約束
私の部屋の机の上に置いていたスマホが鳴りました。
一度鳴っただけで、その後に止まったので電話ではなくメッセージアプリでしょう。
私は、スマホを手に取り、画面をつけました。
そこには、メッセージアプリの通知を知らせる表記があり、それをスライドさせアプリが立ち上がります。
メッセージは愛花ちゃんからでした。
『理子っちー。明日暇?』
とだけ打たれた短いメッセージでした。
私は明日の予定を思い出します。
今日は金曜日の夜で、明日は学校が休みです。
お母さんやお父さんはいつもと変わらず仕事ですから、家のことを少しやるだけで、これといって予定はありません。
『暇だよ』
そう打ち、愛花ちゃんに送信しました。
数秒経たず、既読を伝える表記がでると、すぐに返信が来ました。
『じゃあ、行きたかったショッピングセンター行こうよー』
愛花ちゃんが言っているのは最近になって私たちの街の近くにできた、大型ショッピングセンターです。
電車で2駅ということもあって、出来てから愛花ちゃんと優里奈ちゃんと話していたのですが、愛花ちゃんの部活があり、行ってはいませんでした。
優里っちと一緒に行ってこればー?っと愛花ちゃんに言われましたが、一番行きたがっていたのは愛花ちゃんです。だから、行くなら3人でということになっていました。
どうやら、明日は愛花ちゃんが部活が休みらしく、こうして誘ってきたというわけです。
『いいよー。でも、優里奈ちゃんは?』
行くなら3人でとなっていたので、あとは優里奈ちゃんです。
きっと、私と同時進行で愛花ちゃんは優里奈ちゃんにもメッセージを送っているでしょう。
すぐにして、愛花ちゃんから返信が来ます。
『オッケーだって!決まり!』
愛花ちゃんから嬉しそうな文字と共に、ニコッと笑った顔のウサギのスタンプが送られてきます。
喜んでいる愛花ちゃんの顔が思い浮かぶようで、私もつい笑ってしまいました。
『明日は10時に駅に集合ね!』
『うん。分かった』
私の方も了解という意図のスタンプを送り、そこでやり取りは終わります。
3人とも中学は違いますが、家は近い位置にあるようで、最寄りの駅も同じでした。
ということもあって、毎回遊ぶ時の集合場所は駅と決まっているので、何も困ることがありません。
私はその後すぐにベットに入り眠りにつきました。
朝、起きると、仕事のお父さんはもう家にはいませんでした。
お母さんが仕事の前に朝食を作ってくれています。顔を洗ってから、リビングに行くと、お母さんはエプロンをつけてキッチンに立っていました。
「おはよう」
私がそう言うと、お母さんが私の方に振り返ります。
休日なのに平日と同じ時間に起きてきた私を見て、驚いたような声を上げました。
「あら、早いわね」
でも、すぐに朝食づくりに戻ります。
私はつけられていたテレビを見ながら、ソファーに腰を下ろしました。
「うん。今日出かけるから」
「そうなの?」
そう言いながら、私と自分の朝食を作り終えたお母さんは、お皿をテーブルの上に置きます。
私もソファーから体を起こし、お母さんと向かい合うように椅子に座りました。
今日の朝食はパンとゆで卵というシンプルなものです。
一緒にココアも、私の分までお母さんが作ってくれていました。
コーヒーもあるのですが、お父さんばかりで、私とお母さんはいつも朝はココアです。
テレビでは朝のニュース番組がやっています。
『今日の天気は晴れ。日差しが強く、洗濯物がよく乾くでしょう』
女性のアナウンサーの人が笑顔でそう言います。
いい天気になってよかったです。
「どこ行くの?」
お母さんが朝ごはんを食べ終え、ココアで一息ついていると、私に聞いてきました。
「ショッピングセンターだよ」
「あー!最近できた?」
「うん。愛花ちゃんと優里奈ちゃんと3人で」
「そっかー。いいなぁ。私も仕事が無かったら言ったのにー」
お母さんが羨ましそうに私を見ます。
子供っぽいお母さんの姿を見て、私は微笑みました。
「にしても、理子ー?」
するとお母さんは唐突に何やら笑みを浮かべました。
「な、なに?」
「理子、最近いいことあったでしょ」
お母さんは私の顔を覗き込むようにしてきます。
私は恥ずかしくなって、飲みかけていたココアの入ったコップで顔を隠しました。
「そんなことないよ……」
「嘘つきなさい。お母さんの目はごまかせないわよ~」
そう言ってお母さんが私に顔を近づけるので、私は観念してこの間のことを話しました。
「あら~それはよかったわね~」
お母さんは私の話を聞いている間、ずっとニヤニヤしていましたが、こう言って自分の頬に手をあてながら何故か自分が嬉しそうにしています。
「あの時の公園の子、先輩だったの」
平津先輩のことをお母さんに話すとすぐに、あの雨の日に私に手を差し伸べてくれた優しい男の人だと分かってくれました。
覚えてくれていたみたいです。
「どうなの?その子」
「優しい先輩だよ」
「連絡先は?」
「この前交換した」
私の頬が熱くなっていくのが分かりました。
「いいわね~青春って感じで」
お母さんは羨ましそうに昔を思い出しているようで、一瞬上を向きました。
私はお母さんにはっきりとは『平津先輩が好き』だと言っていないのに、お母さんは私の気持ちを察しているようでした。
お母さんには隠し事はできませんね。
「うまくいくといいわね」
「うん」
「でも、お父さんには内緒にしないとね」
「なんで?」
お父さんは別にこのことを知っても反対はしないと思いました。
お母さんと一緒に応援してくれると思っていただけに、私は首をかしげます。
「きっと、理子に好きな人が出来たって聞いたら『俺の理子が~』っていって私に泣きついて来ると思うから」
お母さんはその時のことを想像しているのか、恥ずかしそうな顔をします。
「お父さん、理子のこと大好きだから」
「あはは……」
私も何だかそんなお父さんの姿を思い浮かべて、苦笑いが出ました。
私のお父さんは、優しくって時々面白いです。そんなお父さんのおかげもあってか、私の家族は毎日笑っているので、私もお父さんのことは大好きです。
「って、もうこんな時間!」
お母さんが慌てたようにエプロンを取って、仕事に行く準備をを始めます。
時間を見ると、時刻もうお母さんが家を出る時間でした。
鞄を持って、乱れた髪を整えると、リビングから出ていきます。
「じゃあね理子。楽しんできてね」
「うん。お母さんも気をつけて」
「ありがとう。あと、悪いんだけど残ってる洗濯物干しておいてくれない?」
「分かったから。遅れちゃうよ」
「そうね!じゃ、よろしく」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
お母さんは慌てて玄関を出ていきます。
すぐに、外に置いてある車のエンジン音がし、遠ざかっていきました。
私はその後、残った食器を洗うと、私服に着替えました。
今日は日差しも強く出かけるのに最適の天気です。私は、白のワンピースに、淡い緑色の上着を身に着ける、シンプルなファッションにしました。
出かける準備を終わられると、お母さんが出来なかった残った洗濯物を干しました。
それが終わると、丁度いい時間になったため、私は小さい鞄を肩にかけ、靴を履き、集合場所の駅へと向かいました。
始めていく大型ショッピングセンターです。
今から楽しみでした。