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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第四章 森守り姫と狩人王子の仮婚約
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 扉を開けると、大量の埃が舞う。思わず腕で口を覆った。埃が落ちついた頃にゆっくりと動き、明かりをつける。それから記録帳がある棚に移動した。


 申請は兵士が承り、記していく。作業する部屋は別にあり、ここは保管場所だ。有事の際にすぐ確認できるよう、年代別に分けられていた。ヒューツニビレーが誕生したときからしているというから、相当な情報が管理されている。


「シカトリスは何年前からいたか……ひとまず、確実な一年前から見ていこう」


 棚から目的の年代の記録帳を取り出し、一枚一枚捲っていく。一枚の単位は、一日。何組も申請に来ている時もあれば、一組もいない時もある。その際は日付を飛ばしてもいいのだが、当時の記録係が日記をつけていた。うっかりそれを読んでしまい、余計な時間が経過してしまう。


 これではいつまでも目的を果たせないと思い、日記と見られる部分は全て割愛した。そうしてようやく、一年前の記録帳を見終わる。


「……まあ、さすがに一年前はないか」


 そのまま続けて二年前、三年前と記録帳をたどる。その途中、疲労が溜まり床に腰を下ろした以外は何もない。


 四年前の記録帳を取ろうと立ちあがったところで、急に冷気を感じた。棚で埋まってしまった窓へ近づき、僅かな隙間から外の様子を見る。


「すっかり夜が更けてしまった。寒く感じるはずだ」


 一度集中力が切れると、途端に空腹感を覚える。このままでは作業を続けられないと思い、炊事場へ向かう。街で食べることも多いサフィールに、夕食が用意されているわけもなく、時間帯も相まってひんやりとしている。


 何か食べ物はあるかと探し、保存されていた干し肉を数枚頂戴した。噛むほどに味が出てくる干し肉を食べ終え、書類を触るため手を洗う。


 管理室へ戻って作業を再開した。四年前から捲り、五年前も見終わったのに、シカトリスの名前は発見できていない。


「確か、シカトリスは四十代だと言っていたな。本人が口にしていた通り、幼少の頃からいるわけではない。だとすると、いつからいるんだ。俺が子供の時は……まだ、いなかったはず」


 いつかの時から、シカトリスがヒューツニビレーにやってきたはずだ。しかし、それがいつからいるのかわからない。


「あと五年分くらいは、辿ってみるか……」


 膨大な記録の量に辟易するも、今はこれが最善の方策だと考え直して手を動かす。



 どうにか十年前の記録帳まで辿りついたとき、部屋の中が明るくなっていた。窓際の僅かな隙間から、朝日が差し込んでいる。


 十年遡っても判明しなかった。このままでは埒があかないと思い、王の起床を待つ。食事の前は書斎に行く父の行動を思いながら、管理室を出た。扉を叩き、入室する。


「朝早くから失礼いたします。急ぎ、確認したいことがあり参りました」


「ここは私的な時間を過ごす場所だ。そう畏まらずともよい」


「ありがとうございます」


 昨日の出来事を報告し、先程までの行動を伝えた。


「十年前までシカトリスの名前を発見できませんでした。慎重に確認しましたが、見落としがあるかもしれません。父上。シカトリスが来たのはいつか覚えておりますか」


「シカトリスか……確か、新しく責任者として謁見して来たのは、五年前だったはずだ。それよりも少し前から街で幾度か見かけた。住み始めたのはそれぐらいかもしれん」


「そうしますと、シカトリスへの疑いがますます大きくなります」


「サフィール、早まるでない。他所から来たというのなら、城で住人登録をしなければならないことを知らなくても、不思議はあるまい」


「それは、そうですが……」


 会話が途切れると、まるでその機会を見計らっていたかのように扉が叩かれる。振り返ると、すでに開けられていた扉の前にジュネスが立っていた。


「朝食は、なるべく家族と食べるはずでしょう」


「ジュネス。男二人では場が解れず意見がでない。話は聞いていたのだろう? 何か良い案はないか」


 王に問われ、しばし考えた後一つ提案してきた。


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