第二話
今回は短いです
零の部屋へと帰った彼等は、スーツ姿の彼女たちの話を聞いた。
(ちなみに黒髪の女性の名前は『ナギ』、赤髪の女性の名前は『ウル』というらしい。)
まず、彼女たちは信じられないことに異世界から来た人間だった。
その異世界は魔法・魔物・異能力が存在する世界で、彼女たちと『アレク』という人物は自分の持つ魔力と希少な異能力で、ありとあらゆる依頼をこなしていく冒険家だった。
そんな彼は彼女たちと離れて行動している途中何者かに暗殺され、彼と『契り』を交わしていた彼女たちはそれと同時に姿を消した。
しかし、気が付くとこの島にこの姿で立っており、下された覚えのない『使命』が頭の中にあった。
更に不思議なことにこの島の中で彼との『契り』の気配を感じた。
そこで彼女たちはそれを頼りに『アレク』を探し始め、今日の朝にその『契り』を体内に内包している人物を見つけた。
それが零だった。
「で、君が一人になるところを見計らって接触しようと思ったんだけど・・・。」
彼女がいたからね~、とナギと一緒にこれまでの経緯を話していたウルが横目で雫を見る。
その顔は笑ってはいるが、目は真剣で彼女を推し量るように見ていた。
それに気づいていないようで、当の本人はなぜか勝手に部屋のキッチンを使い、お茶を淹れている。
零はひとまずそれを無視して、彼女たちに向き直った。
「お話は何となく分かりました。」
「では・・・。」
「でも僕はあなたたちが知っている『アレク』ではないし、正直それを信じられない。」
「っ・・・。」
当たり前だ。
いきなり見知らぬ人から、「あなたは異世界の人間だった。私達はあなたの部下だった者です。」なんてそう簡単に信じられるわけがない。
彼女たちが言っていた『使命』というやつも僕には覚えがないし、今の話を聞いてもさっぱりと見当がつかない。
少しの間、彼らの間に重たい空気が漂った。
「あのー、ちょっと質問良いですか?」
淹れたお茶を零達の前に置きながら、雫は恐る恐ると言った感じで話に入ってきた。
「いいですよ。 何ですか?」
ナギは彼女の様子を見て、微笑を浮かべた。
この空気を少しでも晴らそうとしているのだろう。
雫はそれを知ってか知らずか、零も気になっていた質問をした。
「あなた達が言っているその『使命』というのは何なんですか?」
その質問に彼女たちは顔を見合わせて、意を決したようにお互いに頷いた。
「本来はアレク様自身に思い出してもらい、他の人には知られぬように行動するつもりでしたが・・・。」
~ 翌日 ~
彼等は昨日と同じように一緒に朝食をとっていた。
だた昨日と同じように周囲の視線に気を配れるほど零の心に余裕はない。
それは雫も同じようで、二人は何も話さずただ黙々と食べている。
ナギとウルは雫の質問に答え、『使命』の内容を話した。
その後、「しばらく情報を整理する時間をあげますが、正直そんなに猶予はありません。 ご了承ください。」と言って、二人の目の前から煙のように消えた。
その結果、彼等はその『使命』の内容を含めて、彼女達から聞いた話の衝撃の強さに困惑している。
気付けば、彼等は学校の教室にいて、やっと整理ができたのは放課後になってからだ。
その日の帰り、彼等は再び二人で帰っていた。
しかし、やはり二人の間には会話がなかった。
零は帰宅後、普段と同じように筋トレを始めた。
いくら自分がインドア派とは言えども部屋に籠って何もしないのは体に悪いと思い、中学生に上がってから続けている。
彼にそれなりの筋肉がついているのは四年にわたって続けていたこれのおかげだった。
筋トレが終わり、彼はシャワーを浴びて、夕食を軽く済ませると携帯が鳴った。
(ま、大方雫だろうな。)と思いつつ、携帯を開くと案の定雫からだった。
零はベランダに出て、液晶をタップした。
「もしもし。」
「あ、零くん。 いきなりゴメンね。」
「いや、別にいいよ。 どうしたの?」
「えっと、ちょっと零くんと話したくてね・・・。」
雫は少し沈黙した後、ゆっくりと話し出した。
「零くんはさ、昨日の人たちのことどう思う?」
「ナギさんとウルさんのこと?」
「・・・うん。」
「どうだろうね。 あの人たちは嘘を言っている様には見えなかったけど、正直信じられないよ。」
「そっか、そうだよね。」
「当たり前だよ。 たとえホントのことだったとしても僕にできることはないし、付いていくことはないよ。」
少なくとも今はそのつもりだ。
僕らはその後、クラスのことなどを話してから電話を切った。
~・・・~
また、俺は水の中にいた。
暗く深い海の様な場所をゆっくりと落ちていく。
(あぁ、またか・・・。 また俺は・・・。)
俺は上に向かって手を伸ばしながら、徐々に意識を手放していった。
しかし、意識が完全に消える直前
(ん!? 何だ!?)
突然、伸ばしていた手の先に三つの光が集まって、俺を照らし出した。
(アレク! アレク! 目覚めなさい、アレク!)
(アレク様、早く目覚めてください!)
(早く目覚めないとこの世界が・・・!)
光は口々に俺に目覚めを訴えかけてくる。
俺はその光の訴えに応えるように必死にもがいた。
しかし、それを許さないかのように昨日と同じように黒い手が伸びてきて、俺の腕や脚にまとわりついてきた。
(・・・クソッ、すまんもう少し待っててくれ!)
俺は消えていく意識の中で、瞬く光に再び手を伸ばした。
(それまで頼むぞ! ナギ、ウル!)
そこまで言ったところで僕は再び意識を手放した。
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