自惚れ男の高校生活の始まり
「そういえばそんなこともあったわね。フフフ。」
夕暮れ時の病室で老夫婦の会話が聞こえてくる。どうやら昔話をしているらしい…。
扉に耳を立てていると、中から人の気配がするのを感じ慌てて、扉から離れた。私が狼狽していると、中から出てきた老婦人は優しく話しかけてきた。
「そんなに私達の昔話を聞きたいのかしら。変わった人ね。」
老婦人はそう言って口元に手を当てて笑った。年老いているとはいえ、切れ長の目、結上げられた髪はかつてはとてつもないほどの美貌を持っていたことをよういに感じさせる。
「けどあの人ももう寝てしまっているし、話し相手がいなかったのよね。よかったら昔話を話してもいいかしら。」
私は是非聞かせてくださいとくいぎみに答えた。婦人は微笑みを浮かべ、自分と夫との出会いを語り始めた。
自分は周りの人間より優れている。このような考え方に至ったのはいつからなのだろうか…。
恐らくここまでの人生に於いて何かしらの嫌なことがあったのか、それともただの自惚れか…。
少なくとも中学生の時にはこのような考え方だったのかもしれない。中二病だとかそんな指摘は無粋だ。
くだらないことを考えてるうちに、この春通う高校の門が見えてきた。自分が変わるチャンスは今しかない!秘めたる力を開放するときだ!皆にわからせねばなるまい。誰かに馬鹿にされようが、笑われようが、最後に笑って勝つのはこの俺、『篝火征弥』
だってことをな!!!
「征弥!いつまで寝てるの!今日は高校の入学式でしょ。」
母親の耳元での一撃に慌てて飛び起き、走って高校へ向かうのであった。