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宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
バカとオタクのコラボレーション
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発想が偉大なオタクたち

「もしもし。町田美優さんでしょうか」

「はい。そうでございますです」

「俺、この間漫画を貰った宮本三次という者ですが」

「みやとも……さじーん?」


 突然の電話に戸惑っているようだった。

 そりゃそうである。あの時、互いに名前も名乗っていなかった。自己紹介もなく1度きりの出会いで顔すら浮かばないであろう。別れ際に漫画と名刺を貰い、そこに書かれていた連絡先へ突然の電話攻撃である。どこの馬の骨か分からない奴からいきなりの電凸は怖い。男の俺でも警戒する。


「以前、ゴキブリ駆除グッズと交換した……」

「あっ、例のゴキブリマンですね」

「……はい」

「急にどうしたんですか。ゴキブリマンさん」

「……」


 俺とお前は出会ったばかりだ。顔もうる覚えなくらい親しくない。ゴキブリ駆除グッズのインパクトが強いので、そう呼ばれるのは致し方ない事だと思う。その辺りについては許容してやる。

 ただ、今後はその呼び方を止めてくれ。なんかこう、全人類から嫌われている厄介者にしか聞こえないから。


「どういったご用件で?」

「君の漫画を読みたいという人がいるんだけど」

「ほう。それは光栄至極」

「……他にも色んな作品があったと思うんだけど」

「無数の作品が待ち合わせを望んでいるのです」

「……是非とも購入したいと」

「それは極み!」

「……」


 発想が偉大過ぎて会話に付いていけないのだが……。


「どこへ行けば手に入るの?」

「でしたら明日、トンボ公園内のコミュニティー施設で開催」

「ああ、あそこね」

「小さいイベですが内容は充実している模様」

「ありがとう」

「2階のフリースペースでございますよ」

「分かった」


 電話を切った後、ココに内容を説明した。


「おおっ、極み!」

「ただ、購入するにはお金がかかるんだよなぁ~」

「それなら心配ご無用ですぅ」


 そう言ってポケットから財布を取り出した。中身はチージョマネーだった。

 俺も何度か使った事があるが、この枚数からすると結構な額だと思う。お小遣いの全てを握りしめてやって来たに違いない。

 だがしかし。両替所というものが存在しない以上、丸型チージョマネーはメンコでしかない。


「そのお金、地球では使えないんだよなぁ~」

「そうでございましたか」

「うーん」

「これは死活問題ですな」

「……」


 確か1冊600円とか言ってた気がする。前回はゴキブリ駆除グッズと交換で手に入れたが、毎回そんな物と交換出来るとは思えない。

 本を自費で制作するのはお金がかかる。手間暇もかかるだろうし、文具代も印刷代もバカにならないだろう。少ないお小遣いでやりくりしているのだから、ここは気持ちよく現金払いしたい所である。もちろんココにも買ってあげたいと思う。

 だが、俺の小遣いはゴキブリグッズで消えてなくなった。現在の所持金は18円である。

 まあ、グダグダ考えてもしょうがない。


「ココって明日もいる?」

「いますです」

「じゃあ、明日宇宙船に迎えに行くよ」

「こ、鼓動が高鳴りの日々」

「規模は小さいけど中身は充実してるってさ」

「今晩、眠れるでしょうかぁぁ」


 顔を高揚させて帰って行った。




 ココが帰った後、俺は久しぶりに頭を悩ませた。

 実は問題がもう1つある。

 金が無いのは年がら年中なのでさして気にする事ではない。美憂に「後で持ってくるから」と約束すれば何とかなるだろう。最悪の場合、体で支払うという究極の選択もある。


「俺のマグナムで支払いを……」

「果たして、貴殿の小者で吾輩を悦に導けるかどうか」

「全身全霊で挑みます」

「それでは戦闘のゴングを警鐘致します」


 力の全てを捧げれば何とかなる。テクニックはないが回数なら自信がある。この間、1日4回という新記録を樹立したばかりだ。友則に関しては、1日5.5回という訳の分からない記録を出している。今度は世界新を狙い6回にチャレンジ。とか言っていた。ちなみに世界新が何回かは不明だが……。

 そんな事はどうでもいい。最大の問題は克己の存在である。

 この手のイベントは奴のオアシスであり、人生の全てと言っても過言ではない。

 克己の部屋の本棚は、同人誌とアニメでパンパンになっている。それに加えてロボット系のプラモや美少女フィギュアが所狭しと飾られている。足を一歩踏み入れた途端、趣味趣向が一目瞭然であった。

 体育館のような大規模な企画と違って今回は小規模らしい。その際、「奴がどこまで足を伸ばすか」これが重要ポイントになる。我が町だけでなく近隣も含めて全てのイベントに参加しているのであれば、今回も会う可能性がある。

 仮に出会った場合……。



「なんだ。お前もこっちの世界に来たのか!」


 薄汚い顔でニヤッと笑い、


「よし。これからお前を調教する」


 そう言って2時間くらい美少女の良さを熱く語られる。

 観たくもないアニメを見せられ、少しでも目を逸らすと「凝視しろ!」と定規で色んな箇所をしばかれるだろう。さらに、危険極まりないR18指定のゲームで「今日はクリック1000回だぁー」と猛練習させられる。

 肉体&精神を揺さぶられ、解放された頃には美少女アニメ好きに洗脳されている。そして脳を支配された俺は克己のペットとして従うようになる。


「おい三次。妹の例のヤツを持って来い」

「はい克己様」

「ホヤホヤだぞ?」

「承知しております」


 洗濯機から湯気の上がったブツを盗み出して献上する。奴は恍惚とした笑みを浮かべ、ご褒美にポッキーを1本くれる。俺はチョコの部分を犬の様にペロペロ舐め、「プリッツに変身しました」と言い、頭をいい子されてご満悦になるだろう。

 家へ帰ると追及され盗みがバレる。内容が内容だけに妹は狂ったように泣き、母親は精神を病み、親父は鬼の形相で俺を乱打する。宮本家が阿鼻叫喚の地獄絵図になるのは明白だ。

 最終的に三下り半を叩きつけられ、家を追い出された俺に残るのは異常性愛とロリー三次の汚名……。


 か、限りなく危険な香りがする!




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