幼き大魔導士の付き人兼助手は、今夜も幼女を寝かしつける
なろうラジオ大賞3 参加作品
使用ワードは「助手」
先生の助手としての、僕の朝は早い。
掃除に洗濯、朝ごはんの用意。
薬草や植物の水やり管理。
届いた手紙や依頼書の内容確認。
助手をしている僕の先生は、まだ六歳の女の子だ。
でも先生はこの王国一の大魔導士。
国に唯一認められた、王国専属のお抱え魔導士なのだ。
数々の問題や災害、王国の危機や人々を救ってきた実績のある、超有名なお人なのだ。
とはいっても、まだ六歳。
そこはちょっとだけお兄さんの僕が助手としてしっかりとサポートしてるのだ。
先生の朝は遅い。
お昼ごろにようやく目を覚ます。
「おはようございます。先生!」
「ん……」
先生は朝が弱い。
僕は焼き立てのパンを先生の口に当てる。
「んー」
次に、ぬるめのホットミルクを先生の口の中に注ぐ。
「んー」
先生は座って口を動かすだけ。
そう、先生はとっても面倒くさがり屋なのだ。
自分で歩くのが嫌だから、魔法を使って宙を飛ぶ。
物を運ぶのが嫌だから、魔法を使って物を取り寄せる。
病気になるのが嫌だから、薬を作って先に飲む。
そんなことをしているうちに、魔法の技術がアップしてしまい、いつの間にか大魔導士と世間から言われるようになったのだ。
先生は動かない。
薬の調合も指示を出すだけで、僕がやる。
「この薬草と木の実はどうしますか?」
「んー んん ん-ん」
先生は喋らない。
お城からの伝言も町の依頼も、僕が窓口となって先生に伝える。
「先生、町の人からですが、最近ネズミが多くて困ってるようです」
「ん――― ん」
先生は外に出ない。
国や町からの依頼や買い物は、基本僕か使い魔が行う。
「先生、買い物行ってきますね」
「ん」
喋るのも動くのも面倒くさくなってしまった先生は、全てを魔法と使い魔によって解決するようになったのだ。
そして気がついたら六歳で大魔導士となっていたのだ。
しかし、なんでそんなに、なんでも魔法や使い魔でできる先生に、僕みたいな助手が必要かって?
それは……
「さぁ、先生。お布団暖めておきましたよ」
「んんんー!」
先生は夜、どうしても一人では眠れないのだ。
それは使い魔でもダメで、人間でなくてはだめなのだ。
先生の寝つきは早い。
僕が一緒に布団に入って、物語を読むとすぐに眠ってしまう。
「先生? 寝ちゃいましたか?」
「…………」
僕は先生の小さな寝息を確認して布団から抜け出す。
「先生、おやすみなさい」
「……ぃ……す……き……」
そうして僕はようやく寝室へと戻れるのだ。
「さーて、明日も早いぞ。がんばらなくちゃ」