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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第二章 狩人王子の仕事
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17

「じゅ、十項目……っ! そ、その内容とはっ?」


「ある書物に載っていたのだけど……」


 息をのむ。オパルが読んだものであれば、実践している可能性は高い。


「頭ポン、髪クシャ、でこツン、耳つぶ、顎クイ、肩トン、腕グイ、(はい)ぎゅっ、股ドン、壁ドンだ!」


「あ、頭ぽん? 顎くい? 何ですか、そのトンだのグイだのというのは」


「ふっふー。この十項目は、女の子を口説き落とすための方法なんだ。女の子はね、自分に優しい男は好きだよ。でもね、優しいだけの男はその他大勢の内の一人と考えるんだ」


「選んでもらうには、どうすればいいのでしょうか」


「そこで必要なのが、時々強気になること」


「強引に? しかしそうすると、相手の意にそぐわないということは嫌われてしまうのでは?」


 恋愛初心者のサフィールからの質問に、得意満面な笑みを浮かべて答えを告げる。


「女の子の難しいところでね、全然気にもかけない相手だったら全力で拒絶するけど、少しでも気になっている相手だったらそんなことにはならないんだ。むしろ、普段と違う姿を見て心を弾ませる」


「強引に、しているのに?」


「そう。普段は優しいあの人が、自分にだけ違う態度だわ。なぜかしら。他の人にも見せているのかしらって、どんどんどんどん気にしてくれるようになる」


「そ、そんなことが……」


「そこで、そんな気分にさせるのが十項目」


「その、方法とは……?」


「まず、頭ポン。これはそのままだな。別れ際とか、誰かの前でとかに軽く女の子の頭を触るんだ。勢いをつけてはだめだぞ? あくまでも、優しく触るんだ。女の子はいつもお洒落に気を遣っているから、頭を撫でたら嫌われるからな。間違えるなよ?」


「一つ目から難しいですね」


「そんなこと言ってられないぞ? 次の髪クシャは頭ポンの上位版だ」


「初歩的なことでも実践したことがないので、もっと俺でもできそうな方法を教えてください」


「サフィールでもできそうなことか……だとしたら、ないな」


「えっ?」


「この十項目は、上位下位こそあれど、全てその場の状況に応じてするものだ。恋愛初心者のお前にはどれも難しいかもしれない」


「それほどですか……」


「まあ、言葉として理解できなくても、方法を知っていたらいつかできるかもな。実践するから体で覚えろ」


 そう言うと、サフィールを椅子に座らせる。そしてあえて一度離れ、ゆっくりと近づいてきた。人差し指で、額をツンと突かれる。


「これがでこツン」


「はっ? こ、これのどこがご婦人を喜ばせるのですか」


「……口答えするな。その場の状況で判断してしていくと言っただろ。次」


 オパルがサフィールの右側に行き、耳に息を吹きかける。


「っ!?」


「ちょっと、ぞくっとしただろ? これが耳つぶ。この項目を正しくするなら、息を吹きかけた部分を囁きにする。耳が弱い子は多いから、比較的有効だ。時と場合によるけど」


「兄上は、実際にご婦人へしたことはありますか」


「どうだと思う?」


「……兄上が色々と努力をしているから、恋人が多くいるのだと思います」


「ま、そういうことだ。あとは、顎クイ、肩トン、腕グイ、背ぎゅっ、股ドン、壁ドンか。多いな。面倒になってきたからこれらは言葉で説明するぞ。覚えておけよ? 『顎クイ』は、女の子の顎をくいっと持ち上げること。『肩トン』は、相手の肩に頭をトンと乗せて甘えているような雰囲気を出すこと。『腕グイ』は、そのままだ。人混みの中とかではぐれないようにぐっと引っぱる。『背ぎゅっ』は、背後からぎゅっと抱きしめる方法。背を向けられるような出来事があったときにするのが有効だ。あとは、ドン二種か。これは壁際で行う方法だな」


「だなって、その二種類に関して説明はないのですか」


「これねー、まあこれはすぐにできるから実践してみるか。サフィール。壁際に移動して」


 オパルの指示の通りに場所を移す。そしてお互いが向き合うような体勢になる。準備が整い、何をすればいいのかと聞こうとした。


「っ……」


 壁を背にして、顔の横に勢いよく手を置かれた。まさしく、壁にドンとつく。サフィールよりも少し背の低いオパルがすると、見上げられるような姿勢になった。


「これが、壁ドン」


「な、なるほど。しかしこれは突然やると驚きますね。心臓に悪い」


「驚かせて、っていうのは基本だね。この動作の後に、甘く囁く。直前の行動との落差が大きい方が、効果は高まる」


「奥が深いですね」


 普段から兄はこんな大変な思いをして女性を喜ばせているのだと、サフィールが成人になってから初めて尊敬した。


 やり遂げたオパルは、また寝台へ戻る。


「これで成功するかどうかわからないけど、とりあえずやってみるといいよ」


「えっ……兄上は、試したことがないのですか」


「何個かは。さすがに全部はやらないよ」


「では、成功した方法はどれでしたか」


「サフィール。自分で努力もしないで簡単に女の子と仲良くなれると思うなよ? この道は高く険しいんだ」


「は、はい」


「じゃ、僕はまた寝るから」


「あ、はい。ありがとうございました」


 寝台に潜り込んだ兄に頭を下げ、部屋を後にする。


 --十項目……。なんて奥が深いんだ。頭を撫でるのは髪型を崩してしまうから駄目なのに、髪クシャはいいなんて意味がわからない。


 恋愛指南をしてもらおうと訪れたものの、余計にわからなくなってしまった。このままでは、まだイリゼに話を振ることができない。


 --母上なら、どうするだろう。父上と今でも仲が良いから、兄上よりも現実的なことを教えてくれそうだ。


 決断し、すぐにジュネスの元へ向かう。


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