衝撃事実
かくして始まった尾行作戦でしたが、結果から言うと完全に失敗に終わりました。
初め、気づかれないように注意しながら、香奈先輩と石井先輩の背中を追っていた私達でしたが、通路がT字のようになっているところに差し掛かった時、香奈先輩達は、まっすぐ行かずに、曲がったのです。
急いで私達がその通路に入ったところ、2人の姿が消えていました。
完全に見失っていました。仕方なくそのまま、その通路の先を目指し歩いていた私達でしたが、その時、突然後ろから声をかけられたのです。
「なーに3人でこそこそしてるの?」
私達は突然かけられた言葉に驚き、勢いよく後ろを振り向くと、そこには、さっき見失ったはずの香奈先輩が立っていました。
隣には石井先輩の姿も見えます。
「あ、あははは……」
愛花ちゃんから渇いた声が漏れます。
この時だけは、ニコニコしている香奈先輩の顔が怖くて仕方ありませんでして。
そして今、私達は5人で、フードコートの一角にて、休憩がてら、遅めの昼食をとっているところです。
「お2人ともすいませんでした!」
愛花ちゃんが向かいに座る先輩達に対して、頭を下げます。
「ご、ごめんなさい……」
私もそれにならい頭を下げました。
「だからやめといた方がいいって言ったのに……」
そんな友達2人の姿に、優里奈ちゃんは呆れたように目をそらし、昼食についてきたドリンクを飲みます。
「いいよいいよー。そんな謝んないで」
「で、でも……」
「そんなことよりも、早く食べちゃお。私お腹空いたー」
「別にオレも気にしてない」
香奈先輩と石井先輩は、私と愛花ちゃんにそう言うと、昼食として買ったハンバーガーに手をつけます。
私も愛花ちゃんも、2人の態度にホッとして、ひとまず昼食をとることにしました。
しばらく、無言の昼食タイムとなります。
「まさか、3人も来てたなんてねー」
全員が昼食を食べ終えたところで、香奈先輩は楽しそうに微笑みます。
「私達もびっくりしましたよー」
それには愛花ちゃんが答えました。
部活の先輩後輩だけあって、香奈先輩とは仲がいいですから。
「いや~、でもまさか後輩に尾行されるとは思わなかったよ~」
「あ、あの……ごめんなさい!」
「あははは。いいっていいって。でもなんで尾行?普通に話しかけてくれればよかったのに」
「それはその……ついおもしろそうだなって思っちゃって」
「あ~愛花らしいかも」
「そうですか?」
「うんうん。小動物みたいでかわいい」
なにやら香奈先輩にとっては愛花ちゃんは純粋にかわいい存在でしかなく、何をしても微笑ましく映ってしまうようでした。
愛花ちゃんの頭を撫でては、楽しそうにしています。
「でも、理子ちゃんも乗り気だったなんて意外」
愛花ちゃんに頭をなでながら、今度は私の方に聞いてきました。
「いやその……私は……」
私はどういっていいか分からず、しどろもどろになります。
平津先輩がいたかもしれないから……なんて言っていいものか。
「香奈先輩。今日、平津先輩は一緒じゃないんですか?」
私が考えあぐねていると、優里奈ちゃんが香奈先輩に聞きます。
「幸くん?」
香奈先輩が不思議そうに首をかしげると、私の様子を一目見て、何か察したように不意に微笑みます。
「あーそういうことか。なるほどなるほど……」
「何がなるほどだ」
「いいの。智弘は黙ってて」
「そうかよ」
香奈先輩の様子に、気になったように石井先輩が話しかけましたが、香奈先輩の一言により、すぐに身を引きました。
すると、香奈先輩は私に両手を合わせると、申し訳なさそうに頭を下げます。
「ごめんね理子ちゃん。幸くんは今日いないの」
「は、はい!そうですか。分かりました……」
「よかったら、今からでも呼ぶ?多分暇してるだろうし、来てくれると思うけど?」
「そ、そんなこと平津先輩に悪いですから。大丈夫です!」
私は赤くなった顔をごまかすように、慌てて香奈先輩の提案を断りました。
そんな私の様子を見て、香奈先輩だけじゃなくついには石井先輩も何か察したような表情を浮かべます。
それを受け、私の顔はどんどんと熱くなっていきます。
「えー?でも、会いたいでしょ」
香奈先輩はそんな私に対して、意地悪な質問をしてきます。
「そ、それはそうですけど……」
会いたいか会いたくないかで言われれば、もちろん会いたいです。
だけど、そんなことのために、平津先輩をここまで来させるのには気が引けました。せっかくの土曜日。平津先輩に迷惑が掛かってはいけません。
そんな間でも、香奈先輩はスマホを取り出して、私のことを見ています。
「香奈先輩。あんまり理子っちをいじめないで下さい」
すると、愛花ちゃんが私を助けるように、香奈先輩に一言声をかけてくれました。
そのおかげで、私にも落ち着きが戻ってきます。
「ごめんごめん。理子ちゃんが何だか初々しくてついね」
「ダメですよー。理子っちは私と違って、純粋な子なんですから」
「うん。顔真っ赤にしてるの見てよく分かった。ごめんね理子ちゃん。恥ずかしがる理子ちゃんがかわいくてつい調子乗っちゃった」
「い、いえ、大丈夫ですから」
「悪い新菜。オレも香奈を止めなかった」
「ほ、本当に大丈夫ですから。気にしないでください」
香奈先輩と石井先輩、両方に謝られて、私はちょっと焦りました。
慌ててそう言うと、2人の顔を上げさせます。
「でも、なんで今日、平津先輩いないんですか?」
優里奈ちゃんが先輩達2人に聞きます。
確かにそれは私も気になっていました。幼馴染だろうと常に一緒にいるわけじゃないことは分かりますが、わざわざイロイまで平津先輩を置いて、2人で来るなんてあまり想像できません。3人が仲のいい幼馴染だとは、ボランティアの時に見ていましたから。
愛花ちゃんも同じことを思っていたようで、優里奈ちゃんの言葉に頷いています。
「そりゃあ当たり前だよ」
すると、香奈先輩は衝撃的なことを口にします。
「だって今日は私と智弘のデートなんだから」




