タイプの違う3人
私が駅に着いたのは集合時間の10分前でした。
いつもの様に、待ち合わせの駅前にある大時計に向かいます。
今日は休日ということもあってか、駅前は多くの人で込み合っていました。
私は辺りを見回し、愛花ちゃんと優里奈ちゃんの姿がないか確認します。
すると、私の方に手を振っている女の子が目に入りました。
すらっとした長身で、長い髪を後ろで一つに束ね、下は黒のパンツで、上は白の服とシンプルでかつクールな印象を与える格好をした、優里奈ちゃんでした。手には手提げかばんが見えます。
私は優里奈ちゃんに駆け寄ります。
「おはよ。理子」
「おはよう。待たせちゃってごめんね」
「いいよ。私が早く来過ぎただけだから。それに、愛花はまだだし」
優里奈ちゃんはそう言って、スマホを取り出すと画面をみました。
「あと少しで着くってさ」
「愛花ちゃんから?」
「うん。愛花っていつもこういう時遅れるでしょ。だから前もって連絡しといたの」
「そうだったんだ」
時々ですが、私達は愛花ちゃんの誘いでこうやって3人で出かけることがあります。そしてその時、たまに愛花ちゃんが寝坊して遅れるということがあったのです。
今日はそうならないように、優里奈ちゃんが事前に連絡を取っていたみたいで、その心配は無くなりました。
しばらくすると、愛花ちゃんがこっちに向かって走ってくるのが見えました。
「お待たせ~」
流石は運動部に入っているだけあって、愛花ちゃんはここまで走ってきたのに息一つ乱していません。
愛花ちゃんはミニスカートで、上はTシャツに、フード付きの上着を羽織り、背中にはリュックを背負っています。
肩にかからない程度の髪は、先端が少しウェーブがかっていました。
「揃ったし行こ」
「レッツゴー」
優里奈ちゃんの言葉に愛花ちゃんが続いた後、私達は電車に乗るために、3人で駅の中へと入っていきます。
券売機で往復券を買うと、改札を通り駅のホームに向かいます。
乗車列に並ぶと、電車が来るまでの時間、3人で待ちます。
「いや~、こうして見るとさー、私達って皆タイプ違うよね」
待ち時間の間に、愛花ちゃんが私と優里奈ちゃんを見て、唐突にそんなことを言い出しました。
「急にどうしたのさ」
「だってね。いつもは制服じゃん。なんていうか、こう私服を見ると性格て出るんだなーって思ったわけよ」
「何をいまさら」
「でもさーよく見てよ」
すると、愛花ちゃんがまず優里奈ちゃんを指さします。
「優里っちは、なんていうかクールで大人っぽいでしょ」
続いて私を指さしました。
「理子っちは可愛く清楚系だし」
そして最後に自分を指さします。
「私はほらこんなんじゃん」
「まぁ、確かにね」
「よくもまぁ、こんだけタイプが違う3人が仲良くなったよね~」
愛花ちゃんはそう言って腕を組んでうんうんと頷いています。
確かに、私達3人は他の人から見たら、全然タイプに違う集団に見えてしまうかもしれません。
だけど、
「私は、愛花ちゃんと優里奈ちゃんと友達になれてよかったって思うけど」
私は素直な気持ちを呟きました。
すると、愛花ちゃんは私に言葉に感動したように、うるんだ瞳で私を見てきます。
「理子っち……」
徐々に私に近づいてくると、突然私は愛花ちゃんに抱きしめられました。
力強く抱きしめられ少し恥ずかしくなります。
「なんていい子なんだー」
愛花ちゃんは私の胸に顔をうずめてそんなことを言いました。
周りに視線が私に集中します。
私がどうしていいか困っていると、優里奈ちゃんが愛花ちゃんの頭を叩きます。
「こら。少しは落ち着け。そろそろ電車来るから」
優里奈ちゃんに頭を叩かれ愛花ちゃんは私から離れると「ごめんねー」っと言い無邪気に笑います。
すぐに、駅のホームに音が鳴りました。電車が来る合図で、しばらくすると電車がホームに止まります。
降りる人がいなくなったのを確認し、私達は他の人と一緒に電車に乗り込みました。
座るところがあればよかったんですけど、生憎今日は休日で利用者が多く、三人で座れる席は空いていませんでした。
2駅しか移動しないといっても、20分は電車に乗っていないといけません。
出来れば座りたかったのですが、こうなっては仕方がないとして、3人仲良く扉の近くに立ちます。
まず1駅目に到着しました。
扉は私達とは逆側が開き、続々と人が入ってきます。
気づけば、電車内は人で埋め尽くされていました。
日頃電車に乗らない私は、この混み具合に少し驚いています。
愛花ちゃんがそんな電車内の様子を見て呟きました。
「結構混んできたね」
「まぁ、土曜だからね」
「仕方ないか。まだ日曜日よりはマシだし」
「そうなの?」
私と違い愛花ちゃんと優里奈ちゃんは落ち着いています。
「そっか。理子っちあんま電車乗らないもんね」
「うん」
「日曜日は大変だよ。立ってるので精一杯で最悪なんだから」
愛花ちゃんが苦い顔をして説明してくれます。
「特に、あのショッピングセンターが出来てからは特にひどくなった」
優里奈ちゃんが付け足してくれました。
その状況は想像しただけでも、あまり体験したいとは思えませんでした。
「まさか、ここに乗ってるほとんどの人が、目的地同じってことじゃないよね……」
「多分、皆同じだと思うよ」
「やっぱり……」
優里奈ちゃんの返答に、愛花ちゃんが肩を落としたように項垂れます。
私も、これだけの人数が同じところに向かっていると思うと、少しだけ気分が落ち込みました。
きっと、ショッピングセンターは混んでいることでしょう……
「2人ともそんな気にしなくても大丈夫。中は結構広いから、それほど混んでるって思わないと思うよ」
優里奈ちゃんがフォローしてくれます。
どうやら、優里奈ちゃんはショッピングセンターに行くのは初めてじゃないらしく、結構知っているようでした。
電車は速度を緩めることなく、どんどんと進んで行きます。
あと数分もすれば目的地に駅です。