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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第四章 森守り姫と狩人王子の仮婚約
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 --イリゼを返してほしければ、一億モネ用意しろ、か。


 イリゼと口論になってから二日。落ち込んで何もしていなかったことが不幸中の幸い。こんな要求をしてくるくらいだから、相手はまだ彼女がサフィールの婚約者だと思っている。


 まずはイリゼがいないのは真実なのか確認するため、食事を取ってからサンクラァールへ急いだ。


 大けがを負ったレオンと、衰弱したウルチーモがいた。


「イリゼはっ!?」


「王子かい。来るのが遅かったね。あの子は男二人に連れていかれたよ」


「男? シカトリスとイニオンですか」


「そんな名前だったねぇ。左目に大きな傷がある男と、その子分だ」


「そいつらはどこへ行ったかわかりますか」


「すまないね、今は少し快復しているんだが、そのときはわたしも動けなかったんだ。あの子がどこへ行ったかはわからない」


「そうですか……守ると言ったのに、実行できなくてすみません。すぐに、治療所へ運ぶ手配をします」


「いや、それは必要ないよ。街の治療所じゃ、この子を連れていけない。サンクラァールで傷を癒やすさ」


「ならば、城へ来て下さい。そこで治療を受け、一緒にイリゼを待ちましょう」


「そういうことなら、そうさせてもらおうかね」


「わかりました。すぐに馬車を手配します。お待ち下さい」


 城へ戻り、事情を説明する。すでに夜遅くになっているが、すぐに馬車が出た。城の中であれば安全だろうと考え、ウルチーモ達が来たときは兵士に警護してほしいと伝える。王の了承を得て、その足でまた街を駆けた。そして、ユージィに飛びこむ。


「シカトリス!!」


 まるで何が起きたかわからないと言った様子のシカトリスの胸ぐらを掴む。突然現れたサフィールに驚いたイニオンは、部屋の隅で頭を抱えて震えていた。


「イリゼをどこへやった!!」


「いきなり、なんですか。何があったと言うんです」


「とぼけるな! お前がイリゼを攫ったと証言も得ている。俺が冷静な判断をできる内に場所を吐いた方が身のためだぞ!」


「ものすごい剣幕でこうしていること自体、すでに冷静さを欠いているのではないですか」


「うるさい! 黙れ! イリゼがいる場所を吐け!」


「証拠は? そこまで言うのなら、証拠を見せてください」


「だから、お前達がやったという証言を……」


「それは誰が言ったのです?」


「イリゼの祖母だ」


「サフィール王子ともあろう方が、老人の話を鵜呑みにするのですか」


「鵜呑みも何も、実際に被害を受けている。それ以上に、どんな証拠がいるというんだ」


「そうですねぇ……証言として信用たる、若い女の話ならば、認めるしかないですねぇ」


 暗に、イリゼが見つかれば罪を認めると言っている。その居場所がわからないからこうして来ているのに、それを馬鹿にするように言ってきた。よほど、彼女を隠している場所に自信があるのだろう。


「いいだろう! イリゼを見つけたら、お前達二人は命がないと思え!」


「おぉ、怖いですねぇ」


「すぐに兵を寄越す。逃げようと思うなよ?」


 肩を竦めるシカトリスを睨めつけながら、急いで街の入り口にいた兵士にユージィへ向かうように指示した。


 その足でそのまま、また城へ戻る。生まれ育ったこの街の構造が、こんなに恨めしく思ったことはない。イリゼが屋根の上を行きたがるのもわかると思った。


 城へ戻ると、夜中だというのに王家全員が揃っていた。


「兄上!? それに、ルビまで……」


「イリゼちゃんの一大事だ。寝ていられないよ」


「あたしだって! イリゼにはまだまだ教えていないことがたくさんあるのよ!」


「で、ですがイリゼとの婚約は仮初めのもので……」


「だったら、イリゼちゃんが見つかった後で、僕が申し込んじゃおうかな」


「駄目です!」


「わかっているよ。弟の大事な人を奪うほど腐ってない。からかうのは楽しかったけどねー」


 ジュネスを見ると、すでに硬貨のことも、仮の婚約だったことも伝えてあると教えてくれた。


「サフィールお兄さま、犯人の所に行ってきたのですよね? 収穫はあったのですか?」


「犯人が自供するなんてあり得ないでしょー」


「そんな……では、イリゼはどこに……」


「街の女の子達に話を聞いてみるよ。何か情報を掴んでいるかもしれない」


「わたくしも、メートメートの皆さんに聞いてみましょう」


「あたしも!」


「ルビちゃんは、何かあったら危険だからお城で待っていなさい」


「いやです! あたしもイリゼが心配です!」


 引き留めても暴走しそうだった妹に、サフィールはウルチーモ達が来たときに対応してくれと頼む。


「ルビ。お前にしか頼めないんだ。やってくれるな?」


「……わかりました。イリゼの家族が来たら、一緒にいることにします」


「ああ、そうしてくれ」


 聞き分けのいい妹の頭を撫でる。


「や、やめて下さい! もう子供ではありませんわ」


「馬車を向かわせてある。直に来るだろう。これから誰も構えなくなるが、大丈夫だな?」


「子供じゃないので。任せてください!」


 もう一度ルビの頭を撫で、それぞれ行動に移る。


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