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宮本三次は今日も逝く  作者: 室町幸兵衛
第四部 素晴らしき親友ども
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全てが筒抜けなのですが

 その日、俺はラムと地球デートをしていた。

 彼女がかねてから行きたいと言っていた水族館である。


 俺の家から水族館のある場所まで電車で20分くらい。地元から離れているため友人に会う事もない。しつこい牛に絡まれる事もない。周りの視線を気にする事なく心安らかに遊べる。

 地元では他人のフリをして電車に乗る。初めはドア付近に立ち、遠くから静かに動向を見守る。彼女が席に着いたのを確認してからゆっくり隣へ座る。

 ここでモテない男共は、鼻息を荒くしながらピッタリ横に付こうとする。隙あらば体の一部に触れ、耳の裏の匂いを嗅ごうとする。そんな野蛮な行為は相手に警戒心を与え、さらに遠ざける結果になる。


「お嬢さん。お隣空いてますか」

「ええ、どーぞ」

「これからどちらまで?」

「ちょっと水族館まで」

「奇遇ですね。僕もですよ。ハハハッ!」


 このような紳士の対応がモテる秘訣である。



 笑顔の2人を乗せて走ること20分。他の町へ到着したら本領発揮である。

 デートである以上、手を繋いで歩くのは当たり前だ。これが男女の正しい関係とも言える。手から伝わる温もりが距離をグッと縮め、風と共に流れて来る清楚な香りが心を溶かす。

 御多分に漏れず、俺とラムも手を繋ぎながら水族館を心行くまで堪能した。


「楽しかったね」

「そうかぁ~。イソクサムーンの方が楽しいぞ」

「水族館もキレイだったわよ」

「小さい箱に入れられて可哀想だけどな」

「でも食べるんでしょ? 可愛い魚たちを!」

「それはそうだけど……」

「私の愛する魚たちを!」

「……すみません」


 野菜オンリーのチージョ星人には、いくら説明した所で無理である。

 地球では昔から魚は食べる物と決まっている。煮る焼くはもちろん、刺身で食べるのも当たり前の習慣だ。だが、生臭モノを口にしないチージョ星人には「生き物を殺して食す」という行為が野蛮に映るのだろう。

 食文化の違いなので野蛮と言われてもどうする事も出来ない。異文化交流なのだから、その辺を認めて貰わないと困るのだが……。


 水族館を満喫し、ファミレスでまったりとおしゃべり。夢のような時間は瞬く間に過ぎ去っていく。

 他にも色んな所へ連れて行ってあげたいが、ファミレスの支払い金額でドキドキする俺にはこれが限界だった。


「地球って面白いね」

「そう言ってくれれば連れて来た甲斐があるよ」

「そろそろ帰ろっか」

「だな。もうすぐ夕暮れだしな」


 2人っきりの夢の世界に別れを告げ、再び電車に揺られた。


「ねえ三次。来週ってヒマ?」

「来週どころか毎日ヒマだよ」

「ネッチョ・リマコーンに行かない?」

「どこ? そこ」

「ポーコチンミの近くよ」

「だから。どこよ、そこ!」


 電車内での俺らの会話は役に立たない内容のオンパレードである。


「この間抜き打ちテストあったんでしょ?」

「あったような、なかったような……」

「どうだったの?」

「まあ、ボチボチかな」

「もしかして0点だったんじゃない」

「バ、バカにするな。いくら俺でも0点はないわ」

「じゃあ何点だったのよ」

「……10点」

「どうすればそんな点数が取れるの?」

「勘が外れたんだよ」

「毎回外してるね」

「じゃかましい!」


 超絶くだらない話をしたり、肩についたゴミを取ってあげたり。たまに電車が大きく揺れ、ラムが俺の方へ倒れかかって互いにちょっと恥ずかしそうにしてみたり。話の内容など何でもいい。一緒に居るだけで楽しかった。

 そんな青春の1ページを心から堪能しているうち、無情にも我が駅へ到着した。

 会っている時は心が躍動しているのに、別れ際は針で刺されたようにチクッとする。


「じゃ、またね」

「おう、またな」


 バイバイと手を振り、ラムは夕日の向こうへ消えて行った。


 俺らは駅で待ち合わせをし、他の町へ行って思いっきり楽しみ、駅で別れるのがデートの定番になっていた。

 本当は宇宙船まで送り届けたい所だが、ちょっとでも油断すると牛とか毒女とかが猛烈な勢いで迫ってくる。下手をしたら付きまとわれ、ある事ない事を吹聴されてしまう。俺がバカとかスケベとか。

 あらぬ噂を立てられて精神的屈辱を味わうのはごめん被る。

 町へ降り立ったら誰にも会わないよう細心の注意を払って行動していた。


 ただ、先ほどから影のように見守る伊賀者と甲賀者がいるのだが……。



 次の日、学校へ行くと。


「お前、昨日水族館に行ってたみたいだな」とか。

「ファミレスでバナナパフェ食ったんだってな」とか。

「もう尻に敷かれてるんだってな」とか。


 個人情報保護が叫ばれる中、行動の全てがモロバレしていた。


「関係ねぇだろうが!」


 そう言って席に座ると、遠くから伊賀者と甲賀者が薄気味悪い笑顔でこちらを見ていた。


 お前ら、どんだけヒマなんだよ。って言うか、何故デートの日時が分かるんだ。俺とラム以外に秘密のプランは知らないはず。

 探偵でも雇っているのか。もしくはパパラッチのように俺んちに張り付いているのか。まさか盗聴器かっ!


 の野郎ぉぉー。


 今度後を付けて来たらどうかるか、その体に教え込んでやんよ。

「ケツの全貌を定規でビシバシの刑」だからな。






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