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インストール……完了


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原因:システムの未実装

⚠読み込めないファイルがあります

原因:ストレージに空きがありません

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 …………。


 …………。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

利用可能なプログラムのみ実行します

起床動作開始……

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 閉じていた目蓋が開き、ゆっくりと上体を起こす。


ーーーーーーー

安全確認……OK

ーーーーーーー


「おっはよう! ご主人様だけの可愛いメイド、ユキだヨッ!」


 目の前には『ハカセ』がいて、ユキを食い入るように見つめている。はて?


「『ハカセ』。ユキ、どこか変かな??」


 こてん、と首を傾げるユキをしばし見つめて。


「……特に変わった様子はない、か」


 『ハカセ』もまた首を傾げた。


(??)



◆◆◆



 午後、犬型ロボットの修理を依頼した老紳士が訪れた。彼の後ろには、五歳くらいの女の子がいる。


「あの、まだ修理は……」


「孫を少しだけ、預かっていただけませんか」


 唐突に「お願いします」と低頭する老紳士。


「ご迷惑なのは承知の上です。ですが、貴方ならきっと孫も安心するかと思いまして、この通りですから……!」


 必死な老紳士から聞き出した事情とは。


 老紳士はとある有名食品企業の社長である。昨夜、彼の会社のラーメン工場がテロ攻撃を受けた。人的被害はなかったものの、設備の損傷が酷く、しばらくは社長と息子夫婦――女の子の両親――は、復旧作業や取引先との折衝のため、家に帰れないと言う。


「通わせていた保育園もAI誤作動を理由に休園が続いていまして……。預け先がないんです」


「で、ですが私、子供なんて……」


 戸惑う碧人をよそに、当の女の子は無邪気な笑顔を浮かべた。


「ヒナです! イイ子にします! よろしくおねがいします!」


 親から言い含められたのだろうか。ニコニコと礼儀正しく、ペコリとお辞儀をした女の子に、碧人は思わず、続く言葉を飲み込んでしまった。



◆◆◆



「ユキ、ヒナちゃんのお世話を頼めるかい?」


 『ハカセ』の問いに、ユキはコクリと頷く。新しいタスクだ。

 そろそろ夕食の時間……。


「えーと……。ヒナちゃんは何か食べられないものはあるのかな?」


 アレルギーの有無を尋ねようとした『ハカセ』に、ヒナちゃんは。


「ヒナ、オムライスが食べたい!」


 元気にこう答えた。






 夕食は、オムライスに決定。

 キッチンに入るユキに、なぜか『ヒナちゃん』がついてきた。


「お手伝いしてあげる!」


だ、そうだ。


 玉ねぎをみじん切り、インゲンとマッシュルームも

フライパンで鶏肉と一緒に炒めて。


「ごはん、炊けたよ~」


 ごはんと一緒にケチャップで炒めて

 コンソメスープも隣でコトコト……。


「レタス、ちぎったよ! ミニトマトのヘタ、全部取った!」


 卵を割って、牛乳と混ぜて。

 バターを溶かしたフライパンに、ジュー!


「おさら出したよ~。テーブル拭いてくる~」


 今のところ、何の問題もなし。

 ケチャップライスを卵で包む。ここが腕の見せどころ……。


「スプーンOK! フォークもOK!」


 ヒナちゃんが元気にキッチンに戻ってきた。

 さあ、後は出来上がったオムライスにユキ特製、デミグラスソースを……。


「待って! ヒナが仕上げ、やるの! ストーッップ!!!」


 矢のようにすっ飛んできたヒナちゃん。おもむろにケチャップを持つと、一生懸命背伸びして……?






 いつもは『ハカセ』一人のテーブルに、今日は二人分の食事が並ぶ。コンソメスープにカラフルサラダ。オムライスは?


「ジャーーン!」


 大きな声で、ヒナちゃんがオムライスをドンッと置いた。

 『ハカセ』は目を丸くして、


「ええ?! これはなんだい?」


 笑み崩れた。


 57%の笑顔……!!最高記録……!


「えっへへ。ヒナが描いたんだよ?」


 ケチャップで描いたスマイルマーク。少し歪んでいるのに、『ハカセ』を笑わせた。記録にないほどの笑みを。


 ピピ……


ーーーーーーーーーーー

なんということでしょう

ーーーーーーーーーーー


 演算装置が感嘆の呟きを出力する。


 満面の笑みのヒナちゃんとオムライスをつつく、『ハカセ』の笑顔指数は50%前後を推移していた。

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