地球~チージョ間を往復する回数が少ない。俺なんか1千万光年を越えるほど惑星間を行ったり来たりしている。だが未だにチージョ語は読めないし理解出来ない。


「漢字は読めるのか?」

「まだそこまでのレベルには達していませんねぇ~」

「漢字をとばしたら意味分かんないだろう」

「そこは創造主の担い手で」

「……」


 見た目的には「変わった子ちゃん」で、会話が成立しない「大変疲れる子ちゃん」だが、その実は真面目で頭が良いのかも知れない。

 最初から覚える気ゼロの俺がとやかく言う権利はないが。


「ところでココ。今度の日曜ってヒマ?」

「日曜とは?」

「……休日の事」

「休日がどうしてくれたのでしょうか」

「今度の休みに同人イベントがあるらしいぞ」

「まことしやかかっ!」

「美憂も参加するって言ってたよ」

「美憂殿も?」

「ああ。そうみたいだ」

「参加希望は熱望なのですが……」


 今度の休みに弁論大会決勝戦があるらしい。

 夏休みの課題で「地球人とチージョ星人の違い」を書き記してクラスで発表した。すると、その内容があまりにも面白かったため、学校の代表としてチージョ星全国大会に出場が決まったんだとか。


「今度の休みに大会があるのでございます」

「そうかぁ~。残念だな」

「まさか学校代表に選ばれるとは想定外の所業でして」

「でも選ばれるだけ凄いじゃないか」

「妄想故の幻想かと」

「……」


 言っている意味がこれっぽっちも分からないが、全国大会に出場出来るのは凄い事だと思う。俺が学校代表で選ばれる事など断じてありえない。万が一あったとしたら、かなり特殊な大会だろう。

 全国選抜バカ選手権は友則にかっさらわれる。全日本エロエロ大会は克己がナンバー1の称号を得るだろう。

 仮に俺が全国大会に選ばれるテーマは……。


 変態中学生日本一決定戦か?



「頑張れよ。草葉の陰から応援するから」

「有難き幸せ」

「じゃあ、宇宙船まで送るよ」

「その前に隊長にお頼み申したい旨がありましてぇ」

「ん? なんだ」

「炭酸という名の飲み物を入手したい今日この頃ですぅ」

「なるほど。パパに持って行くのか」

「はいな」


 地球で炭酸という衝撃的な飲料水を飲んだココは、パパにその旨を報告した。チージョ星にはない目新しい飲み物に食いついたココパパは、地球から持ってきてくれ。と彼女に懇願したらしい。


「何本くらい必要?」

「研究に使うので3~4本あれば成果が得られるかと」

「分かった。途中で買ってやるよ」

「隊長はいつでも良い男ですなぁ~」

「ま、まあ、それほどでも」

「何という高貴な出で立ち!」

「困った事があったら何でも言いな。俺が何とかしてやる」


 頼まれればイヤとは言わない。褒められれば調子に乗る。宮本家に伝わる狂った血筋が今日も全開で顔を出していた。


 ココはストーリーメモと新作漫画と数種類の炭酸飲料を抱えて帰って行った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ