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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第三章 色々な親睦会
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 双子に連れられ、ジュネスの寝室を出る。隣の部屋は家族の団欒室になっているらしい。この中に使用人は入れないという二人が下がった。イリゼが中に入ると、扉が閉められる。


「団欒室、って何をするところなんだろう」


 部屋の奥には間仕切りがあり、扉がついている。その前には、大人が数人座っても平気な長椅子があった。


 入口から窓までは、壁際に大きな棚が並んでいる。天井まであるそこには何が入っているのかと、近づく。そこに立てられていたのは、全て額縁。どんな絵が描かれているのかと、一つ取り出した。


「青い髪と、真っ直ぐに見ている目。サフィールかな?」


 三歳か四歳ぐらいの男の子が描かれている。小さいのに、今のサフィールを思わせるような強い意志を目から感じた。


 他には何が保管されているのかと、すぐ隣の絵も見てみる。すると今度は、様々な色の線が入り乱れていた。抽象的すぎて何が描かれたのかわからない。額縁の裏に注釈があった。


「サフィール、初めて絵を描く。この子は天才だ」


 親になったらこの気持ちがわかるのか。そんな風に思えるほど、子供への愛情を感じた。


「初めての絵なんだ……」


 じっと見つめても、一向に何を描きたかったのかわからない。しかし、サフィールが描いたというだけで、もっと見ていたいと思った。その場に座ろうとして、今の自分では簡単にできないと気づく。


 長椅子に座ろうかと思うと、扉が開く音がした。サフィールが来たのだと思い、急いで絵をしまおうとする。


「っ……」


 イリゼの行動を抑制するように、ドンと棚に手を置かれた。昔のこととはいえ、自分が描いた絵を見られるのが嫌だったんだろう。そう思って、絵を棚へ戻そうとした。


「へぇ、懐かしいね」


「っ!?」


 背後から聞こえた声が想像と違い、驚いて絵を落としてしまう。誰が来たのか確認するために、慌てて振り返った。


「オパル? どうしてここにいるの」


「どうしてって、ひどいなぁ。僕のこと、忘れちゃった? 王子はサフィールだけじゃないよ」


 にっこりと微笑む様は、一見すると優しい面差しに見える。サフィールよりも少し背が低いオパルとは、今は目線が近い。


 ふふ、と笑い声をこぼすオパルを見て、背筋が凍る。


 --こ、これは、もしかして危ない!?


 前に街で会ったときは、行動が遅れて嫌な気持ちになった。今度こそ、そんなことにならないように注意しなければ。


 窓際へ逃げようとすると、先回りして顔の横に腕を置かれる。ならば、と逆へ行こうとすると、また同じことになった。


 右へ左へ繰り返してどうにか移動しようとするのに、オパルはまるで踊っているかのように優雅に動きを封じてくる。履き慣れない靴も、逃げられない一因かもしれない。


「どうしたの、イリゼちゃん。僕と一緒に踊るかい?」


「いや、そうじゃなくて場所を移動したいんだけど……」


「そうか。疲れちゃったんだね。いいよ。長椅子に移動しようか」


 オパルから離れたかったという意味を込めたのだが、わざととぼけたふりをしているようだ。その証拠に、徐にイリゼの手を取り甲に顔を近づけてきた。


「なっ……」


「さて、お姫様。僕と一緒に一曲いかがかな」


「いや、踊らないし。何変なことを言ってるの。街に行けば、女の人達がいるじゃん」


「焼きもち? かわいいね、イリゼちゃんは」


「はぁっ!? そんなことあり得ない」


「……随分と迷いなく言ってくれるね。女の子なら、少しは迷おうよ。だって僕が、誘っているんだよ?」


「誘われて嬉しいのは、オパル派の人だけだと思う。わたしは嫌」


「つれないね。でも、それがそそられる」


 細い目をさらに細くすると、首筋から胸元まですーっと、指を当てられた。


「ひっ」


「悲鳴じゃなくて、良い声を出してほしいな」


 --このままじゃ、ダメだ!


 どうにか逃げようと思い、窓際へ動く。オパルはその動きに合わせてくる。棚とオパルの腕の隙間を見て、これなら通れると思って抜けようとした。


「逃がさないよ?」


 --む、胸が邪魔!


 普段のイリゼならば通り抜けられた隙間だった。しかし今は盛り付け後。盛られた胸が邪魔をして、逆に捕まってしまう。


「もっと全力で逃げてごらん? 逃げれば逃げるほど、追いかけちゃうけどね」


 挑発に乗り、思い切りオパルを突き飛ばす。しかしそうさせられたかのように、イリゼからの反撃をものともせず、悠然と構えている。背を向けるのは危険だったが、また捕まってしまったら何をされるかわからなかった。


 駆け出し、間仕切りの奥へ逃げる。そこはたくさんのドレスがあった。大きさから判断すると、ルビのものらしい。この先にドレスを部屋の外から入れる扉はないかと願い、進み、見つけた。


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