死神を待ち続ける
一章
いつもの道 。いつもの電車 。いつもの時間 。
何もかもがいつも通りでつまらない 。
学校に行くまでのこの道で、何度思っただろう。
「 おはよーー、咲優 」
後ろから声を掛けてくる人物。これもいつも通り。
「 おはよう、悠 」
悠と私は中学1年のとき、同じクラスになった。
そこから3年間同じクラス。高校も同じで、今は1年生だが、現在進行形で、まだ同じクラス。
「 今日って何かテストあったっけ 」
「 あるよ、5限目の英語 」
悠は勉強が驚く程に出来ない。
私は、400人程いるこの高校の1年の中で、基本10位以内に入れているから勉強は出来る方だと思う。
高校に入ってから勉強三昧になるのも嫌で、少し自分のレベルから下げた高校に入った。
「 うわ、英語かー。嫌だなー、あの先生怖い 」
「 よく補習にさせられるもんね、悠 」
「 そうなんだよーー、嫌われてんのかな 」
「 悠がそれぐらい馬鹿なんだよ 」
高校1年生にもなったのに、単純過ぎる。
私と悠は、この高校の合格発表の日、付き合った。
元々、私は悠のことが気になっていた。というより、好きになっていた。
だから勿論、嬉しかったし、告白されたときは驚いたけど、すぐにOKを出した。
彼氏もいるし、勉強も追いついていけている。人間関係も上手くいっている。
それなのに、なぜこんなにつまらないのかが、自分でも分からない。
「 おーい、咲優、大丈夫? 」
気づけば、悠が私の顔を覗き込んでいた。
「 え、なにが? 」
「 今日、元気無いじゃん 」
悠は、単純な癖にこういう勘は鋭い。
「 そんなことない、ほら、じゃあね 」
靴箱につき、靴を履き替えたところでそう言った。
私はこのまま教室に行くけど、悠は委員会の当番だと昨日言っていた。
「 え、なんで? 」
悠は、意味がわからないというようにこっちを向いて聞いてくる。自分のことなのに、きっと委員会のことを忘れている。
「 悠、委員会当番でしょ? 」
「 あ!本当だ、ありがとー咲優! 」
そう言うと、悠は私に背中を向けて走っていった。
多分また、生活指導の先生に怒られる。
悠は優しくていい人だけど、単純すぎて今でも幼児みたいな行動をして、先生に目をつけられている。
でも、目をつけられているというか、世話を見られている。
悠の委員会は緑化委員会。朝、学校中の植物に水をあげるのが仕事。
ホームルームまでまだ時間はある。
私はクラスメイトへの挨拶もそこそこにして、荷物を自分の机に置いてから、屋上へ向かった。
屋上は、好き。
誰にも邪魔されないで、1人になれる。
誰にも邪魔されないで、この世を去れる。
死ぬ前に、生まれ育ったこの街を見ておこうと、360度障害物が無い屋上で周りを見渡す。
悪くない。
でも、つまらない。
私の今までの人生が全部こうだった。
充実してるのに、心のそこからつまらない。
そんな自分が、大嫌い。
「 もう、いいかな 」
遺書も部屋に置いてきた。
フェンスに手をかけて、覚悟を決める。
校庭側だと人に見られるし、草木もあるから自殺未遂で終わっちゃうかもしれない。
だから、校舎裏の職員駐車場側に落ちよう。
「 グッバイ、世界 」
最後くらい、厨二病地味た事を言っても構わないでしょう。
フェンスを乗り越えて、あと一歩で4階まで飛び降りれるところまできた。
あと一歩足を踏み出せば、死。
逝こう。
「 咲優 」
腕を掴まれた。
振り向くと、そこには悠がいた。
「 あれ、悠。どうしたの、委員会は? 」
悠は、無表情で私を見つめる。
「 終わったよ。今日は紙貰っただけ 」
「 そっか。お疲れ様。じゃあなんで屋上にいるの? 」
少しの間。悠はまだ目線を逸らさない。
「 咲優がいる気がした 」
「 そう 」
「 咲優、死ぬの? 」
いつもいつも単純で真っ直ぐな悠。
でも、ここまで真っ直ぐだと笑えてくる。
「 そうだよ。それ以外にある? 」
「 たしかに、無いわ 」
2人とも、笑う。
こんな状況でも悠は変わらない。
「 咲優 」
「 なに? 」
「 俺も死ぬよ 」
「 なんでそうなんの 」
私が、ただ死にたいだけ。
それなのに何で悠まで死ぬことになるの。
「 咲優が死んだ世界で生きたくない 」
私は最低だ。
こんなに嬉しいことを言ってくれる悠が居ながら、この世界をつまらないって思って、死にたいと思うなんて。
「 でも、まだ死にたくない 」
「 じゃあ死なないでよ 」
「 咲優 」
「 私の話聞いてる? 」
「 やりたいこと全部してから逝こうよ 」
悠は、冗談なんて言っている顔ではない。
私を見つめながら、まるで明日遊ぼうって言うみたいに、そんな提案をした。
「 例えば 」
「 ラーメン食べに行こう 」
二章
どうしてだろう。
今の時刻は水曜日の午前11時。
私と悠はラーメン屋さんにいる。
あれから私はゆっくりとフェンスの内側に戻されて、街を眺めながら、悠の話を聞いていた。
悠は、なんの変哲もない話をした。
昨日の夕飯はハンバーグだったとか、担任が髪を切っていたとか、そんないつでも出来る話。
それから、ちょっとお腹すいたねって言って、ラーメン屋さんに行こっかと言った。
鞄を教室に置いたまま、先生に何も言わずに、私たちは学校をサボった。
「 お待ちどうさまですー 」
背中の曲がったおばあちゃんが運んできてくれたラーメンは、温かくて、美味しかった。
ラーメン屋さんに行くと、悠はいつも醤油ラーメンを頼む。
そして、私の好きな卵を何も言わずに私のラーメンに入れてくれる。
だから私も、悠の好きなチャーシューを優のラーメン入れる。
そんな、いつもと同じことを今日もやる。
学校を出てから何も喋らなかった悠が、口を開いた。
「 いつもチャーシューくれるよね 」
「 悠が卵くれるからだよ 」
「 交換?? 」
「 うん、交換 」
私がそう言うと、悠は微笑んだ。
私が半分ぐらいラーメンを食べ進めたとき、悠はごちそうさまでしたと手を合わせる。
「 美味しかったー 」
「 いつも思うけど、食べるの速いね 」
「 食べ盛りの高校生ですからー 」
悠は、エッヘンという絵文字が付きそうな表情で言う。
私がたべおわるまで、悠は楽しそうに私を見ている。
前、何がそんなに楽しいのも聞いた時、咲優が美味しそうに食べてるの見るの楽しい、と返された。
悠が食べ終わって何分かして私も食べ終わった。
「 これからどうするの 」
「 んー、なにかやりたいことある? 」
「 なにもない 」
なにもないから、死にたくなったんだ。
「 じゃあさ、ゲームセンター行こう 」
「 それが、したいこと?? 」
「 うん、制服デート。プリクラだっけ、撮りたい 」
男子の方から提案するなんて、聞いたことがない。
ゲーセンには、せっかくなら大きいところに行きたいねとなって、私たちは電車に乗って隣街のゲーセンに向かった。
カバンを教室に置いてきた私は、ゲーム代も電車代も払えないよと言っても、悠は行きたいと言って聞かなかった。
電車の中では、私たちはなにも喋らなかった。
ゲーセンには直ぐについて、私たちは最初にプリを撮りに行った。
「 うわ、撮るの初めて。どうやるの? 」
「 初めてなのに撮りたかったの? 」
「 初めてだから撮りたかったの 」
仕方ないなと言って、私はモードやプリのイラストを選ぶ。
「 はい。撮影ブース行こ、撮れるよ 」
「 やったー、ありがと咲優 」
まるで、おもちゃを買ってもらった子供のように、悠ははしゃいでいた。
プリのアナウンスにも、電車みたい凄い!と感動していた。
「 あれ、もう終わり? 」
「 うん、次は落書きだよ 」
「 あ、落書き1人でやってみたい!咲優、待ってて 」
「 いいよ、じゃあ待ってる 」
落書きを1人でやりたいなんて意外。
そう思いながら私はプリ機から出る。
どうせ、髭とか書こうとかいう算段だろうけど。
死のうとした私を、ここまで連れてくる悠は凄い。
本気だったんだ。
戸惑いなんて無かった、あの時私は本当に飛び降りることも出来た。あと一歩で飛び降りれた。
だけど、悠の不思議な力で世界に戻された。
これから、どうするんだろう。
鞄も学校だから、私は電話もお金もなにもない。
家に帰れば、いいのだろうけど、帰るつもりはない。
いつ、悠のやりたいことは終わるんだろう。
「 お待たせー、凄いねプリの落書き、種類豊富! 」
悠は、プリントされたプリを持って私の元へ来た。
「 でしょ、どうなった?見せて 」
「 はい、なかなかの出来ですぞー 」
想像通りだった。
5枚あるうちの2枚は髭やら何やらで本物の落書き。
他の2枚はなんの落書きも無かった。
そして、最後の1枚には
〈 自殺直前!初制服デート 〉
と、悠の下手くそな文字で書かれていた。
私は、笑ってしまった。
「 なにこれ、自殺直前とか書かないでよ 」
「 でも、これが1番お気に入りー 」
お互い笑いながら、プリを見つめる。
笑いが収まり、しばしの無言。
「 悠、いつ私は死ねる? 」
悠は答えない。その代わり、プリへの視線を私に向けた。
「 やりたいことなんて、私にはない 」
何も答えない、だが私への視線は外さない。
「 あと一つだけだよ、俺のやりたいこと 」
じゃあ、それをやれば、この世界からおサラバだ。
「 じゃあ、やろう 」
三章
最後にやりたいことと言って、悠が連れてきたのは、私たちが生まれ育った街から少し離れたところにある、海だった。
「 ここで、何したいの? 」
「 咲優と話したい 」
「 何を 」
「 色んなこと 」
色んなこと、ってなんだろう。
「 じゃあ、生まれてから今までのこと教えて 」
「 教えてって、何を 」
悠は、少し悩んで言った。
「 何でもいーよ 」
何でもいーよが1番困る。私は悩んだあと口を開く。
「 生まれたのは、6月20日。午後5時13分だったっかな。出産予定日ぴったりだったんだって。そこからは元気に育っていった。幼稚園、小学校。幼稚園は多分私は今の何百倍も元気で遊んでばっかいる幼女だった。泥まみれで帰って、お母さんに怒られるなんて、何回もあった。小学校は、今の何倍ぐらいは元気だった。心の底から、楽しいって思ってた、と思う。勉強なんてほとんどしてなくて、点数ゼロ点の時もあった。」
少し口が疲れて、私は少し止まる。
隣に並んで座って、海を見ている悠はなにも言わない。
今の時刻は午後3時。
曇り空で、波も少し荒ぶっている気がした。
「 中学校になったら、悠もしってる通り。どこにでもいそうな平凡な子。友達はいたけど、親友ってほどでもない。テストも最初は酷かった。でも、勉強ばっか強いてくる学校と、友達もほとんどいなかったから、勉強ばっかしてたら。いつの間にか10位以内の常連。でも、1位は取ったことない。そんなとき、悠が話しかけてきたの。数学のテストの点数がそのとき少し悪くて、落ち込んでたら、すげえ咲優さんて頭いいよなって。勝手にテスト見てくんなよって思った。でも、そのときの悠の笑顔が忘れられない。そのすぐ後にあった席替えで隣になって、毎日のように悠は話しかけてきてくれて、どんどん仲良くなった。ずっと同じクラスだったときは、さすがにヤラセを感じたけどね。私が、今の高校に受験するって行った時、悠は自分の実力より遥かに上なのに、俺も受験するって言ってきかなかった。だから、悠が受かってた時、夢かと思ったよ。それで、悠に合格おめでとうって言われたあと、告白されて、私嬉しかった。自分では自覚なかったけど、私悠のことが好きなんだって思った。多分、初めて声をかけてもらった時から。高校生になっても同じクラスでビックリした。でも、自分の実力よりも少しレベルを下げたあの高校でも、1位を取ったことない。ずっと、2位。1位になれない。」
とりあえず、ここまでかなと思って口を閉じる。
悠は、しばらく何も言わなかった。
「 俺の中では、咲優は1番。1位。ダントツ。」
「 ありがと 」
「 やっぱり、この世界は嫌? 」
私はなにも言わずに頷く。
「 そっか。咲優のお母さんとお父さんっていい人だよな 」
「 うん、それなのに親不孝な子供だと思うよ 」
「 咲優って俺のお母さんとお父さん見たことある? 」
「 そういえば、無い 」
「 いないからさ 」
言われたことが分からなくて、少し動きが止まる。
「 そっか、そうなんだ 」
「 お爺ちゃんもおばあちゃんも、兄弟も全部いない 」
言っていることに少し不審感を抱く。
言っていることが、少しおかしい。
「 俺のお母さんとお父さん、そもそも存在しないんだ 」
存在しない。
もし事故とかで死んでしまったなら、死んだんだって言うはず。
でも、存在しないわけが無い。
悠は人間だから、両親がいて産まれてくることが出来る。
「 俺さ、人間じゃ無いんだよ 」
「 どういうこと 」
私がそう言うと、悠はあの時の笑顔を見せて、立ち上がり私の前に立った。
「 どう?透けてる? 」
「 うん、透けてる。凄いね 」
悠の言う通り、悠の体は透けていた。
まるで幽霊かなにかのように。この世の者ではないかのように。
ただ、綺麗だった。
「 怖くないの? 」
悠は、私に問いかける。
「 怖くない。悠は悠だもん 」
思ったまま通り答えると、悠は微笑んだ。
「 何に見える? 」
「 幽霊? 」
体が透けるといば、幽霊。
そんなイメージだけで私は答えた。
すると、悠は意地悪な笑みを浮かべる。
「 ハズレ。大ハズレ 」
「 じゃあ、何? 」
悠は、答えるか悩むように微笑む。
そして口を開いた。
「 死神 」
驚きでなにも言えなかった。
死神って、人を殺すとかそういうもの??
でも、私にとってそれは嬉しい。
なぜなら、私はこの世界とお別れをしたいから。
「 でも、悠は私が中学生の時にはいたよ。いつから死神になったの?今までの悠も、死神だったの? 」
私には、悠と過ごした時間がある。
そのときも悠は、死神だったのか。
でも、悠の体が透けているところなんてみたことがない。
「 この体には、中学生の頃からの記憶しかない。つまり、この体は、俺が仕事をする為に用意されただけ。中学生の頃からずっと、この体は死神が宿っていたよ 」
「 悠は、死神? 」
「 正確には違うけど、だいたいそういう事 」
「 何が目的なの? 」
「 目的は1つ。咲優をあの世に連れていく 」
悠の口からは想像も出来ない言葉だった。
「 私は、死ねる? 」
「 そのつもりだった 」
悠は、少し呆れたように笑った。
「 でも、咲優を死なせなくない 」
「 どういうこと 」
「 俺のいる死神の世界で、絶対に破ってはいけないことがある。それは、人間に感情移入をしないこと 」
悠は、ため息を軽く着く。
「 でも、俺は咲優が好きになってしまったんだよ 」
「 ダメじゃん、死神失格だね 」
「 本当にそうなんだよ 」
悠は、私を見つめる。
優しく微笑んたあと、悠は言う。
「 本当は、咲優は中学2年生の時死ぬ予定だった 」
私は、なにも言わずに先を促す。
「 でも、話していくうちにどんどん咲優のことが好きになって、咲優が死ぬはずの日、任務を果たせなかったんだ。寸前になって、咲優には生きていて欲しいって思った 」
悠は、私のことを助けたということだろうか。
死神なんて見たこともないし、今日初めて見た。
未だに本物かも怪しい状況だ。
でも本当に死神の世界があるのなら、任務を果たさなかった悠は、どんな目にあったんだろう。
そんな私の心を読んだかのように悠は話す。
「 凄く怒られたよ、トップの人に。死ぬはずの人間が死ななかったら、世界に悪影響が出る。そう死神の世界で言われていたから。それは何百万年も昔の話だから、それが本当か怪しい。だから、もし死ぬはずの人間が死ななかった時の世界を観察する。トップの人にそう言ったんだ。そしたら、しぶしぶ許してくれた 」
悠は、私から目を逸らし海を見つめる。
「 でも、悪影響は無かった。咲優が死んだ時の死ななかった時の世界線が、つい最近繋がったんだ。だから、俺の役目は今日でお終い 」
「 お終いって? 」
「 この世から、俺は居なくなるってこと 」
「 待って、悠が死ぬってこと? 」
悠は、全てを受け入れるような顔で頷く。
「 それはダメ、悠が死ぬなら私も 」
「 違う、大丈夫だよ 」
「 なにが、」
「 咲優は、この世界がつまらなくて死にたかったんだよね?でも、それは咲優の体は自分はもう存在しないはずだからって分かっていたからなんだよ。でも、それも無くなる 」
嫌だ。悠と離れるのは嫌。
全部が見に染みてくるから。
今までの私なら、悠にこんな事を言われても動じずに、なら私もという考えになってた。
でも、今の私は体が全身で悠を止めたがってる。
つまらないなんて思ってなくなってる。
「 悠、嫌だ、一緒に生きて 」
「 一緒には生きれない 」
「 悠が居たから、私今生きてるの 」
悠が、今日、私が死ぬのを止めてくれなかったら私は今頃きっと、あの世に逝っていた。
「 でも、どうしても無理なんだ 」
「 悠! 」
どうしても引き止めたくて私は悠の名前を呼ぶ。
その口は、悠の口に塞がれた。
優しいキスだった。
「 悠 」
「 ごめん、咲優 」
「 嫌だ、許さないから 」
「 もう時間なんだ 」
この広い海の水平線に、太陽が沈みかけてる。
きっと、夜が来たら悠はこの世から居なくなる。
「 咲優、聞いて 」
私は悠に抱きしめられる。
悠の胸に顔を埋めて耳をすます。
「 死神は、何度か生まれ変わる。俺も、すぐに生まれ変わる。それで、咲優に会いに行くよ、絶対。次は、咲優とずっと居られるようにする。だから、待ってて欲しいんだ。それまで、ずっと、生きて 」
私は悠の胸から顔を離し、悠の顔を見つめる。
「 猫でも、人間でも、なんでも、絶対に会いに行く 」
「 本当に? 」
「 本当 」
「 絶対? 」
「 絶対 」
私は、悠の表情を見つめる。
一瞬でも離れたくないと今では思う。
でも、悠は約束を破ったことはない。
「 分かった。生きて、待ってる 」
悠に会えるまでは絶対に死なない。
生きて、ずっと待ってる。
「 ありがとう、咲優 」
太陽が、沈んでいく。
悠の姿は、もうほとんど見えなくなっている。
本当にお別れなのだということを無慈悲にも伝える。
「 悠。大好き 」
「 俺も、咲優が大好き 」
「 絶対、また会おう 」
「 会いに来て 」
「 絶対に会いに行く 」
太陽が、沈み、夜がくる。
悠の姿が、完全に見えなくなる。
「 悠… 」
立っていられず、その場に座り込む。
悠、悠、悠、悠、
今、別れたばかりなのに今にも会いたい。
こんなもので、本当に悠を待っていられるのだろうか。
いや、待つんだ。
私は、涙を拭う。
「 悠、待ってる、絶対に 」
海と一緒に、月は輝いていた。
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今夜、死神が居なくなるなら 完
今夜、死神が居なくなるなら を最後まで読んでいただきありがとう御座います。楽しんでいただけたら、幸いです。もしこの作品や、咲優や、悠を好きになっていただけたら、コメントをくださると、励みになりまくります。これからも、2人を応援してください!