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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第三章 色々な親睦会
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 逃げ去るようにその場を後にし、サンクラァールに戻る。すると、いつもならまだ寝ているはずのウルチーモが外に出ていた。傍らには、レオンもいる。


「イリゼっ……! 良かった。無事だったんだね」


 けががないかどうか全身を確認するウルチーモを見て、何も言わずに一晩明かしてしまったのだと思い至る。


 --おばばの手、冷たい。


「ごめん、おばば。一回戻って伝えておけばよかったね」


「そうだよ、全く……レオナールに乗っていったのに戻って来ないんじゃ、何かあったのかって思うじゃないか」


「うん、ごめん。気をつける」


「それで、一晩帰って来なかったのは、一体何があったんだい」


 すっかり体が冷えてしまっているウルチーモを、ひとまず家に戻す。消えてしまっていた火を起こし、祖母の寝床に一緒に座る。そして、サフィールから聞いた話と、仮婚約のことを話した。


「へぇ、街の一大事で仮とはいえ、王子と婚約するのかい」


「あくまでも、仮、だけどね」


「なんだい、そんなこと言っていないで本当に婚約してしまえばいいんだよ。婚約ということは、まだ結婚はしていない。約束をしているだけで、確定ではないんだ。お互いのことを知っていきながら、という過程を踏むのはいいことだ」


「そうだけどさ……仮だから、街での一件が終わったら解消しないといけない。必要以上に知らなくてもいいよ」


「さっきから聞いていると、やけに仮ってところを強調するね。イリゼは、本当に婚約をしたいってことかい?」


「いやっ、そ、それはないよ。だって、街に行ったらわかるけど、サフィールって、すごい人望があるんだよ? 王子の手を煩わせるなって、街の人達がみんな協力するの」


「煩わせるようなことをしたのかい」


「ちょ、ちょっと変な登場の仕方をしただけだよ? 下から入るんじゃなくて、上から入っただけ」


「十分煩わせているじゃないか」


「ぅっ……そ、それにね、街の女の人達はサフィールかオパルかで人気を二分しているみたいなの。それがわかっているのに、あまり深入りはできないよ」


「そもそも、それは承知の上で王子からの申し出を受けたんだろう? 自分で決めたことだ。腹をくくりな」


「そ、そうだけど……でもさ……」


「そんなに否定するのは、王子に惚れちまったからかい?」


「ほ、惚れっ……て、いや、違うよ! ちょっとあって、それで気になっているだけっていうか……」


「何をもぞもぞしているんだい。王子に寝込みでも襲われたってのかい」


「やっ、ちがっ……というか、わたしが」


「襲ったのかい! 奥手だと思っていたけど、案外相手がいれば強気なんだねぇ」


「違う! サフィールが寝てて、起こそうと思って、そう! ぶつかっちゃっただけ! わたしがしようと思ったわけじゃない!」


「事故だってなんだっていいさ。仮ってのが嫌だったら、それを盾に本当の関係を迫ったって、文句は言われないよ」


「なに言って……おばば、何か変だよ? そりゃ、いつもはわたしがその話を避けているけどさ」


「いくつになっても、心がときめく話は若返るからね。わたしがずっと望んでいたことが起ころうとしているんだ。嬉しくもなるさ」


「ともかく、サフィールとの関係は仮なの! これで話は終わり! ペイに入ってくる!」


 すっかり元気になったウルチーモにそれ以上何か言われないために、服を脱ぎ捨てて肩まで浸かる。サンクラァールの中でも温度が低い方のペイは、長湯してものぼせずちょうど良い。


 ペイの効能はなんだったかと思い起こしていると、ウルチーモがにっこりと微笑みながら家から出てきた。


「そんなに落ちつきたかったんだねぇ。やっぱり、王子に言ってしまいな。本当に婚約してください、って」


「なっ……だ、だから違うって!」


「オネットが持ってきた服を、出しておこうかね」


「いいよ! 出さなくて!」


 普段は恋愛だとか伴侶だとかの話題が出ているときに、わざと話をそらしていた。今、その報いが来ている。こんなにからかわれるのなら、毎日同じ話を聞いていればよかったと、後悔した。


 ペイから上がり、家へ入る。先程の宣言通り、服が用意されていた。それは、オネットがイリゼに着てほしいと言って置いていったもの。寒い冬にいいと、厚手の生地で作られている。


「……確かこれってさ、まだわたしがもう少し小さいときに置いていったやつだよね。今は着れるわけないじゃん」


「わからないよ。イリゼは昔からそれほど体型は変わっていないんだ。案外するっと入るんじゃないかね」


 いくら火を焚いているとはいえ、いつまでも裸でいるのはさすがに寒い。とりあえず用意してくれたものだから、袖を通してみるかと思う。


「おや、入ったみたいだね」


「……やっぱり小さいよ、これ。胴回りは入ったけど、丈が短すぎる。こんなんじゃ、動き回れない」


 上下が繋がっている服。丈は、手首から肘までの長さ分短い。


「丈だけなら、普段とそんなに変わらないだろう」


「変わる! もっと長いもん。膝ぐらいまではあるよ」


「膝ぐらいまであるっていっても、どうせ動きづらいからという理由で、下にもう一枚履いているだろ。確かその丈は、今ぐらいだったはずだ」


「あれは、下に履いているから良いのであって、あれだけだったら着ないよ!」


「王子の婚約者をやるんだろ。だったら、そこまで動き回る必要はない。しずしずと、後ろについてりゃ、周囲も認めるんじゃないか」


「いや、それにしても短いよ。無理。着替える」


 普段着ている服は、汚れたら洗って乾かしている。その間に着るものも、見た目はそう変わらない。せめて小綺麗に映るように、普段着とは別のところに保管している服を取りに行く。


 使わない器や余った蔓などを保管している、物置のような場所。家の奥にある。そこへ行き、木で作った棚を見て、言葉を失った。


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