7:おやすやぁ
ウトゥの突っ込みに、少し天を仰ぎながら思考をフル回転させる。言われてから気が付いたのだ、それ程までにこの不格好な状態の第一拠点の出来に感動していたのだ。そう、突っ込まれるまでは。
「よし、葉っぱで覆い隠そう、流石俺だ」
「最初からそうするんだと思ってたよ? あっ、ついでに言うとフルーツリヴァイヴの葉っぱはすぐに他のフルーツリヴァイブの栄養として魔力分解されるからね?」
「し、知ってるよ! 念のため確認しただけだい!」
拳二つ分くらいの大きさのあるフルーツリヴァイヴの葉で体を仰いでみせると、数秒もしないうちに手の中から消え去っていった。初めての体験に、俺は小さな感動を覚えつつもすぐさま周囲の木をみると、こぶりの葉で妥協する決意を固める。
「わざわざ木からむしり取らなくて良いからね? 道中で気づいているとは思うけど、落ち葉たくさんあるからね?」
「お、おうとも」
「でも凄い場所だよね? 微生物すらいないのかしら、全然落ち葉が土へと還元されている様子もないし……だからこそ魔素で木々は……ううん、興味深いわ」
「何勝手に考察してんだよウトゥ。ほら、行くぞ」
本当にウトゥは俺自身なのだろうか。確かに火の学び舎で色々学んだ記憶はあるが、微生物が何だって? 落ち葉を分解? ううむ、ウトゥの会話レベルが高くてついていけん。
と、いうことでわからん事はウトゥに任せて俺は落ち葉拾いに没頭する事にした。石や枝と違い、軽くて一度に量がはこべて第一拠点の完成はすぐだった。
汗をかき、軽く水分補給といきたいところだったが、作業中にもぎってきたリンゴにかぶりつき口と腹を満たした。気分は思ったよりも悪くなかった。
これまで狭い世界でただただ上を目指して学び、会得し、自らの魔力を磨き続けていたが、こんな時間の過ごし方を初めてした俺は少し満たされていたのだ。
「ナイトゥは、少し心を鍛えなきゃね? 普段なら絶対おかさないような行動や思考ばかりだし、私少し心配だわ」
「んだよ? 俺の心が弱いと?」
「ほらね? すぐ口調がきつくなる。煽り耐性もつけなきゃダメじゃないの? 余裕がない証拠よ! 豆腐メンタルは大抵悪に落ちちゃうのよ!」
「何だよ一体」
突然ウトゥに突っかかられて、高まっていた気分が急降下である。しかし、ウトゥの発言は実に的を得ていた。俺は少々自分を見失っていたのかもしれない。
「……そう、だな。すまないウトゥ、少し落ち着くよ」
「よろしい」
こんなにも魔力貯蔵庫が枯渇続きの状況が初めてで、これまで見ていた世界と違う世界に迷い込んだような時間を過ごしていたのだ。しかしウトゥの言葉で自分を見直す必要があることにきづかされる。
「まっ、今日は寝るか!」
「さんせー」
俺は休息が必要だ。そして、考えるのは明日にしようという結論に至る。拠点の中に体を滑り込ませると、俺は薄暗い中で眠りに落ちていく。隣で、ウトゥもすやぁとすぐに眠りについていた。
この島に流れ着いてから三日目にして、やっと自分を取り戻しつつあるナイトゥであった。