聖霊都市
『固有武器』
知性ある者に贈られる祝福のアイテム。魂に刻まれた運命により、己の得意分野、職業に必要な特殊能力を持つ道具を一つ、魂の力で顕現させる聖霊公国の者だけに顕現する能力。
農民なら土壌が良くなる鍬や載せたものが若干軽くなる桶
狩人や冒険者なら気配が薄くなるマントや命中補正が掛かる弓
騎士なら特殊能力のある武具の類や盾鎧等
それらは運命によって決まり守られ、人々の生活を栄えさせる
それは同時に可能性が運命によって縛られるという事であり、俺は―――
聖堂教会
この国、いやここらの大陸国家で国教として扱われる宗教組織。教義は主に『固有武器』という恩恵を与えてくれた主に感謝を。といった内容だ。
俺は全くもって俺に呪いを与えたその主とやらに感謝の気持ちが湧かないのだが、なんの皮肉か聖堂教会の総本山、クルクー大聖堂直属の組織の団長なんてもんを幼少からやっている
仕事内容は単純。上から指示された事をその通りにやるだけ。そう、ただそれだけ。
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クルクーは世界最大の宗教施設である。聖地である巨大な霊峰クルクー山脈を覆うように建てられた教会郡は各地より巡礼に来た信者達で溢れかえっていて、迷宮のある都市、迷宮都市をもじって通称、聖霊都市
そんな中教会郡の中でも1番巨大な聖堂。クルクー大聖堂のとある一室では、一人の最高位の修道士と修道士の皮を被った男の会話があった
「いやいや呼び出してすまんね。エイト君」
「それで、ご要件は何でしょうか枢機卿?わざわざ文書ではなく枢機卿直々の司令とは」
「話が早くて結構。これでも私は枢機卿。何かと忙しい身分なのでね。時間は限られているんだよ」
「はぁ、それで依頼は?」
「おっと、すまんすまん。つい無駄話をするところであったよ。では、本題に入ろうか。キミ、勇者と魔王はもちろん知っておるよね。」
「それは勿論。とはいえ魔王は世界に厄災をもたらすもの。勇者は魔王復活が迫った時、主の恩恵『固有武器』により選ばれし者。そして現在魔王の復活が近い。って位ですが」
「その通りだとも。そして聖堂教会は先週、
聖剣『オリジン』を顕現させた勇者を発見、保護した。
その事も把握しているね?」
「そりゃぁ暗部じゃ結構な話題になりましたから。勇者の発見。これで世界は大丈夫。はぁーめでたい事で。」
「その通りだ。だがしかし、今の1回も覚醒すらしていない勇者は、たとえ
『勇者システム』を使おうとも魔王討伐への旅の道半ばで倒れるであろう」
「そこでだ、キミには勇者の付き人として彼女の成長の手助けをしてもらおう。キミの才能と『固有武器』はそういう事にも向いているよね」
「確かに後進の育成は俺の得意分野ですが、今の『実行部隊』はどうするんですか?臨時休業?」
「いやいやキミは引退だ。次の長の選択はキミに任せるよ。どうせ後続の育成は完了しているんだろ?」
「…………」
「何はともあれ勇者の力は強大だ。もしあれが教会に対し翻意を翻すつもりなら…………その時はたのんだ」
「はい」
「では二日後の一の刻に勇者の付き人として相応しい格好で大聖堂の第1歓迎室へ来てくれ」
「承りました。それでは」
男は修道士の皮を脱ぎ捨て、影のように一瞬で風景に溶け込む。もう枢機卿には彼の姿は見えない。彼はまだこの部屋にいるかもしれないし、いないかもしれない。しかし枢機卿にはそんな事はどうでもいい事であった。彼が裏切る事など万に一つも無いことだから
彼の名はエイト。書類上には存在しない裏の聖堂騎士団『黒い教会』団長。血塗られた教会を影から支える暗部の組織の一人である
私の名前はカリア・ロップ。ちょっと他の子達より運動が苦手なロップ村生まれのただの平民の女の子。
神様が10歳になったら一人に一つ自分の得意分野とか、なりたいもの、の為に必要な生きていく上で自分の武器となる道具『固有武器』をみんなに与えてくれるんだよ。って村の神父さんが『固有武器』の十字架に祈りながら言っていた。
みんなのお姉さんである食堂の看板娘のユキ姉の、ご飯が美味しくなる鍋とか、お母さんの編み物が上手くなる針とかも素敵だけど
私の夢はこの村をお花でいっぱいにすること。だから、私が10歳になったら出せるようになりたいのは魔法のじょうろ。それで村のあちこちを綺麗なお花でいっぱいにしたいの。
お隣さんに住んでいた土いじりが好きな幼なじみのブランは一年前『固有武器』で、斬ったものを燃やす鉄の武器をだしてから突然「冒険者になるんだー」って言いだして村を出ていった。
神父さんは主のお導きじゃ、って誇らしい顔をしてたし。おじさんやおばさん、村長さんはあの馬鹿は、と言っていたけど仕方ないって顔をしていた。
みんな自分の生き方を『固有武器』に任せている。もし私の『固有武器』が武器だったら私もあんなふうになっちゃうのかな。そう思うと急に10歳になるのが怖くなってきた。
物語に出てくる聖剣を持った勇者様はどんな気持ちで戦ってたのかな?魔王も本当はとても優しい子だったんじゃないかな?ブランは何であんなに変わっちゃったのかな?
そんなことを考えている内に私も10歳になった。
そして私が神様に与えられたものは
その刃は見る者を魅了する程に鋭く、刀身は強く美しく光り輝く1振りの剣
それはまさに『聖剣』だった
『聖剣』が与えられたという事は、勇者に選ばれたという証明であり、魔王を倒す旅に出なければいけない。本当に何かの間違いであって欲しかった。
話はその日の内に村中に広がりたくさんの村人に祝福された。でも、その言葉の一つ一つが私の心の大事な何かを押し潰していった 。最後にお父さんとお母さんが私を勇者と祝福した時に、私の大事な何かは何処かに行ってしまいそうになった
私は、ただ―――
ねぇ、私はどうすればいいの?
聖霊都市 とある貸し屋の一室
エイトはかつての組織の突然の一時離脱からの引き継ぎや、それによる異動の調整。自身の荷物の整理で1日が過ぎ、勇者との邂逅まで残りは1日となっていた。
男の一日はまず、ベットの中での思考から始まった。
(こんな人間が勇者の付き人ね。)
エイトにとって人生とは影の中、闇の奥でひっそりと生き、誰に看取られることもなく静かに消えていくものと思っていた。それが運命により決められた運命なのだから。
勇者といえば陽の世界で生きる英雄。眩しい程陽の当たる世界で、誕生した事を誰もが祝福し、消えゆく時は、たとえ看取られることは無くとも世界の誰もが嘆き悲しむ。そんな運命を持った者。
(少なくとも俺の様な日陰者が近づいていい存在じゃ無いんじゃないのかね)
それでもエイトは勇者との邂逅を柄にもなく楽しみにしていた。
もしかしたら勇者は旅の中で俺の運命も救ってくれると期待しているのかもしれない。
旅か、傭兵時代以来かもしれないな…………
旅の道具を整理しようと部屋の中をエイトは見渡すが、寝具と書類を書く為に買ったの机以外に物がない。精々あるとすれば現金の入った金庫に、畳まれて床に置いてある衣服と壁にかけられた十字架のネックレス
先日までは支給されていたマジックバックに旅にも使える備品が沢山あったが生憎全て返却してしまった。
勇者の付き人として旅に出るなら何が必要だろうか?やっぱり装備の類はいるだろうな。
(今日は道具の買い出しだな)
エイトはベットから起き上がり、着替えて街へ出ようとドアを開けると、玄関前に少女が立っていた
「おはようございます」
「…………っ!!」
完全に無気配な存在感。人混みに混ざれば簡単に雑踏に埋もれそうな平凡な顔に、常に抑揚のないトーンの声。
2代目ナスタマ枢機卿直轄聖堂騎士団『黒き教会』現団長テレサ。要は俺の後釜だ。
「なにしに来た?」
「私も付いていきます」
「帰れ」
バタッ!ガチャ
咄嗟にドアの鍵を閉めてしまったがそもそも奴が何で俺の家の前にいるんだ?
ドンドンドン!ガチャ
ドアに掛けられた鍵は5秒ほどで破られた。優秀な奴め。
テレサは『黒い教会』では、俺の補佐を務め、人心掌握は然る事ながら仕事の速さも一流だった為に団長に起用した。しかし、引き継ぎの際の書類整理は徹夜しても物理的に終わらせるのは不可能な筈だ。
「仕事はどうした?」
「みんな辞めた。長がいないこんな場所に価値は無いって。枢機卿から正式に『黒い教会』を解散する書状も貰った。だから、私行く宛がない。だから長について行く」
テレサは然したる事でも無いかのように自身の部下が全員辞めたと語る。というより全員辞めちまったのか。
まぁ俺が居なけりゃ辞めるやつは出るって思ってたが全員とは、とはいえテレサの要求を呑むことは出来ない
「断る」
すると、ただでさえ虹彩の弱いテレサ目が闇のように暗くなる
「どうして?長と一緒なら私何でもするよ。長の為なら何だって出来るよ」
「じゃあ部下引き戻して傭兵でもしてろ」
「…………わかった」
「あっ!」
軽口を本気にして、テレサは完全に周囲に溶け込み何処へ行ってしまった。ホントに俺の為なら何でもするから、俺の部下だったコイツらが怖い。まぁ忘れっちまうのが一番いいか。
もうテレサの事は頭の中に記憶として残っているが、問題にでもならない限り思い出さないし気にしない。それがエイトの人生観である
(さて、装備でも買いに行きますか)
エイトは1人独白をすると金庫から金を取り出し街へと繰り出す
私が『聖剣』の担い手に選ばれてから一週間もしない内に、村では見かけない凄く上等な服を着た教会の人達が話を聞きつけてやって来た。
『聖剣』に選ばれた勇者は主の代行者として魔王を倒さねばならない運命にあるらしい。その為の力を得るために『聖霊都市』に来てもらいたいと教会の人は私に頼んできた。
村の人達はもう両親ですら私を勇者として見ている。どうせ村にもう私の居場所は残って無いのだし、私は『勇者』になる為に『聖霊都市』へ行く事を決意した。
村から馬車に乗ること一週間。本当にあっという間に聖霊都市に着いた。馬車には魔術で馬が疲れるたびに回復魔法を掛ける魔法機が仕掛けてあるからこんなに早いのだと村にやって来た聖堂騎士の双子さんが言っていた。
聖霊都市は彼方此方に村の教会より何倍も立派な教会や聖堂が並んでいて、到着した日に二百万人以上の教徒のいる聖堂教会の1番上、教皇レオニール様に面会した。
教皇様によると、勇者は魔王討伐の旅に出るが、私はまだ真の勇者にはなっていない。それで、十日後から真の勇者へと覚醒する為の試練を行うらしい
覚醒する為の試練とはクルクー山脈にある教会の所有する迷宮『聖霊王の試練』の山頂にある聖霊王の下に辿り着く事
そして、その一日前に教会が私の付き人を派遣することになっている。何でも教会の抱える秘蔵っ子で『勇者』の次くらいに大きな運命を持つ存在らしい。
いくら『勇者』に選ばれたとはいえ、私はただの平民の女の子。武器の持ち方も魔法も使えない。だから教皇様の申し出はありがたかった。
十日後の試練までは、村まで来た聖堂騎士の双子さん達に剣術の基礎を指南してもらったり、魔法を教わっていた。
運動が苦手な私は、脳筋な双子の姉のファットさんの指導は辛かったけど、ほんわかした癒し系の妹セットさんの魔術指南はとても面白く感じた。他にも、二人と聖霊都市を散策して服や自身の装備を買ってもらった。経費ってすごい!
二人に指南してもらった九日間は私にとって1番充実していた。魔法は身体強化や初級魔術まで使えるようになってセットさんに褒められたし、剣術は最後までファットさんに一太刀も当てられなかったけど体を動かすことも楽しいなと思えるようになれた。
そしてやってきた9日後。教会の選んだ人と顔を合わせる日。教会から派遣されてきた人は
そして、なんとファットさんとセットさんが旅に一緒に付いてきてくれるらしい。
固有武器・万能の九十九暗器
主からの祝福。俺の固有武器は『暗器』の類の物だった。『暗器』それは忌み子の象徴の一つ。親に棄てられ、傭兵家業をしながら放浪しているうち、教会に拾われた。
その後は少しの洗脳と訓練の後、暗器系の固有武器を持つガキだらけの新設された暗部の実行長となった。理由は単純、俺が1番暗殺者としての適性が高かったからだ。
固有武器によって運命が決まるって聖堂教会の連中は言っていたが本当にその通りになった。
故に俺はただの暗殺者だ。
いや、ただのガキに人を殺させたそれ以上の外道だ。否定はしないさ
聖なる焔に抱かれて消えなっ!ブラフマー
元々優秀な神官だったが、対アンデッドにのみ聖霊の力を借りる契約により、アンデッドに異常な特攻を持つ
アンデッドの放つ瘴気を燃料に辺りを爆発させる業ブラフマーと瘴気を燃料に自身の身体能力を上昇させる業を使える
毛皮の耳当てを格闘技のヘットギアの様に被っている変人
何があっても十字架は身に付けない
聖鳥ホネルスを騎獣として飼っている