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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第三章 色々な親睦会
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 サンクラァールにジュネス一行が来てから三日後。温泉の効力が切れたころかと思い、イリゼは街へ向かった。計画の実行のため、サフィールから贈ってもらった肩掛けをつけている。


 三日前のサフィールとのやり取りですっかり顔を覚えられているイリゼは、門兵から呼び止められてしまった。


「イリゼ様。ルビ姫から、城へ連れてくるようにと仰せつかっております。ご同行願います」


「……それは、すぐに行かないといけないですか」


「はい。そのように承っております」


「わかりました。伺います」


 門兵の一人に従い、街を行く。酒場の辺りで、腹の虫が存在を主張してきたが応えられなかった。


 街と城の境目に来た頃、サフィールが駆け寄ってくる。彼に事情を話した門兵は、イリゼを託して持ち場へ戻った。庭園を歩きながら、これからのことを聞く。


「イリゼ。これから大分疲れることがあると思う。先に腹ごしらえをしておくか?」


「えっ、前もって言われるほど? どうしようかな。それだったら、食べた方がいいかな」


「そうした方がいい。ルビだけでなく、母上もイリゼに用事があるようだ」


「ジュネスさんも?」


 ルビに呼ばれているというのは、三日前の事件のせいだろう。ジュネスからの用件はわからないが、空腹で倒れてしまう前に満たしておいた方がいいかもしれない。そう思い、サフィールに従って城内を歩く。


 食堂へ案内してもらう途中、腕を組んで不適な笑みを浮かべるルビと遭遇してしまった。


「イリゼ。わかっているでしょうね」


「……少しお腹が空いているのだけれど、それを満たす時間は」


「ないわね。それに、お母さまがされたいことを考えると、ヘタに何か胃に入れない方がいいと思うわ」


「胃に入れない方がって、ジュネスさんは一体何を?」


「それは、すぐにわかることだわ。まずは、あたしに付き合ってもらうわよ。来なさい」


 顎で行く方向を示したルビは、イリゼがついてくると信じて疑わずに進んでいく。三日前の毛むくじゃら事件はイリゼのせいではないが、案内した責任はある。ルビを見失わないように、すぐに追いかけた。


 階段を上り、西端まで行く。ルビを追いかけている途中、蔓靴の隙間から敷物の繊維が足をくすぐった。ふわふわとするその感触に何度か立ち止まり、その場で足踏みをする。その度に声を上げるルビに謝り、移動した。


 着いたのは、ルビの部屋だという一室。足の先端がくるりと曲げられている棚、屋根がある寝台。表面を滑らかにしてある木を汲み上げた椅子が二つ、光沢のある織物がかけられた机が一つ。壁際には、数え切れないほどの書物が並んでいた。


「将来を失敗しないために、様々な国の指南書を読んでいるの」


「指南書って、あれ全部?」


「そうよ。あれでも足りないくらいだわ」


「ルビちゃんは偉いねぇ。わたしなんて、物置に置いたままの文字が少ないやつだって読んでいたら眠くなっちゃうのに」


「子供向けの書物で睡魔に勝てないなら、イリゼは一生あたしの収集品は読めないわね。って、そんなことはどうでもいいのよ! イリゼにここまで来てもらったのは、やらせたいことがあるの」


「何をやるの?」


「格好は、お母さまが指導してくれるでしょう。あたしは、イリゼをどこに出しても恥ずかしくない婦女子にしてあげる」


「どうして? わたしは別に森に住んでいるから必要ないよ」


「バカね。サフィールお兄さまに嫁ぐということは、未来の王の妻になるということよ? 色々な地域の方と交流をするのに、そのままだったら王家の恥だわ」


「そ、そんなに話が大きくなっていたんだ……」


「イリゼ? 何をぶつぶつ言っているの? サフィールお兄さまに嫁ぐのでしょう?」


「と、嫁ぐというか……」


「はっきりしないわね。いいわ。あたしが決めてあげる。サフィールお兄さまに、嫁ぎなさい」


「えぇっ!? それはルビちゃんが決めることじゃないよ!」


「サフィールお兄さまったら、見た目はいいのに全く噂が立たないんですもの。イリゼだって見た目はいいんだから、お似合いでしょ」


「いや、そんな強引な……」


「なに。嫁がないの? そうはさせないわよ。サフィールお兄さまはイリゼを逃したら、また何年も相手を選ばないかもしれないわ。街の発展のためにも、お兄さまにはさっさと身を固めてほしいの」


「サフィールのこと、心配しているんだね」


「はぁっ? そ、そんなことあるはずがないでしょう?」


 イリゼからの指摘に焦りを隠せないルビは、これからのために練習するわよとわざわざ大声で伝えてくる。


「ほら、そんなところで突っ立っていないで早くやるわよ! イリゼは何にもできないんだから、あたしが教えてあげるわ!」


「よろしくね、ルビちゃん」


 今度は顔を真っ赤にしたルビに、歩き方や女性特有の仕草を教わる。一朝一夕には身につかないと弱音を吐くと、知らないよりも知っている方が良い。長期戦になるのだから焦らなくていいと言われた。


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