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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第二章 狩人王子の仕事
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20

 イリゼの指示のもと、材料集めを開始する。小枝や枯れ草を大量に集め、持って行く。するとイリゼは枯れ木を片手で一本ずつ運んできていた。


「力仕事なら俺がやろう」


「平気だよ。普段からやっているし」


「ご婦人の皮膚は男よりも弱いものだと思う。木の皮で怪我をしてもいけない。いいから、任せておいてくれ」


「そう? じゃあ、枯れ木で薪を作るから手伝ってもらおうかな」


「薪を? 斧なんてないぞ。どうやってやるんだ」


「えっとね、とりあえず川岸から大きな石をいくつか持ってきてもらえるかな」


「了解した」


 作業をしやすくするため、邪魔にならないような場所に弓矢と矢筒を置いた。


 指示の通り、川岸へ行く。川下は丸い石が多い。しかしここは上流のためかごつごつとしたものが多かった。大きな石、ということで、目についたものを二つ持っていく。


「これでいいか?」


「そうだね。あともう一つ、同じくらいのやつお願い。あ、そうだ。投げつけるように、もう一つ。だから全部で二つだね。持ってきて」


「投げる? 何をするんだ?」


「いいから。食べるなら、鴨を早く火にかけないと傷んじゃう」


「そ、そうだな。わかった」


 持ってきた石をイリゼの足下へ置き、また川岸へ行く。そして戻ってくると、最初に持って行った二つの石は、少し離して置いてあった。


「一つを、石と石の間に置いて。尖った先が上に来るように」


「わかった」


 言われる通りにする。イリゼは持ってきていた枯れ木の中心辺りを、組んだ石の上に置いた。


「まあこんなもんかな。力仕事、やってくれるって言っていたけど、お願いしていい?」


「ああ、任せてくれ」


「じゃあ、投げつける用の石を、木の上に勢いよく落としてくれる? 何度か繰り返せば折れるから」


「わかった」


 持ってきた石を、木に投げつける。一度だけではあまり効果が見られない。十回ほど投げつけると、ようやく中心が少し折れた。なるほど、そういうことかと、真っ二つに折れるまで石を投げつける。


 普段使わない筋力が痛くなってきたころ、ようやく木が折れた。


「イリゼ! できたぞ!」


 達成感に満足して、意気揚々と振り返る。そこにいると思ったのに、イリゼはいなかった。どこに行ってしまったのかと捜すと、川岸で何か作業をしているようだった。


 邪魔をしないように背後から様子を窺うと、なにやら石を尖らせているように見える。


「イリゼ。何をしているんだ?」


「刃物の代わり。丸焼きって言っても、食べやすい大きさに切るでしょ?」


「石で切れるわけがない」


「本物の刃物と比べると確かにそうだけど、森の中で生活するんだったら十分なんだ」


「だが、石だぞ?」


「まあ、火を起こしたこともないなら知らないかもね。本当は持ち手をつけて勢いがつきやすいようにした方がいいんだけど、石でも切れるって見せてあげる」


 そう言うと、イリゼはサフィールが四苦八苦してようやく真っ二つにした枯れ木の元へ行く。そして尖らせた石を木に当て、その辺にあった石をそれに当てて打ちつけた。


 少しずつ削られていく木は、サフィールがやっていた作業よりも早く折れる。


「……まさか、本当に石で木が折れるなんて」


「すごいでしょ? 石って万能で、火の中にくべて水に入れればお湯を作れるし、石の台を作ってその下で火を起こせば茸も焼ける。食材を置く石は川で洗えば綺麗になるし、石を尖らせたかったらそれを水で濡らして、平たい石で擦ればできるしね」


「……そうなのか。初めて聞いた。いや、だが、湯を作るときに石を火の中に入れると言ったな。しかし火の中の石はかなり熱を持っているはずだ。素手では取れない」


「それもね、森の中にあるもので道具を作れるの」


 そういうと、短くした枯れ木の一つを持ち、切断面の中心の辺りにまた石を当てる。手のひらより少し長いぐらいまで木を割った。


 そして徐に立ちあがり、生えている木から下がっている蔓を引きちぎる。手に収まるほどの石を割れ目に入れて木の開き方を調整し、それ以上裂けないように割れ目の根元を蔓できつく縛った。先が二叉に別れたものができる。


「枯れ木だと根元を縛っても裂けやすいの。だから、若い木でやった方が長持ちするんだけど、今は形を見せるだけだからこれで作ってみた」


「それで、熱い石が取れるものなのか?」


「取れるよー。こう、縛った辺りを持つとね、掴めるんだ」


 手近にあった石で実践してくれる。確かに、拳大ほどであれば楽々と持ち上げられた。感心していると、イリゼはせっかく作った道具を解体する。そして割った箇所に石を当て、半分にしてしまった。


「せっかく作ったのに、いいのか?」


「今は使わないから。薪を増やす方が先決」


「そうか」


「薪は多く作っておいても損はないから、続きよろしく」


「了解した」


 サフィールに指示を出し、イリゼは森の中へ行く。今度は何をするのだろうと、石を投げつけながら見守った。


 平たい板とほぼ真っ直ぐな棒を持ってくる。尖った石で板を少し削り、棒を当てた。どうやら、窪みに棒が入るように調整しているようだ。そしてクルクルと何回か棒を回し、準備が整ったらしく、一度その場を離れる。


 太めの枝を三本持って戻ってきた。その中の一番長い一本を尖らせる。その枝と直角になるように蔓で縛った。残りの一本は数字の二のような形になるよう角度を調整して蔓で結ぶ。残った蔓は持ち手になるよう、最後の枝にぐるぐると巻きつけた。


「イリゼ。それは何をする道具なんだ?」


「丸焼きようにね。魚だと尖らせた棒を刺して火の側に置いておけばいいんだけど、鴨は魚と比べると大きいから。中まで火を通さないとダメでしょ?」


「そうだな。それで、それをどうやって使うんだ」


「薪はできた?」


「い、いやまだだ」


「じゃあ、とりあえずそこにある枯れ木を、焚き火できるような大きさにしておいてもらえるかな。手首から肘くらいの長さか、少し短くてもいいから」


 サフィールは足下に転がる木を見る。求められている長さのものはまだない。


「わかった。急ごう」


「お願い」


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