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閑話 産、む……?

『それはそれとして、気になることがあるのですが……』


 秩序の神に忠誠を誓った後、改めて離れた丘の上から混沌の村を見下ろした。

 

 かくれんぼをする子供。

 ぼうきれを振り回して遊ぶ子供。

 農作業の手伝いをする少し育った子供。

 

『子供、多くありません?』


『そうだね。混沌の軍勢は数で攻めるけど、逆に言えば戦死者も多いから、その分子供を多く産んでるんじゃないかな?』


『産、む……? それにお腹が膨らんだ女性もいますけど、病気でしょうか? 城塞都市なら医療の神の信徒によって病気はすぐに治してもらえるのですが……』


『え、あれは妊婦さんじゃないの?』


『妊、婦……?』


 秩序の神との間で沈黙が下りた。なんだろう。何かお互いの間で何か認識に齟齬があるような……。

 何か神からの教えを僕は取りこぼしてしまったのだろうか。

 

『えーと、アル君。人間は女性が赤ん坊として新しい命を産む。これはいい?』


『なんですって……!?』


 人間が人間を産む。そんなことがありえるなんて……。

 

『……それじゃ、城塞都市じゃどうやって子供って産まれるの?』


『産むというか、両親の血液を混ぜた泥を、大地の神の神官がこねて造りますけど……』


『大地の神、何やってるの……』


『ち、秩序の神よ、お怒りをお沈めください!』


 思わず僕は、地べたに突っ伏し、秩序の神に許しを乞うた。

 

『……いや、ごめん。怒ってるわけじゃなくて、困惑してただけだから。

 なんでそんなことに……あー、質問だけど、城塞都市って女の人も戦闘とか家の外で普通に働いてたりする?』

 

『申し訳ございません。普通というのがどういうものかはわかりませんが、男女問わず軍事には携わりますし、《ドレス職人》や《料理人》などのクラスにもつきます』


『なるほど。女性の社会進出が進んだ結果の人口出産か。……理屈は理解できるけど、なんかなあ……』


 僕にはよく理解できなかったが、秩序の神の助けになれたのなら何よりだった。

 

『ええと、アル君、他に気になることはある?』


『そうですね……老人が村の中にいますけど、何か理由があるんでしょうか?」


『城塞都市にはいないの?』


『ええ。一定以上の年齢になると、体が弱り、文明の神々と城塞都市に貢献できなくなるということで、名誉ある突撃部隊に編入されて命を終えます』


『……それって戦傷者も?』


『はい、そうです。あ、混沌の軍勢の村では戦傷者も暮らしてるみたいですね。今見つけました』


『そうです、じゃなくって……ああ、ごめん。アル君に怒ってるわけじゃない。

 文明の神々なりに道理はあるんだろうけど、そういうところも含めて見直さないとなあ……』

 

 秩序の神のおっしゃることは今の僕にはよくわからなかった。

 だけど、お仕えするのならこういうことがわかるようにならなければ、たとえ少しずつでも。僕はそう思った。

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