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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第一章 森守り姫の生活
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 レオンの治療のときに壊れてしまった器を新調するため、目が細かい蔓の籠を持って川へ向かう。


 以前作ったときは家のすぐ横の土を使っていた。しかしウルチーモが危うくその穴に落ちそうになり、それ以降は家の周辺から土を採れず、離れた場所で集めることになっている。


 家の横にある穴は、粘土作成時に利用。イリゼの腰あたりまである深さで、身長よりも高い木を支えにして作業する。


 作業しやすいように、膝まである服の丈は、足の付け根付近まで切り込みを入れてあった。下には腰を冷やさないように一枚履いている。


 穴に集めた土を入れ、捏ねるときの水分はアスールの湯を使う。


 準備を整えたら、あとは適度な固さを足の裏で確認しながら捏ねる。ひたすら捏ねる。


 耳たぶよりも少し柔らかいぐらいの理想的な状態になった土を、籠に入れて穴の外へ出す。何度か繰り返して全ての土を出したら、支え木を使ってイリゼも外へ出た。


 作業台にしている、平たい石に水をかけて塗らす。粘土と石がくっつかないようにするためだ。割れてしまった器の欠片をさらに細かく割り、粘土に混ぜた。こうすることで、少し強度が上がる。


 まずは器の底になる、両手を広げたぐらいの大きさの土台を作った。平たくしつつ、縁を少し上げる。そこに細長い棒状にした粘土を水でつけていく。手首から肘ぐらいの高さまでその作業の繰り返し。割ってしまったのは二つ。さらにもう一つ同じ大きさの器を作った。


 できあがった器を十分乾燥させるため、薪を焚いている家へ運ぶ。


 家の中は二人分の寝床として、一段高くしてある箇所が二つ。その上に枯れ草、さらに細かく裂いた木の皮で編んだ敷物を置いてある。寝るときに火は絶やさないように調整しているから、それで十分暖かい。


「おや、作ってくれたんだね」


 寝床に腰を下ろしていたウルチーモが、イリゼを歓迎する。


「まあね。おばばもできるだろうけど、大変でしょ? わたしが割っちゃったし、前よりも大きいやつを作りたかったの」


 持ってきた器を、焚き火の前に置く。


「イリゼや。ここで暮らすために充実させるのはいいことだ。だがもっと充実したくないかい」


「またその話?」


「邪険にされても、わたしが安心できるまで、何度だって言うよ。ヒューツニビレーに行くんだ」


 --街に行ったら、あの人に会えるかな。


 レオンが傷つけられたのは、まだ昨日のこと。あれから青年に対しての考え方は変わった。悪い人間ではなかったから、また話してみたいとも思う。


「……ちょっと、行ってこようかな」


「おや、どうしたんだい? あれほど嫌がっていたのに」


「べ、別にいいじゃん? おばばだってもう結構な年だしさ。お母さんは帰ってこないし、わたし以外にも話せる相手がいると、気分転換になるでしょ?」


 青年と話したいという気持ちが透けてしまうようで、焦る。そんなイリゼを見守るように優しい目をするウルチーモは、上機嫌に言った。


「街には、すぐに出るのかい」


「そ、そうだね。すぐに行こうかな。これさ、帰ってきてから窯に入れるから、万遍なく乾かしておいて」


「わかった。気をつけて行っておいで」


「行ってきまーす」


 家の周囲は、レオンが食べたせいで草がない。自分の足で探しに行けるが、イリゼに似て面倒くさがり。よほどの空腹に耐えきれなくなった以外は、家の近くで体を休めているか、イストゥスに入っている。


 今日はどちらでもなく、空腹に耐えかねて出かけてしまっているようだ。試しに呼んでみて来なければ自力で行こうと思い、指笛を吹く。


 少し待っていると、ドドドドと、地響きとともにレオンが戻ってきた。好みの草があったのか、走ってきた勢いのまま、直線上にある木に頭から突っ込む。


 上機嫌のときは木に頭をぶつける。産まれたときから一緒にいるが、この習性はよくわからない。運悪くその木に止まっていた鳥たちが、慌てて飛び立っていった。


「……レオン。何してるの」


 そして当のレオンといえば、大きな角が枝から下がる蔓に絡まっていた。自ら取ろうとしてさらに絡まったらしく、角には何重にも蔓が巻かれている。


「取ってあげるから、じっとしてて」


 プスッと不本意そうに鼻息を荒くするレオンの頭を撫で、落ち着かせた。そして後で何か作ればいいかと、木から下がる蔓を引きちぎる。それをまとめて物置へ置き、レオンの背に乗って街に向かった。


 子供の頃に一度だけ行った、街までの距離を思い出す。今はあれほど時間はかからないだろうが、省けるなら短縮したい。


 記憶に残っているヒューツニビレーは、丘陵の上にあった。だったら、とレオンに声をかける。


「レオン。ちょっと変更」


 首の右側を二度叩き、そちらへ進路を変えることを伝える。イリゼの指示を理解したレオンは徐々に体の向きを変え、そちらへ進む。すると、木々の間から丘陵が見えてきた。


「よしっ! やっぱりこっちの方が近かった。いくよ! レオン!」


 脚全体に力を入れ、ぐっと踏ん張る。そしてレオンの負担が少しでも減るように、角を持ちながら姿勢を低くした。


 レオンの強靱な脚力とイリゼの協力のおかげで、予定の速度よりも速く駆け上る。そしてそびえる高い壁。直前で地面を強く蹴り上げたレオンが、そのまま壁を超えていく。


「出た!」


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