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森守り姫と狩人王子の仮婚約  作者: いとう 縁凛
第二章 狩人王子の仕事
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16

 --イリゼと、婚約。そのために、仲良くなる。仲良く、とは?


 サフィールに与えられた使命は大きい。いくらヒューツニビレーの今後を決めるかもしれない一大事だとしても、女性一人の人生を左右してしまう。街を守ることが目的だとしても、前提としてイリゼとそういう関係なのだと周知させないといけない。


 --イリゼ、十六。四つ違い。ノール森林に住む。レオンを従える。


 サフィールの頭は、もう破裂寸前だった。


 どれだけ考えても、今まで女性とそんな雰囲気にすらなったことがない男が、一日や二日でどうにかなるわけがない。


 婚約発表をするためにイリゼと仲良くなれと宣告されてから、すでに三日。何をすればいいのかわからないまま時間だけが過ぎてしまった。


 年の瀬の誰もが忙しい時期に、あえて婚約発表をぶつける。硬貨偽造のことも調査しなければいけないし、そのためにもなるべく早く行動をしないといけない。肝心要の、何をもってすれば仲睦まじきことが周知の事実となるのか。それがわからない。


 三日間絶えず考えた結果、平時であれば絶対に選択しないであろう手段を取ろうとしている。


 城内の一角、西端にあるオパルの部屋に来た。昨夜は深夜遅くに帰ってきていたようだから、恐らくまだ寝ている。昼食時は出かけてしまう可能性が高い。手解きを受けるのなら、今しかないと理解はしていた。


 --あり得ない。だがしかし、よく考えればそれしか方法がない。


 意を決し、オパルの寝室を訪問する。


「兄上。よろしいでしょうか」


「ん? サフィール? 珍しいね、お前が朝から僕を訪ねてくるなんて。どうした」


 寝台の上で眠そうに頭をかくオパルは、裸のまま寝ることを好む。だからひとまず長兄が下着を身につけるまで待った。


「あのですね、兄上」


「そんなに改まって、ますます怪しいな。さては、何かお願いをしに来たね?」


「な、なぜわかったのですか」


「からかったつもりだったけど、本当にそうなんだ? サフィールからのお願いかー。子供の頃に言われた、剣技ごっこ以来かな? わー、なんだろう。ドキドキするね」


「……兄上。茶化さないでください。真剣なお願いなんです」


「茶化すだなんて、そんな野暮なことはしないよー。単純に嬉しいんだ。かわいい弟のお願いなら何でも聞くのに、全く甘えてくれないんだもん」


「だもんって……いえ、今はその言葉遣いを気にしないことにします。一つ、悩み事がありまして、兄上ならばその答えを示してもらえるかと思って伺いました」


「硬いなー。そんなに構えず、いいから言ってみな? お兄ちゃんがずばっと解決しちゃうよ」


 兄の気楽すぎる対応に、逆に話しやすくなったと思い悩みを告げる。


「あ、兄上は、多くの恋人がいると思います。そのご婦人方とは、どのように仲良くなりましたか」


「仲良くって……えっ、ちょっと待って? もしかしてサフィール、好きな子ができたのか!?」


 満面の笑みを浮かべたオパルが、サフィールに突撃もとい、力強く抱きしめてくる。


「良かったじゃないか! そうか、ようやくサフィールにも春が来たんだな! お兄ちゃんに意見を求めるということは、意中の相手は複数いるんだな? どこのお嬢さんだ? やっぱり、サフィール派の子だよな。ということは、ドシルか? アーンブル? それともティミド? もしかしてもしかするとフェドラちゃん?」


「兄上。年上のご婦人を馴れ馴れしく呼ぶのはいかがなものかと」


「反論するところはそこじゃないだろ。それで、誰なんだ。愛しき弟の心を掴んだのは」


 オパルが顔をのぞき込んでくる。その目には期待よりもからかいの気持ちが浮かんでいた。名前を告げれば、今にも窓の外へそのことを叫びそうだ。


 --やはり、兄上に相談するのは間違っていたかもしれない。


 選択を誤ったと判断し、オパルの寝室を出ようとした。しかし、それを部屋の主が許すわけもない。しっかりと腕を掴まれてしまっている。


「サフィール。いい加減、白状したらどうなんだ。からかったのは、謝るからさ」


「……そんな気はしていましたが、本当にからかっていたのですね」


 --兄上に知られれば、恐らく瞬く間に話は広がるだろう。願ってもない状況ではあるが、まだイリゼに許可を得ていない。そんな状態では、名前を出せない。


「……兄上に相談したいのは、ご婦人と仲良くなる方法です。相手が誰かは、明かせません」


「サフィールの片思いってことだな。そうか、わかった。弟の切ない思いに応えよう。女の子と仲良くなる十項目を授ける!」


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