始まりはこれから
「焼きそば美味しかったね」
「まあ、ココにしては上出来だと思う」
「そりゃそうよ。だってココちゃん頑張ってたもん」
夕飯を食べ、風呂に入った後、星明り輝く庭でラムと話をしていた。
「三次ってさ、この星に来て大活躍じゃない?」
「別に活躍はしてないと思うぞ」
「色んなモノをチージョ星に持ち込んだじゃない」
「持ち込んだというか、ほぼ偶然に近いけどな」
「でもこの星の人たちに役立ってるよ」
「まあ、な」
地球では薄らバカ。チージョ星では役立つ男。どっちが本当の俺なのか。
……地球な気がする。
「ねぇ三次」
「何?」
「今度の休みってヒマ?」
「まったくやることはないな」
「宿題とかは大丈夫?」
「宿題? 初めて聞く言葉だな」
「じゃあさ、地球に行っていい?」
「何しに?」
「私ね、水族館って所に行ってみたい」
「水族館?」
「うん」
案内するのは構わないが、イソクサムーンの方が100万倍面白いと思う。あそこは海の中で魚たちにとっては我が家だ。縛りも規制もなく、本気の奴らが自由自在に泳いでいる。小さな箱に入れられ、決まった時間にエサを与えられる温室育ちの連中とは比べ物にならない。スケールが違う。
「たぶん面白くないと思うぞ」
「そんなことないよ」
「そうかぁ」
「地球の物を沢山見てみたいから」
「まあ、そう言うなら連れて行ってやるよ」
本人が行きたいとおねだりするなら付き合うが、面白くないからと言って俺を責めるなよ。どっちかというと俺は攻める方だから。
「あーあ。眠くなってきちゃった」
「そうだな。もう遅いしな」
「そろそろ寝るね」
「良かったら一緒に寝る?」
「もう。エロバカ!」
真っ赤な顔をして走り去ったかと思ったら再び戻ってきた。
そして……。
ブチューっとキスされた。
「おやすみ」
チュッ!
一度離れて再度キスされた。
これが青春というやつなのだろうか。
地球ではケダモノ扱いで女子から「下品の匠」と言われている。俺が近づいただけでスカートを押さえ、胸を隠して警戒する。体操着に着替える時は扉の前に見張りを立て、般若の顔で睨みつけられる。
教師はすでにサジを投げており、授業中に質問を受ける事はほぼない。何か事件が起これば真っ先に呼ばれ、俺を主犯格として問い詰める。校内で起こった事件の7割に絡んでいるから、その対応も頷けるが……。
町へ出れば、アダルト映画館の前で「もし自分が監督だったら」というテーマで語り合う。海やプールへ行けば、水中に潜り続けて尻を追いかけ、たわわな胸に舌なめずりする。河原でエロ本交換会やオークションを実施し、狂った刑を執行して笑い合う。やることなすことがバカの見本。
そんな俺がチージョ星で恋をする。
走り去っていくラムの後ろ姿を見ながら、
「宮本貿易商事も近いな」
そう思った。
【番外編 完】




