チート作品を書けない、作者の言い訳
「異常に速い成長率で、チートライフ!」
「俺だけが使える最強スキルで、お気楽冒険者生活!」
「神様がお詫びでくれた加護が、あまりにも便利すぎるんだが?」
小説家になろう(以下、なろう)では、チートスキルを持ったキャラクターが登場する小説が数多く投稿されています。なろうの作品によってはチートスキル持ちの主人公の他にチートを持つキャラが登場します小説もあります。
29,878作品――――これが現在、《チート》という単語を検索した結果です。チートという単語があらすじやタグに含まれていないだけで、それに近い小説もまだまだあるでしょう。
それだけ、なろうに登録されている作者様達がチートスキルを持った話を書いているという証明です。
1つの風潮、「チートの作品は感想が貰いやすい」「お気に入り登録されやすい」「書籍化されやすい」というのが、なろうでチート作品が多く書かれている理由だと思います。
それだけ多くの方が書かれているなら、「簡単に書けるんじゃないか?」――――そう思われる方も多くいらっしゃると思います。
でも、私は書けません。
チートの定義にもよりますが、多くのチート小説の場合、《主人公がピンチとは無縁の立場にある》というのが私の見解です。
例えば、敵が禁忌とされる強力な武器を持ってこようが主人公は軽く撃退。
食糧難が国家規模の問題になっていても、主人公が出したアイデアで一瞬で解決。
あるかどうかも分からないアイテムを探し求める者に、ちょっと前に拾ったからといってあっさり渡す。
時折、作者によっては問題が提示されてから、その解決策を考えたり、話しあったり、あるいはそれを突破するための訓練をしたりもするでしょう。
だがしかし、《主人公がピンチになる》という機会はないように思います。
能力で無双していて、無効化能力持ちが出てくる。
でも、関係なくぶっ飛ばす。
相手との実力差は誰もが分かるほど明らかで、勝ち目なんてないに等しい。
でも、意味もなく覚醒してあっさり倒す。
コンプレックスや人嫌いを抱える少女に対して、誰もが近付けない。
でも、主人公なら数分で懐かせる。
状況に対して、正解を導き出す。そのために色々と調べるのが、現実社会のやり方です。
けれども、なろう読者――――とりわけ、こう言ったチート小説が大好きな読者達はそんな事は望んでいないし、見たくもないのです。
圧倒的な無双、ご都合主義にも見える展開、誰もが主人公の事を一瞬で好きになる。
そう言った、夢物語。現実にはない夢のような世界が、彼らが求めるチート小説なのです。
でも、私はそう言った小説が書けないのです。
能力持ちを作ると、基本的に対抗策なり、それが効かない相手を考えてしまいます。
相手との実力がある展開を作ると、それを突破するための修業はなにが良いかなと考えてしまいます。
一瞬で好きになる女の子、そんなのヤンデレか過去になにかあったに決まってるじゃないかと考えてしまいます。
考えすぎでしょうか? いえ、それが私なのです。
誰もが書きやすい物語や展開があったとしても、誰もが書ける訳じゃないのです。
だからこそ、それを書ける人は躊躇してはいけません。
他の人と比べたり、差別化をはかったりするのは良いです。でも、他の人が書いてるなら、と諦めないでください。それはあなたにしか書けないのです。
あなただけの物語なのです。
読者の方は、面白い作品があったら是非広めてください、感想をあげてください。
作者は機械ではありません、最初にこうだと決めたらとことん真っ直ぐ完結まで書きあげる機械ではありません。
自分の作品が面白いかなと気にします。
誰かの心に響いてるかな、お気に入り登録されてないかなとドキドキします。
感想来ないかな、レビューあると良いなとワクワクしています。
それに対して「読んだ、次を読もう」「感想なくても続き書くでしょ」と思ってはいけません。感想は、あった方が良いのです。
私はチート作品は書けません。けれども、自分が書ける分野は他にもあると考えて、色々な小説を書いてきました。
チートも挑戦しました、その上で自分には書けないと断言しています。
書けないことは、恥ずべき行為ではありません。
書けない事を、他のせいにするのがいけないのです。
読者の皆様、心に響いたら感想下さい。
それが私が唯一、望む事です。