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異世界からの転生者  作者: 夏風 木葉
記憶を取り戻す。 そして転生へ
1/3

第一話

誤字脱字があればコメントしてください。

目を開けると、そこは水の中だった。

光はあるが周りには魚すらもいない、ただ静かな場所だ。

俺は、その水の中を静かに沈んでいく。

どこに沈んでいるんだ? 

そう思った瞬間、何かが俺の肩を掴んだ。

(何だこれ?黒い・・・手?)

俺はそこで初めて下を見た。

そこには暗い闇が広がっていた。

(ヤバイッ!)

直感的にそう思った俺は、光が差している水面の方へ手を伸ばした。

しかし、黒い手は無情にも俺の足・胴・腕と徐々に全身を掴んでくる。

俺はここで腕を掴まれたことによって、ある事実に気付いた。

黒い手に掴まれた部分は少しずつ崩壊を始めていた。

(畜生、何なんだここ! どこなんだ! 俺はまだ! 俺は、俺・・・は?)




(あれ・・・?)




(おれ)って誰だっけ・・・?)



そうして僕は黒い手によって、全身が崩壊した。






「・・・はっ!?」


気が付けば、彼はいつもの部屋で目覚めていた。

見慣れた天井を眺めながら、乱れていた息を整える。

(・・・ッ!)

頭がズキリと痛む。

ここんとこずっとこんな夢を見ていた。

そして、決まって夢を見た後は頭が痛むのだ。


「まったく、何なんだよこの夢は。」


息が落ち着いてきたところで、彼はベッドから出てカーテンを開け、空を仰いだ。

天気は雲ひとつない晴れで、気持ちのいい朝だ。

(さて・・・。)

彼はクローゼットから制服をだして着替え始める。


「お腹すいたな・・・。」


着替え終わった彼はまだ何も食べていなかったことを思い出し、支度を手早く済まし、寮の食堂へと向かった。

寮の食堂はどこもビュッフェスタイルで、好きな組み合わせで朝食を摂ることができる。

彼はいつも通り、スクランブルエッグやウインナーを皿に取っていると、ふいに声をかけられた。


「おーい、零くーん。」

「ん?」


声のした方を見ると、そこには零と呼ばれた彼と同じ学校の制服を着た女子生徒がいた。

髪は腰のあたりで整えてあり、清楚な雰囲気を漂わせている。

彼女の名前は『雛川 雫』、零の小さい頃からの友達。いわゆる幼馴染ってやつだ。


「おはよ、雫。」

「おはよー。」


彼女の前には、野菜多めの朝食が並べてあった。

どうやら彼女もこれから朝食を摂るところらしい。

こうして、零たちはいつも通りの朝食を始めた。


「はぁ・・・。」

「どうしたの? なんか顔色が悪いよ?」

「う~ん、まあ、いつもの夢を見てね。」


ため息をついた零に彼女は、心配そうな声をかけた。

彼女は、零のあの悪夢のことを知っている。そのせいか、よく零のことを気にかけてくれるのだ。


(けど・・・。)


周りをチラリとみると、いたるところから男子からの嫉妬の眼差しが送られてきている。

そう、雫はそのルックスや性格からいろんな人からモテるのだ。(いろんな人というのは男女問わずという意味だ。)

しかし、質が悪いことに本人はそのことに気付いていない。いい加減気付いてほしいものだ。


「そっか、大変だね。」

「もう慣れてきているよ。」


周りの視線に耐えながら、零は雫と談笑する。(ただ零の笑みがぎこちなかった。)

しばらくして、お互い食べ終わったところで時間を確認した。

時計の針は7:00を指し示している。零達の普段の登校時間は7:30なのですぐに自室に戻って、準備をしなければいけない。


「もうそろそろ行くよ。また学校で。」

「あ、待って!」


食器片付けて、そそくさとこの場から離れようとした零を、雫が少し慌てた様子で呼び止めた。


「後で迎えに行くから、一緒にいこ?」

「・・・わかった。」


どうやら零は通学路でもこの嫉妬の眼差しに耐えなければならないようだ。

それを悟った彼は軽い頭痛を感じながら、部屋に戻った。

彼女がなぜ頬を赤らめていたのか、知りもせずに。




ここは、『芽吹島』という人工的に作られた島だ。

ありとあらゆる娯楽施設や学校が建っており、その学校に所属している者とその他の施設で働いている者しか住むことが許されていない。

彼等はそんな島に設立されている『私立 千鳥学園』に所属していて、ここはその学生寮だ。

零は生活費は両親が毎月一定額振り込んでくれているので、生活にはたいして困っていない。

実に快適な学園生活を過ごしている。


(ただ・・・。)


零は寮からの通学路を歩きながら、隣を歩く幼馴染を横目で見た。

雫は宣言通り、部屋まで迎えに来て一緒に登校している。

そして彼は予想通り、


(うぅ・・・、視線がいたい。)


周囲の嫉妬の目に晒されていた。

気が弱い彼としては、地獄の様な時間だ。


「はぁ・・・。」


思わずため息がこぼれてしまった。

それを体調不良と勘違いしたのか、雫が心配そうな顔で彼の顔を覗き込んだ。


「まだ、気分悪い?」

「い、いや。 もう平気だよ。」

「そう? ならいいんだけど。 無理はしないでよ?」

「うん、ごめん。」


零は一応、心配してくれたことに少し申し訳なく思った。

そして、今この現状を乗り切るために雫と他愛のない話をしながら、彼は学園へと向かった。








「それじゃ、また帰りにね!」

「う、うん。」


学園に着いた彼等は、それぞれのクラスへと向かった。

この学園は成績によってクラスがA~Dに分けられている。

因みに、僕がAで雫がBだ。

教室の扉を開ける時、少し気になって雫の方を見た。

雫はクラスの友達に元気よく挨拶しながら教室に入っていくところだった。

別に羨ましいわけではない。

昔から一人でいることに慣れているし、寧ろそのほうが好きだった。

しかし、あの夢を見るようになってからというもの、彼女を見ると胸がざわついたりする。


(ホント、何なんだろうな、コレ。)


彼はそんなことを想いながら教室へ入り、何も変わらない一日を過ごした。








~同時刻、とあるビルの屋上~



ビルの屋上、ちょうど零達が見える場所に二人の女性が立っていた。

二人ともスーツ姿だが、髪型が背の低いほうは赤髪のツインテールで、背の高いほうは黒髪のロングにしてある。

赤髪の女性が零を見て呟いた。


「あの子が?」

「えぇ、あの子から()()を感じるわ。」

「やっぱり、あの子だったんだ。」

「そうね・・・。」






「やっと見つけました、アレク様」





黒髪の言葉と共に二人の姿は何処かへと消えた。










~放課後~


全ての日程が終わった零は、さっさと荷物をまとめて、教室から出た。

このまま一人で帰ろうかと思ったが、それを見透かしたようなタイミングで雫が教室から出てきた。

そして彼を見つけるなり、


「零くん、一緒に帰ろ?」


と、満面の笑みで言ってきた。

周りの目もあり、断りづらいので、


「うん、分かった・・・。」


と言った。

こうして今、彼は雫と今朝同様に一緒に帰っている。

ただ、お互い特に話すことが無いので彼等の間に会話はない。

あってもせいぜい、この問題が分かんないだとか、今日の夕食はどうしようかなどといった他愛もない話になる。

こうした彼等の帰路はすぐに終わると思っていた。

しかし、今日はなぜかずっと胸がざわついていた。

何かが起きるような、何か大事なものを忘れているような、そんな感じがずっとぬぐえないのだ。

そんなことを感じてると帰り道の公園の近くで、ふいに零の制服がくいっと引っ張られた。

見ると、雫が公園の中の何かを見ながら彼の制服を引っ張っていた。

何を見ているのかと思って視線の先をたどってみると、そこには自動販売機があった。


「のどが渇いたの?」

「ううん、ただ気になるジュースがあったから。」

「あぁ、なるほど。」


雫は昔から期間限定とか新発売などの言葉に弱かった。

零はいつもと同じような感じで、納得する。


「僕が買ってこようか?」

「え? いいの?」

「うん。 で、そのジュース?」

「一番上の列の右から三番目。」

「ん、了解。」


彼は雫にその場で待っているように言ってから、そのジュースを買いに行った。

そのジュースは期間限定と書かれた、レモンフレーバーの炭酸飲料だった。

彼はそのジュースと自分のお茶を買って、雫のもとへと戻ると、数人の男子生徒に囲まれた雫が見えた。

男子生徒の恰好から察するに、別の高校の不良達だろう。

その男子生徒にナンパでもされているのか、雫は困った顔をしている。

零は逃げようかと少し躊躇したがが、彼女とは長い付き合いなのと男子生徒の一人が雫の腕をつかんで無理やり連れて行こうとしたので、とりあえず雫のもとへと向かった。


「雫? 大丈夫?」

「零くん。」

「あぁン? 何だてめぇ?」


零は彼女の肩を叩いて話しかけた。

すると、明らかにリーダー格と思われる男子生徒が、彼を睨みながら威嚇するように言った。


(うぅ・・・、怖いなぁ・・・。)


そう今更ながらに思うも、すでに引き返すことはできないのでなるべく穏便に話を進める。


「すみません、彼女が困っているのでやめてもらえませんか?」

「あ? てめぇには関係ねぇだろうが!」

「ですが・・・。」

「あ~もう、るっせぇな!」


ドガッ


リーダー格の男が零を思いっきり蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされた彼は雫の足元で尻もちをついた。


「けほっ。」

「零くん!?」

「ギャハハハハ、おいおいどうした? そんなんじゃその子は守れないぞ~?」

「アッハハハ、こいつ弱ぇ~!」

「なあ、そんな奴放っておいて俺らと遊ぼうぜ?」


雫の腕を掴んでいた男が、もう一度雫を引っ張っていこうとする。

それを見た瞬間、


バチン


何かが弾けるような音が頭の中でして、スゥっと思考と体が軽くなる。

(何だこれ?)

そう思って、不良達を見るとこの瞬間だけなのか、彼らの動きがスローモーションのように見えた。

今ならと思った僕はその状態のまま雫の腕を掴んでいる男の腕を掴んだ。

いきなり腕を掴まれた男は驚いて、僕を見た。


「な、何だよ!?」

「・・・ろ。」

「は?」


僕が言ったことがよく聞こえなかったようなので、僕はもう一度、今度ははっきりとした声で言った。


「失せろ。」


この時自分でも驚くほどに低い声が出た。

それと同時に、


ブアアァァァアア


得体のしれない『何か』が僕から放たれる。

それはガスのように放出され、周りの空気に溶けこんでいく。

それが溶け込んだ空気は少し重く感じた。


「ッ!?」

「ヒッ!?」


リーダー格の男と腕を掴んでいた男が間近でそれを浴びた。

不良組はこの『何か』に完全に怖気づいたのか、何も言わずその場から立ち去って行った。

彼らの姿が完全に見えなくなって、


「ウッ・・・!?」


零の足から力が抜けていった。

確かに恐怖心はあった。

しかし、それ以上に何かが彼の頭の中に働きかけてきた。


(何だったんだろう?)


僕はさっきの出来事に妙な違和感を覚えたが、それが何なのかはっきり分からなかった。

体から何かが出ていく感覚。

その感覚になぜか心がざわつく。


「零くん!」


雫が零を心配して、駆け寄ってくる。

と、それとほぼ同時に、


シュタタッ


どこからか二人の女性が姿を現した。

その二人はスーツ姿で、身長差が十五センチくらいある二人だった。

一人は赤髪のツインテール、一人は黒髪のロングである。

彼等がいきなり出てきた二人に驚いて呆けていると、二人は零の方に静かに歩いてきた。

そして、彼の前で片膝を立てて跪き、右手を左胸に当てた。


「お待たせして申し訳ありません。 我が主、アレク様。」

「え?」


黒髪の女性にいきなり言われた名前に彼は困惑した。

彼の名前は『峰代 零』であり、断じて『アレク』という名前ではない。

更に言うとその名前にも心当たりがなく彼は完全に困惑した。

だから彼は雫のことかと思い、隣まで来ていた雫を見た。

しかし彼女も零と同じことを考えたのか、彼と跪いている彼女たちを交互に見ていた。

その様子に彼は雫のことではないことをすぐに悟った。

そんな僕たちの様子に構うことなく、黒髪の女性は話を進めていく。


「これより、アレク様には私たちと一緒に任務に移っていただきます。 ですので・・・。」

「あの・・・。」

「? 何でしょうか?」

「僕はアレク?という人ではありませんし、第一あなた達は誰ですか?」


僕は黒髪の女性の話を遮って尋ねた。

すると彼女たちは何かに驚いたように目を見開いた。

黒髪の女性はショックを受けた表情をすぐに直し、僕に恐る恐るといった雰囲気で尋ねた。


「お忘れなのですか?」

「お忘れも何も、僕たちは初対面ですよね?」

「・・・どうやらあなたの言ったとおりのようですね、ウル。」


僕が答えに彼女は合点のいった表情で、隣に跪いている赤髪の女性にそう言った。

僕たちはまだ困惑している様子を見ると、彼女たちはおもむろに立ち上がった。


「ここではゆっくり話ができません。 どこかいい場所はありませんか?」

「えっと、それなら僕たちの寮が近くにあるのでそこに移動しましょう。」

「分かりました。 案内をお願いします。」


黒髪の女性に案内を頼まれ、彼は力が抜けていた足に再度力を入れ、自分の部屋へと帰った。

感想などありましたらコメントしていただけると今後の励みになります。

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