表彰式のその後で
次の日。
パパはタキシード的なモノと蝶ネクタイでバシッと決めていた。
「あなた、似合うわよ」
ママが惚れなおし、
「パパ。すごくカッコいい!」
ラムが褒めたたえた。
「そ、そうか。ありがとう」
舞台袖で緊張気味にお礼を言うパパ。俺はその横でTシャツに短パンという、晴れの舞台に似つかわしくない格好で待っていた。
しかもいま着ているTシャツは克己から貰ったモノで、白地に青文字で「全体的な摩耗」というプリントが施されている代物だった。
親友からのプレゼントなので捨てるに捨てられない。もちろん日本語圏内で着る勇気はない。チージョ星なら文字の判別は不可能だろうと思って持ってきたが、まさかこんな場所でお披露目するとは思いもよらなかった。
その前に、どこでこのTシャツを見つけてくるのか。奴のマニアック加減は匠を極めている。
言いたい事が山ほどある中で表彰式が始まった。
俺とパパは拍手喝采で壇上に迎え入れられた。大勢のチージョ星人が見つめる中、パパが代表で感謝の意を表した。
故郷のために奮闘した事。微力ながら役立った事。人々の協力があって平和を成し遂げた事など。お手本のような挨拶を胸を張って堂々と語っていた。
お礼の挨拶が終わると、これまたタキシードに身を包んだ長官が現れた。長官は俺らの活躍と勇気を褒めたたえた。その言葉に会場からスタンディングオベーションが贈られた。
その後、感謝状が手渡され、金一封的なモノを貰った。
全員がビシッとした格好で立派に表彰されている傍らでTシャツ姿の俺は、引きつった笑顔で米つきバッタのようにペコペコ頭を下げていた。
気恥ずかしさとやるせなさ満載でその場をやり過ごし、壇上から降りた俺は全体的に摩耗していた……。
色んな意味で精神的ダメージを受け、応接室の丸型ソファーでグッタリしていると、長官がニコニコしながらやって来た。
「博士、お疲れ様」
「お疲れ様です」
「素晴らしい挨拶だったよ」
「ありがとうございます」
パパは立ち上がり長官と握手をした。
「三次君もお疲れ様」
俺にも握手を求めてきた。何度会っても緊張する。なにせ、惑星を守る正義の勇者である。宇宙戦士サンジーとしては敬意を払わねばなるまい。
俺はスクっと立ち上がり、直角に頭を下げた。
「こちらこそありがとうございます」
「三次君のお陰でチンカースバロ星人を退治出来たよ」
「全て消滅ですか?」
「いや。まだ完璧ではないが、ある程度は駆逐出来たと思う」
「彼らの生命力は半端じゃないですからね」
「そうなんだよ。倍々ゲームで増えていくからねぇ~」
「大変ですね」
「諦めずコツコツやるのが最善策だと思うよ」
奴らは徐々に数を減らしているとはいえ、ゴキブリ並みの生命力でネズミ算式に増えていく。さらに年がら年中発情期で枚挙にいとまがない。ポッカリ開いた穴を見れば見境なく襲い続ける厄介な連中だ。
退治しても次から次へと新たな仲間を生み出してしまう。
「地味に駆除していくしか方法がないのが現状だよ」
「そうですかぁ」
「三次君の提案してくれた方法があるだけ希望が持てるよ」
「そう言って頂ければ持ってきた甲斐があります」
防衛軍としては一網打尽にしたい所だが、駆逐する数よりも増えていく数の方が多いため、これ以上画期的な方法が見つからなかった。
奴らが現れたら水鉄砲と風船とホースで撃退する。再び現れる。防衛軍が出向いて町中を洗浄して回る。これの繰り返しである。
「手間がかかりますね」
「他に何か良い方法があればいいのだが……」
その時、熟して腐り落ちた柿のような脳細胞がとろけ出した。
「あのう、粘着テープはどうでしょうか?」
「ねんチャックテーブル?」
みなまで言う必要もないが、ゴキブリホイホイである。奴らは薄暗い所を好む性質らしいので巣の近くに置いておけば一網打尽に出来そうな気がする。
俺は何気なく説明してみた。
「おおっ、三次君。また凄いアイデアだね」
「いや、それほどでもありませんが……」
長官は興奮状態でパパに聞いた。
「博士。いまのアイデア、形になるかい?」
「モノがあれば何とかなると思います」
「そうか。では、我が軍として正式に制作を依頼するよ」
「分かりました」
適当に言った内容が採用されてしまった。口は災いの門とはこの事である。これでまた地球~チージョ間を往復するハメになった。
言った直後から「言わなきゃ良かった」と反省した。
「1つ聞きたいのだが、博士と三次君はどういう関係なの?」
「娘の友達で私の家族みたいなものです」
「そうか。良い家族だね」
「ありがとうございます」
「まさに天才一家だね」
長官とパパは揃って笑った。
2人に一言モノ申す。
その言葉、地球人の前で言わない方がいいと思う。続けて浮かぶのはバカボンボンだから。




