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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第四章 森守り姫と狩人王子の仮婚約
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 新年を迎えるまであと二週間と迫り、ついに仮の婚約発表がされることになった。


「本日は忙しい中、愚息サフィールとイリゼ嬢との婚約発表の場に集まってくれて感謝する。些細なものではあるが、料理長が腕を振るった品々を用意した。楽しんでくれ」


 部屋の一番奥に用意された椅子に座るサフィールとイリゼの隣で、王が挨拶をした。その言葉を聞き、住民達は各々料理に手を延ばし始める。


 普段は舞踏会場として使っている広間に、街の人たちを招待した。立食式で、複数ある丸い机には、様々な料理と数種類の酒が置かれている。


 時期が時期だけに住民全員ではないが、参加できる人数だけでも相当な数だ。普段は兵士として活動している彼らも、今日は給仕係として働いている。


 この広間にいる王族は、ロワとジュネス、そしてサフィールだけ。オパルは恋人達のもとへ行き、ルビは将来に向けて勉強すると言って部屋に籠もっている。


 飲めや歌えやの大騒ぎの中、ドレスが汚れてしまうと心配するイリゼは、思うように食べれていない。そんな彼女に、住人には聞こえないように耳打ちする。


「婚約ではなく結婚となると、この騒ぎが三日三晩続くぞ」


「えー、そんなに?」


 今回の婚約が仮と知るのは、この場にいる王族とイリゼのみ。周囲にばれないようそうしたが、参加者には仲睦まじく映ったらしい。


「ふー! 見せつけてくれるねぇ!」


「王子に聞きたい。イリゼ嬢のどこを好きになったんだ?」


「伴侶と確定した決定打は何だったんだい?」


 口々に質問してくる住民は、すでに酒が大分進んでいるらしい。赤ら顔で尋ねてきた。そんな住民に、それらしく伝える。


「そうだな。イリゼみたいな女性は今まで周りにいなかった。だから自然と気にするようになって、一緒に過ごしていると全く飽きない。他の男に取られたらどうなるかと想像して、腸が煮えくり返ったからだ」


「ふー! 言ってくれるねぇ!」


「イリゼ嬢は? どこが一番好きなんだ?」


「王子は、普段どんなことをしてくれるんだい?」


「え、えっと……」


「皆もわかっていると思うが、イリゼと出会ってからまだ日が浅い。彼女を困らせてくれるな」


「ごちそうさま!」


「熱々だねぇ」


「お幸せに!」


 酒が入りからかいの割合が多かったものの、住人達は皆サフィールとイリゼの婚約を心から喜んだ。


 そして、翌日。


 サフィールは街へ見回りに出ていた。歩く度に街中から祝福の声がかかる。その一つ一つに応えながら、街の様子を探った。


 --さすがに、まだ成果は見られないよな。新年を迎えるまでに、解決できるんだろうか。


 金の流れを作るために始めた、イリゼとの関係。計画の話が出る前から、彼女は話題を振りまいていてくれた。だから、実際は二週間ぐらいの時間は経っている。


 事前に協力を求めた三者からはまだ何も報告が入っていない。それぞれ忙しい身だから、持ち場を離れられなかったのかもしれないと思い、訪問することにした。


 まず街の中心部、商業広場へ行く。買い物をしたり、食事したりする場所だから一番金が動く。


 それとなく、露店主達に話聞いてみた。婚約発表の後でそれなりに人は来るが、サフィールが求めるような動きはない。


 オネットに聞いてみても、進展はないという残念な報告だけ。イリゼをお願いしますと言われたときは、一瞬何を言われたのかわからなかった。すぐに仮婚約のことだとわかり、大きく頷く。


 オネット商会を後にし、イニオンの元へ行こうとしたとき、足を止める。そこは街の宝石店で、サフィールが見ている間に一人出てきた。購入したばかりの宝石を包みから出すと、満足そうに微笑んで、包みごと腰から下げている布袋へ入れる。


 --そういえば、仮とはいえイリゼに何も贈っていないな。肩掛けは、贈り物というより必需品だ。宝石だと、イリゼは動くのに邪魔だと言ってつけてくれないだろうか。


 ドレスを着るときにでもつけてもらえば御の字だと思い、店へ入る。


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