6:第一拠点でニヤけます
ナイトゥが必死に木の枝や石を運ぶのを見ながら、私は冷静に現状を振り返る。世界第三位の魔法の使い手が、こうも魔法が使えない現状に陥るとダメダメになるとは。自分自身なのに、笑えて来る程滑稽である。
「ねぇ、次は何運ぶの?」
「ん、もう少し材料は必要だからな」
「そっ」
本気でこんな小枝と小石で何か作れると思っているのだろうか? しかし私は突っ込みを入れない。この努力が実ってほしい、という想いはナイトゥに劣らず私も持っているのだから。でも、どうしても冷静に考えてしまう。
それじゃ無理だろう、と。人間では考えられない魔力貯蔵庫を保有しながら、火の属性以外の様々な魔法をも扱ういわゆる天才型。知識も豊富に持ち合わせ、これまでの人生心底怖いと思ったのは金と女だけだというのに、どうしても第二位、第一位に届かないジレンマ。ついでに言えば、力を有する事を認められた者・有者の
従者に選ばれることも無く、モヤモヤする日々を送っていたところだったのだ。
技術も知能も持ち合わせるナイトゥだが、有り余る魔力に依存しすぎていたのが完全に裏目に出ているようだ。今だって、身の丈に合っていない大きな岩を運ぼうと試みるも、思うように動かせず妥協して小さな小石を運んでる始末なのだ。
魔力というアシストがなくなる状況なぞ、これまで一度も無かったのだ。何度か魔力が空っぽになるまで魔法大戦で暴れたことはあるが、その才は瞬時にその魔力貯蔵庫を満たすのだった。
まぁ凄そうに言っているが第二位は人外レベル、第一位に至っては最早はかる物差しが見当たらない程である。うん、火の魔法使いの世界だけの話だから日々精進するしかないのだけどね。
「案外、ここで一皮むけるかもね」
「ん? 一皮むけるって何俺の考察してるかしらねぇが、ウトゥも見てるだけじゃなくて手伝えよ」
「良いのかしら? ナイトゥの魔力がごっそり減っちゃうけど、それでも良ければ私頑張るわ!」
「うっ、ただでさえ燃費悪いのに……わーったよ、大人しくしとけよ」
「うん、わかった」
気付いたら適量の石と枝が空いた空間へ集まっていた。器用に石を左右に積み上げると、これまた器用に枝を交差させ天井を作り上げていく。
「うしっ、どうだ!」
「素敵ね! 狭くて天井低いけど!」
「うるせぇ!」
そんな嬉しそうにしないでよ、私まで何だか嬉しくなっちゃうじゃないの……。完成した第一拠点は、腰の高さくらいまでしかないちっちゃな空間であった。
「ナイトゥ、一つ良い?」
「ん、お前の入るスペースはねぇからな?」
「いや、そうじゃなくってさ……」
「何だよ?」
「木の枝だけじゃ、屋根は機能しないよね? 雨降ったら、ダダ漏れだよね?」
私の突っ込みに、両腕を組んでから天を仰ぐナイトゥはしまった、という顔を見せないためにしばらく上を向いたままだった。