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宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
第四部 素晴らしき親友ども
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防衛軍からの呼び出し

「ねぇ三次。起きて」

「うぎゃぁぁ。つ、つめてぇー」


 顔に濡れタオルを乗せられて目が覚めた。


「何すんだよ!」

「すっごい寝汗をかいてたから」

「だからって、濡れタオルを置くな」

「悪い夢でも見たの?」


 現状が悪夢じゃぁぁーー。


「で、何か用?」

「パパが呼んでるの」

「パパが? 何用で?」

「知らない」

「……」


 なあラム。汗をかいたから拭いてあげよう。その親切心はありがたい。だが、寝ている顔に濡れタオルを置いたらどうなるか分かってるのか。目が覚める前に閉じるって事なんだぞ。

 あと、毎回「知らない」って言うが、用事くらい聞いてから来い!


 意味不明のまま宇宙船へ乗り込んだ。



「ところで、チンカースバロ星人はどうなったの?」

「完璧とまではいかないけど、あれ以来、少なくなってるよ」

「そうか」

「町で見かける回数も少なくなったわね」

「それは良かった」

「三次のお陰ね」


 俺のお陰かどうかは別として、安全が確保されたのは良かったと思う。奴らは男から女子供まで見境なく襲う。年齢も幅広く10代から60代まで。突き突き出来るモノだったら花瓶でも襲うだろう。

 何にせよ数が減ったのは幸いである。


「そういえばさ、商店街の会長が三次に会いたがってたよ」

「ああ、女泣かせ会長か」

「女泣かせ?」

「確かそんな名前だったと思うが」

「たぶん違うと思うよ」

「チンチ会長だっけ?」

「それも違うと思う」


 もう何百万光年も往復して色んな人と仲良くなったが、未だチージョ星人の名前は覚えにくい。耳に入ってくる発音が独特なため、日本語に訳すまでに時間がかかる。ただでさえ左脳が死亡遊戯の俺には難し過ぎる。

 ラムのフルネームだって未だに覚えていない。


「ラムの本名ってなんだっけ?」

「ラムチンチ・コレロレロ」

「聞いた事のない発音だから覚えられないんだよ」

「しょうがないでしょ。名前なんだから」

「地球人には覚えるのが無理だな」

「バカだからじゃない?」

「て、てめぇー」


 宇宙でもトップ10にランクインしそうな痴話げんかをしつつ、再びチージョ星を訪れた。

 宇宙船を降りると、3つの太陽が「おかえり」と挨拶してくれた。心地よい夏風がサラッと吹き抜け、少し汗ばんだ肌を軽やかに冷やしてくれる。

 地球では季節ならではの景色と雰囲気を楽しめるが、チージョ星には四季がないため毎日が常夏だ。夏大好き人間の俺からしたら、ここはまさに人類の楽園である。


「あーっ、気持ちいい! やっぱチージョ星は最高だな」

「ハハハ。そう言ってくれると嬉しいわ」

「ところでパパは?」

「研究室にいると思うよ」

「ラムはどうするの?」

「私は図書館へ行って来る」

「あっそ」

「じゃあ、また後でね」


 ミニスカをヒラヒラさせながら飛んで行った。下から眺める水玉もなかなか乙なものである。

 飛び去ったラムを見送った後、久しぶりに研究室へ行った。


「パパさん。お久しぶりです」

「おお三次君。久しぶり」

「ラムから聞いたんですが用事があるそうで」

「そうそう。その事なんだけど」


 パパに手招きされ、いつも通り窓から室内へ入った。


「実は用事っていうのは私じゃないんだよね」

「それじゃあ、一体誰ですか?」

「長官なんだよ」

「ち、長官!?」


 チージョ防衛軍最高司令官であるアシク・ササイノダー長官が俺に何の用があるというのか。まさか俺の頭脳に惚れ込み、防衛軍入隊を秘密裏に進めている訳じゃあるまい。どちらかと言うと、チンカースバロ対策が思うように進まず「貴様のせいで大恥をかいたわ!」などと激高して射撃練習の的にされる可能性が高いと推測する。


「俺、何かヘマしました?」

「違うよ。そうじゃないんだ」


 俺の疑問にパパは詳しく説明してくれた。


 撃退する武器が完成した事により、町に溢れていた奴らは激減した。同時に対策グッズが思った以上の効果を発揮した。

 未だ完全消滅とまではいかず、その後も度々姿を現しては防衛軍を手こずらせるが、何もなかったあの頃よりはマシである。

 武器と対策グッズ。この2つが上手く作用し、もはやチンカースバロ星人は恐るるに足りない存在となった。

 そして、チージョ星に安心と安全を提供した俺とパパは「守護神」として惑星全土が賞賛した。


「しゅ、守護神!?」

「そう。私と三次君がね」

「マジっスか!」


 チンカースバロ星人が暴れ回っていた時は、惑星全土に厳戒態勢が敷かれ、外出禁止令が発動されていた。恐怖に怯えて家に閉じこもる日々。仕事も食事もままならない状態が続いていた。

 誰でもいいから勇気を持って立ち上がって欲しい。そうすれば、みんなで力を合わせて退治出来る。しかし勇気のある者はいなかった。

 そんな中、他惑星から来た男が勇猛果敢に立ち向かった。彼をサポートするべく、地球の武器を改造して対策グッズを考案した。

 2人の姿は惑星住民にとって英雄に映ったのだろう。誰からともなく「彼らの頭脳と行動を称えようではないか」という話が出たらしい。


「要するにね。私と三次君が表彰される事になったんだよ」

「なっ……」

「表彰式は明日なんだけど、一緒に行こうじゃないか!」

「……マジっスか」


 今までの人生で他人から褒められる事は一度もなかった。まして表彰されるなど、前代未聞の空前絶後の未曽有である。


「でも俺、よそ行の服を持ってませんが」

「大丈夫だよ。そのままで」

「表彰式って特別ですよね。Tシャツと短パンでいいんですか?」

「外見じゃないよ。心意気だよ」

「……」


 そりゃそうかもしれない。見てくれはさして重要ではない。パパの言い分は理解出来るが、表彰してくれる相手はチージョ星を守る防衛軍。そこの最高責任者の長官である。そんな権威ある人の前でラフ中のラフな格好でいいのだろうか。


「本当に大丈夫ですか?」

「気にする事はないよ。長官も気さくな人だから」

「……そう、ですか」


 どう考えても不安要素しか浮かばなかった。

 仮に地球だった場合、「何だその格好は! 我が軍の長官をなめてるのか!」そう言われてマシンガンでハチの巣にされそうである。

 惑星を代表する頭脳の持ち主であるバーカネドロン・ゲリモサ博士に頭を下げられたらイヤとは言いにくい。来るたび世話になっているので信用してやらん事もない。

 半ば強引に説得され、しぶしぶ表彰式を受け入れた。





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