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Please wait……
設定を読み込んでいます……
100%完了……
更新プログラムがあります
インストール……完了
⚠利用できないプログラムがあります
原因:システムの未実装
⚠読み込めないファイルがあります
原因:ストレージに空きがありません
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…………。
…………。
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利用可能なプログラムのみ実行します
起床動作開始……
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閉じていた目蓋が開き、ゆっくりと上体を起こす。
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安全確認……OK
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「おっはよう! ご主人様だけの可愛いメイド、ユキだヨッ!」
目の前には『ハカセ』がいて、ユキを食い入るように見つめている。はて?
「『ハカセ』。ユキ、どこか変かな??」
こてん、と首を傾げるユキをしばし見つめて。
「……特に変わった様子はない、か」
『ハカセ』もまた首を傾げた。
(??)
◆◆◆
午後、犬型ロボットの修理を依頼した老紳士が訪れた。彼の後ろには、五歳くらいの女の子がいる。
「あの、まだ修理は……」
「孫を少しだけ、預かっていただけませんか」
唐突に「お願いします」と低頭する老紳士。
「ご迷惑なのは承知の上です。ですが、貴方ならきっと孫も安心するかと思いまして、この通りですから……!」
必死な老紳士から聞き出した事情とは。
老紳士はとある有名食品企業の社長である。昨夜、彼の会社のラーメン工場がテロ攻撃を受けた。人的被害はなかったものの、設備の損傷が酷く、しばらくは社長と息子夫婦――女の子の両親――は、復旧作業や取引先との折衝のため、家に帰れないと言う。
「通わせていた保育園もAI誤作動を理由に休園が続いていまして……。預け先がないんです」
「で、ですが私、子供なんて……」
戸惑う碧人をよそに、当の女の子は無邪気な笑顔を浮かべた。
「ヒナです! イイ子にします! よろしくおねがいします!」
親から言い含められたのだろうか。ニコニコと礼儀正しく、ペコリとお辞儀をした女の子に、碧人は思わず、続く言葉を飲み込んでしまった。
◆◆◆
「ユキ、ヒナちゃんのお世話を頼めるかい?」
『ハカセ』の問いに、ユキはコクリと頷く。新しいタスクだ。
そろそろ夕食の時間……。
「えーと……。ヒナちゃんは何か食べられないものはあるのかな?」
アレルギーの有無を尋ねようとした『ハカセ』に、ヒナちゃんは。
「ヒナ、オムライスが食べたい!」
元気にこう答えた。
夕食は、オムライスに決定。
キッチンに入るユキに、なぜか『ヒナちゃん』がついてきた。
「お手伝いしてあげる!」
だ、そうだ。
玉ねぎをみじん切り、インゲンとマッシュルームも
フライパンで鶏肉と一緒に炒めて。
「ごはん、炊けたよ~」
ごはんと一緒にケチャップで炒めて
コンソメスープも隣でコトコト……。
「レタス、ちぎったよ! ミニトマトのヘタ、全部取った!」
卵を割って、牛乳と混ぜて。
バターを溶かしたフライパンに、ジュー!
「おさら出したよ~。テーブル拭いてくる~」
今のところ、何の問題もなし。
ケチャップライスを卵で包む。ここが腕の見せどころ……。
「スプーンOK! フォークもOK!」
ヒナちゃんが元気にキッチンに戻ってきた。
さあ、後は出来上がったオムライスにユキ特製、デミグラスソースを……。
「待って! ヒナが仕上げ、やるの! ストーッップ!!!」
矢のようにすっ飛んできたヒナちゃん。おもむろにケチャップを持つと、一生懸命背伸びして……?
いつもは『ハカセ』一人のテーブルに、今日は二人分の食事が並ぶ。コンソメスープにカラフルサラダ。オムライスは?
「ジャーーン!」
大きな声で、ヒナちゃんがオムライスをドンッと置いた。
『ハカセ』は目を丸くして、
「ええ?! これはなんだい?」
笑み崩れた。
57%の笑顔……!!最高記録……!
「えっへへ。ヒナが描いたんだよ?」
ケチャップで描いたスマイルマーク。少し歪んでいるのに、『ハカセ』を笑わせた。記録にないほどの笑みを。
ピピ……
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なんということでしょう
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演算装置が感嘆の呟きを出力する。
満面の笑みのヒナちゃんとオムライスをつつく、『ハカセ』の笑顔指数は50%前後を推移していた。