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巻ノ九拾八 タウンミーティング の巻

 大作は一大決心して衝撃の事実を打ち明けた。だが、チーム桜と巫女軍団はそれを右から左に聞き流す。大作の話がまるで耳に入らなかったように黙々と雑炊を食べ続けている。

 大作は助けを求めるようにお園やメイ、ほのかに視線を送ってみるが誰も目を合わせてもくれない。


 もしかして、今の俺ってみんなから見えていないのか? 大作は子供のころにそんな馬鹿げた妄想して遊んだことを不意に思い出す。いやいや、現実逃避している場合じゃ無いぞ。

 一旦下がって仕切り直すべきか? しかし、ここで退いたら負けた気がする。でも、退く勇気も必要なんだっけ? とりあえず、もう一回だけ言ってみよう。


「俺は二十一世紀からやってきた未来人なんだ。このままでは日本は四百年後の戦争で三百万人の犠牲を出して敗北する。同じ失敗を繰り返さないためには歴史の流れを変える必要がある。そのためには君たちの協力が必要なんだ!」

「……」

「何か質問は無いかな? 何でも、どんなことでも良いぞ?」


 大作はゆっくりと全員の顔を見回す。だが、誰一人として目を合わせようとしない。予言者カッサンドラーもこんな気分だったんだろうか。


「質問しろよ! 質問は無いのか!」


 『質問しないとお母さんを殺すぞ!』と大作は心の中で絶叫するが口には出さない。それを見かねたのだろうか、ほのかが上目遣いで恐る恐る口を開く。


「ねえ、大佐。しつもんって何?」


 そうきたか~! いやいや、今までにも質問って単語は何度も使ったはずだぞ。もしかして通じてなかったのかよ。


「分からないことや知りたいことは無いかって聞いてるんだ」

「だったら教えて。私めのどらむはどうなったの?」


 駄目だこりゃ。ギブアップするなら傷が浅いうちに限る。


「ちゃんと覚えてるぞ。そうだ! 今井様は鹿皮を扱ってるんだからコネがあるかも知れん。帰って来たら聞いてみよう」


 帰って来るか分からんけどな。大作は心の中で付け加える。


 みんなそれっきり押し黙ってしまった。静寂に包まれた狭い小屋の中、雑炊を啜る音だけが響く。大作は必死に作戦を立て直す。


 そろそろほとぼりが冷めただろうか。場の空気を読んだ大作はターゲットを変更する。


「藤吉郎、お前は何かやりたいことあるよな? だから家を出たんだろ。何でも遠慮せず言ってみろ」

「やりたいこと、にございますか?」


 藤吉郎がきょとんとした顔で鸚鵡返しする。いきなり唐突過ぎたのか。いや、藤吉郎なら、藤吉郎なら何とかしてくれる。


「今の俺たちにはやらなきゃいけないことが山ほどあるんだ。藤吉郎にはその類稀なる能力を遺憾なく発揮して欲しい。希望があれば何でも聞くぞ。そうだ、給料はいくらくらい欲しい?」

「きゅうりょう?」


 大作はこんなこともあろうかと予習していたことを思い出す。


 とある資料によれば藤吉郎が十八歳で信長に仕えた時の年収は銭十五貫文とのことだ。

 だが、別の資料では永禄元年(1558)に十五貫文の所領を与えられたことになっている。

 そして、桶狭間の後に銭三十貫文に加増されたそうだ。一方で薪炭奉行として薪を節約し、銭三十貫文に加増って話もある。


 有名な城壁修理のエピソードで銭百貫文に加増され槍組の足軽三十人を預かる。

 だが、犬山の合戦で兜首を討って銭百貫文に加増って話もある。


 二十七歳の頃、犬山攻めに際して百人足軽組頭に出世し五十貫文。あれ? 減ってね?

 良く分からんけど百人の足軽の給料は別勘定なんだろう。そうじゃないと安すぎる。


 名前が秀吉に変わって犬山城を落とした二十九歳の頃、一挙に六百貫文に増える。

 別の資料では墨俣(すのまた)城の功績で百貫文だか二百貫文から千貫文に増えたとか。

 でも、墨俣城の話その物が全くのフィクションだって話もある。


 いったい何を信じたら良いんだよ。まあ、いつ死んだのかも分からん奴らと比べたらこれくらいは誤差の範囲だろう。


 十八歳で銭十五貫文だとすると十三歳の今は銭十二貫文くらいで良いんだろうか。月に銭一貫文だから切りが良い。日給換算だと銭三十五文。

 何をやらせるか決めてないけど十三歳の子供の給料としては高すぎるか? って言うか、チーム桜の給料は藤吉郎より高くしないとバランスが取れないかも。

 いやいや、女の方が食べる量が少ないから米で支給する場合は少なかったって資料を見た気がするぞ。どうすれバインダー!


「桜。お前らの給料…… 俸禄? 扶持? いくらくらいが相場なのかな?」

「大佐の御心のままに」


 それだけ言うと桜が頭を下げた。こっちに一任するってこと? それとも、自分を安売りする気はさらさら無いんだろうか。給料に満足いかなかったら黙っていなくなる気かも知れん。


 参ったぞ。相場が分からんのに適当な額を提示して怒らせたら最悪だ。

 白紙の小切手を渡して好きな額を書けとか言えたら良いのに。そんな物を持ち合わせていない大作は途方に暮れる。

 そうだ! 閃いた。


「今は金山の拡大が急務なんで余裕が無い。だから当面は月給銭一貫文で辛抱して欲しい。代わりと言っては何だけどストックオプション…… いや、RSUを付けよう。制限付き株式ユニットだ。金山の株式を毎月一株ずつ配る。金山が成功すれば必ず値上がりする。モチベーション…… 何だその、やる気が出るだろ?」

「あり難き幸せ。我らち~む桜一同、大佐のため捨つる命は惜しまぬ覚悟にござります」


 またまた桜が厨二病っぽいことを言う。もしかして『君がため 捨つる命は惜しまねど 心にかかる国の行く末』って言いたいのか?

 まあ、それで機嫌良く働いてくれるんなら固いことは言わん。好きにやって貰おう。


「それじゃあチーム桜のみんなにこれをやろう。指輪の物語にも出てきた魔法の指輪だ。ただし、左手薬指に嵌めたら駄目だぞ。いや、右手薬指もメイにやったんだっけ。メイ、みんなに右手薬指を使わせてやっても良いかな?」

「私は良いわよ。ち~むのめんば~は対等に扱わなきゃ」


 メイが笑顔で答える。まさかとは思うが暗にお園の特別扱いを非難してるんだろうか。勘繰り過ぎな気もするが用心に越したことは無い。


(かたじけの)うございます」


 桜たちが頭を下げて指輪を受け取る。だが、言葉に反してさほど嬉しそうには見えない。やはり不発か。この時代の日本人はアクセサリーを身に着けないってフロイスも書き残してたっけ。

 ふと視線を感じて振り返るとアイマイミーが物欲しそうな顔をしている。こっちの連中は欲しがってるってことか? 世の中、上手く行かない物だ。


「アイマイミー。お前らにもやろう。人差し指か中指にでも嵌めとけ」

「ありがとう、大佐」

「うれしいわ」

「大事にするね」


 三人は満面の笑みを浮かべて指輪を嵌める。桜たちもこれくらい喜んでくれればやった甲斐があるのに。そんなことを考えていた大作にお園から思わぬ突っ込みが入る。


「大佐、他の巫女たちには無いの? まだ桜たちは何もして無いけど、巫女たちは毎日、懸命に床下祓いしてるのよ」


 その声音は冷静だが僅かに苛立ちを含んでいるように大作には聞こえた。参ったな。気を付けていたつもりだったのに。まさか自分で巫女軍団とチーム桜の亀裂を広げてしまうとは。だが、指輪の残りは五個しか無い。


「ごめんな。次のロットで対応するから待っててくれよ。みんなのことを忘れてたわけじゃ無いぞ。だってほら、みんなには巫女服だって用意してるだろ。ぶっちゃけた話、それって結構な金が掛かってるんだぞ。金一匁の指輪より高いかも知れんな」

「約束よ。ち~むのめんば~は対等なんだから」


 お園にしっかり釘を刺されてしまった。愛に任せっぱなしみたいに見えたけど、ここ一番という場面ではしっかりボスとしての存在感を見せるつもりらしい。


 巫女軍団を束ねる愛とその上に君臨するお園。チーム桜を束ねる桜とその上に君臨するメイ。もしかして完全に対立構造が出来上がってしまったんだろうか。

 って言うか、ほのかやサツキの立場も考えんといかんのか。ほのかは金山労働者の管理で良いだろう。サツキは伊賀から追加の忍びを呼んで対外諜報活動を任せるか。

 そうなるといよいよ藤吉郎に何やらせるか決めねばならんな。大作は心の中のメモ帳に書き込んだ。




 全員が夕飯を食べ終わってくつろいでいるようだ。大作はここぞとばかりに気合を入れ直す。何とかこのタイミングで仕切り直しせねば。


「さっきは急な話だったのでみんな付いてこれなかったみたいだな。正直すまんかった。今度は真面目に話すからみんなも頑張って聞いてくれ。分からないことがあったら何でも尋ねて欲しい。ただし、話と関係のあることに限るぞ」


 大作はほのかの目を真っ直ぐ見据えて言い含めるように告げた。


「俺は今から四百六十年くらい先の世からやってきたんだ。ここまでは分かるか?」


 みんなが黙って頷く。そりゃあ、二十一世紀って言っても分からんよな。大作は少しだけ反省する。


「このままだと四百年先の大戦(おおいくさ)で三百万もの人が死んで負けるんだ」

「誰に負けるの?」


 ほのかが口を挟んだ。大作は一瞬、イラっとするがすぐに思い直す。これは本筋から離れていない。むしろ必要な質問だ。


「良い質問ですね、ほのか。戦艦ミズーリで休戦協定に署名したのはアメリカ、中華民国、イギリス、ソビエト、オーストラリア、カナダ、フランス、オランダ、ニュージーランドの九か国だな。サンフランシスコ講和条約には四十八ヶ国が調印。ソ連、チェコ、ポーランドは調印を拒否した。分かったか?」


 全然分からんって顔に書いてある。とは言え、これを詳細に説明する意味はあるんだろうか? 中国、イギリス、フランスはこの時代にも存在する。ソビエトとロシアは似て非なる物だ。残りの国にも先住民はいるけど完全に別物だ。


「まあ、主な敵はアメリカだな。海を東に二千里ほど行ったところにある。だから俺の、俺たちの目的はアメリカに勝つことだ。そのために、みんなの手を借りたい。分かったかな?」

「なんで海を二千里も行った国と戦になったのかしら。行ったり来たりするだけでも大層な手間よ」


 お園が新たな疑問を口にする。何で日米が戦うことになったんだっけ? 大作は記憶を辿る。


「直接の原因は経済制裁、石油の禁輸だな。元を辿れば満州の権益を巡る争いだ。そもそもはアメリカが1898年にハワイ、グアム、フィリピンを領有したことにまで遡る」

「大井川から南に行った時に言ってたわよね。石油って穴を掘れば採れるんでしょう。そんな物が理由で戦になったの?」


 お園が口を尖らせ不満そうに呟く。さすがは完全記憶能力者だ。


「国内の産油量では戦前でも必要量の十分の一すら満たせないんだ。日本の近くだとインドネシアにパレンバン油田ってのがある。でも、そこは海を千里も行った所だ。1602年のオランダ東インド会社に先んじて分捕るのは簡単かも知れん。だけど四百年先まで押さえて置くのは大変な手間だろう」

「せきゆとやらは戦をせねばならぬほど大事なる物なのでしょうか?」


 藤吉郎が首を傾げている。石油の説明もしなくちゃならないんだろうか。どんどん本題から離れて行く話に大作は苛立ちを隠せない。


「石の油って書いて石油だ。普通の油は菜種や椿を搾って採るよな。でも石油は井戸を掘ると地の底から湧き出るんだ。植物油よりずっと安い。だから灯りの他にもいろんなことに使われるようになる。船も車も飛行機も石油で動く。発電にも必要だ。高分子化合物、合成ゴム、化学繊維の製造にも必要不可欠だ。二十世紀以降の生活は石油に依存している」

「良う分かりませぬが無くてはならぬ物にござりますな。それが足りぬとあらば戦になるのは必定。なれば、今のうちにその石油とやらを買い占めるわけには参りませぬか?」


 兵糧攻めを得意とした秀吉らしい発想だな。大作はちょっとだけ感心する。だがそれは無理という物だ。


「石油消費量が少なかった戦前ですら一年に四百万キロリットルの石油を消費していた。千石船で毎日七十隻もの量だぞ。二十一世紀にはそれが六十倍にもなる。一年に二億キロリットル以上。千石船が毎日四千隻にもなる」

「二十一世紀とやらは船だらけなのでございますな」


 藤吉郎が目を丸くして驚いている。まあ、普通に考えればそうなるよな。往復数千里の船旅に掛かる日数を考えれば四千の数十倍の船が必要となる。


「答えは大きな船だ。二十一世紀には二、三十万トンのタンカーが油を運んでるんだ。今風に言うと二百万石船だな。長さ三町もある山みたいな船なら一日二隻で足りる」

「じゃあ、その大船があれば戦にならずにすむの?」


 ほのかが希望に瞳を輝かせている。こいつは何でこんなにピントがズレてるんだろう。やはり再教育が必要なのかも知れん。大作は心の中のメモ帳に記入した。


「話をちゃんと聞いてたか? 国内に油田が無いって時点で圧倒的に不利なんだよ。長いシーレンを防衛するには強力な海軍が必要だろ。通商破壊する側はそれより遥かに少ない戦力で済む。機雷とか使えばさらに楽が出来る。国内に油田があるアメリカやソビエトはそれだけで有利なんだ」

「石油を使わずに済ませたり、代わりになる物は無いのかしら」


 お園は真面目に話を聞いてくれていたらしい。だが、まだまだ認識が甘いな。


「人造石油とかバイオ燃料って方法もあるがコストが掛かりすぎる。あとは核開発を加速するくらいか? 十六世紀から本気で研究すれば十九世紀に原子力、二十世紀に核融合を実用化できるかも知れん。欧米が石炭から石油に移行する前に日本だけ脱石油するんだ」


 大作は自分で言っていてアホらしくなって来た。そんな壮大なプロジェクトが完走できるとは思えん。

 やはり、スマトラ島を押さえるしか無いのか? すでにスペインやポルトガルが進出し、やがてはイギリスやオランダもやって来る東南アジアでそんなことが出来るんだろうか。

 もしやるとしても、スマトラだけ飛び地みたいに確保できるとは思えん。台湾、フィリピン、カリマンタン島もセットで確保しないと。しかも植民地ではなく、内地延長主義でだ。

 この時代の通信や交通手段で統治するのは無理なんじゃなかろうか。アメリカに勝つよりよっぽど無理難題な気がする。大作は考えるのを止めた。


「やっぱ無理だな。夕方、お園に言ったようにアメリカを押さえた方が早いぞ。イギリスみたいに独立戦争で負けなきゃ良いんだ。『代表なくして課税なし』なんて言われんように完全に本土と平等に扱う」

「ちょっと待って。もともと住んでる人もいるって前に話してたわよね。そんなことして大事無いのかしら」

「大丈夫だ。北米先住民はコロンブスの時代で二百万から五百万人くらいだって話だな。日本人の方が三倍は多い。選挙で過半数を取られる心配は無い」


 やはりお園は目の付け所が一味違うな。藤吉郎を早くこのレベルにまで鍛えねば。まあ、今日はこんなところにしておこう。大作は居住まいを正すと宣言した。


「結論が出たようだな。アメリカ日本化計画を正式に決定する。百人乗りの船を百隻作って百往復させるだけの簡単な話だ。毎年二往復させれば五十年か。船を倍に増やして二十五年で完了させよう。みんな、忙しくなるぞ」

「大佐、そろそろ気が済んだ? 遠い先の話はそれくらいにして明日からのこともちゃんと決めましょうよ」


 お園が子供をあやすように優しい口調で語りかける。何だか馬鹿にされてるようだが気のせいか? いやいや、本来の目的を完全に忘れていたぞ。大作はようやく本題を思い出す。


「藤吉郎、やりたいことは見つかったか?」

「お許し下さいませ。何も思いつきませぬ。大佐がお決め下され」


 やっぱりまだまだ十三歳の子供だな。後年、天下人として君臨する秀吉の片鱗すら感じられん。ちょっとばかし鍛えた方が良いかも知れん。


「それじゃあコンドル軍団に参加して見ないか? 伊賀から百人ほど傭兵…… は駄目だから、義勇兵だな。フライング・タイガースみたいな連中を出してもらう。サツキと一緒にこいつらを率いて信濃国の戸石城で武田晴信を討ち取ってくれ」

陣借(じんが)りにございますか? しかし、何故そのように遠く離れた地の戦に兵を出さねばならぬのでございましょうか」

「ステルスマーケティングって奴だ。戦の勝ち負けはどうでも良い。祁答院で作られた百丁の鉄砲が活躍して武田晴信が討ち取られる。こいつは凄い宣伝になるぞ」


 藤吉郎が目を輝かせる。こいつ、こんなに血に飢えた性格なんだ。やっぱ戦国時代の人間は違うな。大作は今更ながら感心する。


「これで終わりじゃ無いぞ。上手いこと晴信を葬れたら今度は長尾景虎だ。放って置くと地域の軍事バランスが崩れるからな。景虎は今年、足利義輝に越後国主の地位を認められる。坂戸城主の長尾政景って奴はこれに文句があったらしい。十二月に謀反を起こすんだ。来年の一月十五日に景虎は政景方の発智長芳(ほっち ながよし)って奴の居城、板木城を攻める。そんで妻子を春日山に連れ帰るそうな。さらには八月には坂戸城を完全包囲して政景を降伏させちゃうんだ。政景の妻は景虎の姉、仙桃院だったんで許してもらえるらしい。でも、永禄七年(1564)に舟遊びしていて溺れて死んじゃうらしいぞ。凄く評判の悪い奴だっんで殺されたって噂もあるな。それはともかく、十二月の謀反で政景を支援するんだ」


 スマホを見ながら大作は長尾政景に関する情報を読み上げた。

 信玄が死んだのに謙信だけ残すのはバランスが悪い。場所も時期も近いんだ。一緒に片付けた方が効率も良い。

 大作はまるで『銀行に行ったついでにコンビニ寄って来て』とでも言うかのように気軽に話す。


「そ、そ、某にそのようなことが……」

「別にお前一人で全部やれって言ってないぞ。コンドル軍団とサツキを信じろ。って言うか、藤吉郎を信じる俺を信じろ。頑張れ! 頑張れ! 出来る! 出来る! 藤吉郎ならきっと出来る!」


 いい加減、面倒臭くなってきた大作は精神論で強引に押し切る。藤吉郎は少し不安そうだが、満更でも無さそうにも見えた。




 狭い小屋の中で大作はお園と一緒の筵に包まって床に就く。お園が大作の耳元で囁いた。


「大佐、藤吉郎にあんな途方もないことを頼んで大事無いのかしら。荷が重いんじゃない?」

「知らん! 別に信玄や謙信が死のうが生きようが知ったこっちゃ無い。それに、もし失敗しても藤吉郎がこんな序盤で死ぬはず無いだろ」


 大作は他人事みたいに言い捨てる。いや、本当に他人事だし。奴が本当に異能生存体ならこれくらいで死ぬ筈が無い。

 大作は考えるのを止めて眠りに就いた。


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