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巻ノ八拾弐 初号機完成 の巻

 大作とほのかは歌ったり他愛の無い話をしながら山道を進んだ。

 前回の失敗に懲りて無謀な近道を通ったりはしない。急がば回れと言う奴だ。そもそも全然近道じゃ無かったし。

 何度も通った道を何時もの通りに歩く。昼過ぎには無事に虎居へ到着した。




 野鍛冶を訪ねると金具製造は順調とのことだ。完成品を見せて貰うが何の問題も無い。製作ペースも至って快調の様子。この件で大作が口を挟む余地は無さそうだ。

 だが、大作は今頃になってとんでもないことに気が付いてしまった。もしかして脱穀より稲刈りを機械化した方が良かったんじゃ無いのか?


「一反の田んぼを稲刈りするのにどれくらい掛かるのかな?」

「そんなの知らないわ。私めは野良仕事なんてしたこと無いもの」


 ほのかが他人事みたいに興味無さげに答える。実際問題、他人事なんだけど。

 大作はスマホで調べて一日に一反は刈れたという情報を見つける。ただし、稲架掛はさかけ作業を含めるとその倍くらいは手間が掛かったらしい。

 品種や気候や土壌にもよるだろうが、とりあえず一反から一石の米が採れると仮定しよう。祁答院を四万石とすると扱箸こきばしを使った脱穀の八万人日と同じくらいマンパワーを要することになる。


 別の資料によると四人で一日に八()の稲を刈れたって書いてある。って何だっけ? うねとは違うんだろうか。

 調べてみると一()は約一アールらしい。と言うことは五人で一日に一反の稲が刈れるってことだ。

 もし、こっちが本当なら二十万人日! 脱穀の八万人日よりよっぽどマンパワーを取られてるじゃん。大作はスキンヘッドを抱える。


 失敗した。足踏み式脱穀機よりこっちに注力すべきだった。今さらキャンセルもできん。悔やんでも悔やみきれんぞ。

 無理を承知で刈取機の製造をねじ込んでみるか? いやいや、絶対に無理だな。どう見ても脱穀機で手一杯だ。

 まてよ、入来院と東郷の野鍛冶が手付かずだ。やる前から諦めてたら何にもできないぞ。見積もりだけならタダだろう。


 ちなみに稲を刈るだけではダメだ。適当な量を束ねなければならない。この作業の方がよっぽど大変とのことだ。

 人力結束機って言うのが大正末期に作られたらしい。でも複雑そうな機械で簡単には作れそうもない。

 そもそも稲束ってどうしても束ねないとダメなのか? 束ねないと稲架掛け出来ないのか? 稲架掛け以外に乾燥させる方法は無いのか?

 さっぱり分からん。農業は専門外だ。専門家の意見が必要だな。今度、五平どんに聞いてみよう。


 それはそうと鎌にも二種類ある。刀みたいな刃鎌はがま(のこぎり)みたいなギザギザの付いた鋸鎌だ。昔は刃鎌しか無かったが第二次大戦後に鋸鎌が登場したそうだ。刃鎌は頻繁に砥ぐ必要があるが鋸鎌は砥がなくても切れるので効率が良いらしい。地味な改善ポイントだな。


 ちなみに田植えも一人で一日に一反植えられたって話もあれば三十時間掛かったって話もある。何を信じりゃ良いんだよ。

 ともかく、これが人力田植機を使えば二時間半から三時間に短縮できるらしい。

 こっちも効果はデカいな。脱穀と違って稲刈りと田植えは期間集中なので省力化のメリットは大きい。冬の間に開発させよう。

 マット苗を作って田植機を使えば早期の植え付けや密植が出来る。単位面積当たりの収量は大幅増だ。稲が等間隔なら除草の機械化も容易なはず。夢が広がりんぐ!




 続いて轆轤師を訪ねる。こちらはまだ試作品の設計段階だった。クランク機構に手間取っているらしい。


「こういうのは考えていてもしょうがありません。試作品を作ってTrial and Errorで行きましょう。TryじゃなくTryalです。単なる試行錯誤ではありません。失敗の原因を正しく分析して次に繋げるのです。勿論、試作品開発のコストもお支払させて頂きます」

「それは有り難き幸せにございます。勝手が分からぬ故、難儀しておりました」


 今度は材木売を訪ねて廃材や大鋸屑の入手だ。椿や槻は無かったが樫ならあるらしい。好きなだけ持って行って良いとの許可を得られた。

 どうせ薪くらいにしかならないと言っていた。でも薪だって立派な商品だ。大口顧客だからサービスしてくれたらしい。




「何だか順調に行き過ぎて怖いぞ。何か忘れてること無いよな?」

「首尾良く事が進んでいるのが恐ろしいって難儀なことね。工藤様や青左衛門様ともお話があるんじゃ無いの」


 ほのかが呆れた顔をしている。だが大作は決して油断しない。油断した直後にピンチになるのはホラー映画の定番なのだ。


「三の法則って知ってるか? いろいろあるけどワイ○バーグの奴だぞ。計画が失敗する原因を三つ考えてみろ。思い付かないようなら思考過程の方に問題があるんだ」

「ふぅ~ん。たとえばどんなこと?」

「それが思い付かないから怖いって言ってんだろ! そうだ、とりあえず窯元に行って耐火煉瓦をチェックしよう」




 大作は全然期待していなかった。なので、耐火煉瓦の試作品が出来ていなかったことに少しも驚かない。

 弥十郎も例によって留守だった。きっと水銀や巫女装束の入手のために奔走してくれているんだろう。そう思えば腹も立たない。


 最後は青左衛門だ。どうせ明日には評定で会う。でも今回はお園がいない。ちょっとでも不安要素を潰しておこう。

 青左衛門は相変わらず忙しそうに働いていた。しかし二人に気が付くと笑顔を見せる。


「明日の評定の下見にございますな。宜しければ今夜もお泊まりになりますか?」


 げぇ! タダ飯を(たか)りに来たと思われてる。もう立派な家があるっていうのに。大作はちょっと、いや、かなり恥ずかしくなった。


「今まで散々ご迷惑をお掛けしました。虎居にも家を借りましたのでもうご厄介になることはございません」

「それは宜しゅうございましたな。良い機会にございます。圧延機とプレス機をご覧になりますか?」

「もう出来たのでございますか! 早よう見せて下さいませ!」


 そう言えば前回の評定で実証試験機が出来たって聞いたような聞かなかったような。どうだっけ? お園がいれば分かるのに。

 まあ、出来てるって言ってるんだからそれで良いか。大作は考えるのを止めた。


「鉄を暖めております故、暫しお待ち下され。こちらが試しに作った板にございます」


 待っている間に試作品を手渡された。厚さ一ミリほどで三十センチ四方くらいの鉄板だ。

 現代ならホームセンターに行けば普通に売ってるような代物だ。だが、この時代にこんな物を作ろうとすれば大変な手間が掛かるんだろう。


 大作は何かの番組で野鍛冶が檜皮包丁を作っていたのを思い出す。

 そのための素材として均一な厚みの鉄板を金槌で叩いて作っていたのだ。

 良くもまあ、あんな芸当が出来る物だと関心したのを覚えている。


「それではこれより鉄の板を曲げてご覧にいれます。ここに端を合わせて真金を乗せて…… お下がり下され。よいしょ!」


 掛け声と共に何人もの小僧が手伝って大きな重石を乗せる。その上に太い棒を乗せて端の方に全員で体重を掛ける。鉄板が一気にJ字形に曲がった。

 

 青左衛門がドヤ顔をしている。これは誉めといた方が良いのか?


「素晴らしい青左衛門殿。そなたは英雄にあらせられる。大変な功績にございます」


 青左衛門の顔に笑顔が浮かぶ。重石を退けると鉄板の角度を変えて同じ行程を繰り返す。

 みるみるうちに。と言いたいところだが実際には一度曲げる度に重石を退けなければならない。

 とてつもない重労働だな。鉄板が筒状に加工されるのにたっぷり十分は掛かった。まあ、水車か何かを使えば省力化は可能だろう。


 こんな物を銃身にして大丈夫なんだろうか。十回くらいは巻いてあるのでバームクーヘンみたいだ。肉厚十ミリだから必要以上の強度はあるのかも知れん。実際に試すしか検証のしようが無いな。


「見事な物でございますな。いやはや、感服つかまつりました」


 大作は心にも無いお世辞を言う。俺はやっぱりサイコパスなんだろうか。

 ほのかは隣でぽか~んとしていた。だが、大作が肘で脇腹を突っつくと我に返る。


「私めもこのような凄まじき絡繰を目にするのは初めてにございます。本に青左衛門様は天下一の鍛冶屋でいらっしゃいます」


 ほのかがぎこちないビジネススマイルを浮かべる。お園とは比べ物にもならない。だが一定の効果はあったようだ。青左衛門が鼻の下を伸ばす。


「いやいや、これも大佐様のお知恵があったればこそ。このようなやり方があるとは思いもよりませなんだ」

「あとは尻の蓋。それと火薬に火を付けるための火穴を開けねばなりませんな」

「ご安堵下さいませ。手抜かりはございませぬ。筒の根本だけ炙りて錐で穴を開けもうした。蓋も出来ておりますぞ」


 もしかして出来ちゃったのか? 一年掛かるって言ったのは誰だよ。とは言え、銃身が三十センチしか無い試作品だけどな。


 ちょっと待てよ。銃身長は一メートルじゃなきゃダメですか? 三十センチじゃダメなんでしょうか?

 たとえば.45ロング・コルトという黒色火薬の拳銃弾がある。

 この弾を使う最も有名な拳銃はコルト・シングル・アクション・アーミーだろう。ピースメーカーの通称で有名な、西部劇に良く出てくるリボルバーだ。

 一番ポピュラーなモデルのバレルは5.5インチ。十四センチくらいしか無い。

 まあ、あれは後装式でライフリングも入ってるんだけど。


 そもそも、昔の鉄砲の銃身が一メートルもあるのは黒色火薬だからなのか?

 なんだか良く分かんなくなってきたぞ。大作は必死に記憶を辿る。


 黒色火薬の燃焼速度は秒速五センチから四メートルくらいで凄く遅いんだっけ。いやいや、燃焼速度は関係無いぞ。そんなんじゃ鉄砲玉は飛ばせない。

 低速爆轟って言っても秒速二千メートルくらいにはなるんだ。だから発射薬に使うには不向きってWikipediaに書いてあったんだっけ。

 だけど高性能爆薬みたいな高速爆轟は起こせない。だから砲弾や爆弾なんかの炸薬に使うには威力不足らしい。実に中途半端な火薬なのだ。


 そんで結局はどうなんだ。銃身長は三十センチで足りるのか?

 黒色火薬は無煙火薬に比べて立ち上がりが早すぎるって読んだことある。

 銃身が長いのは命中精度を求めたためで威力には寄与していないんだとか。

 そもそも丸い鉛弾を回転も掛けずに発射しているんだ。野球のナックルボールとかわらない。どこに飛んで行くのか投げた本人にも分からない変化球みたいなもんだ。


 これは銃身にライフリングを切ってミニエー弾かプリチェット弾を使えば簡単に解決する。

 とは言え、あれはまだ使わないって決めたばっかりだ。コロコロと方針を変えたらリーダーシップを問われるかも知れん。

 何か上手い誤魔化し方は無いかな。仕方ない。妥協案で行くか。


「青左衛門殿はヤーゲル銃という名前を聞いたことはございませんか?」

「や~げるじゅう? 耳にしたことはございませぬな」


 そりゃあ、あるわけ無いよな。大作は自分で自分に突っ込みを入れる。

 あれは丸い弾を使った前装式のライフル銃というかなり珍しい代物だ。通説によると装填に二倍は手間が掛かったんだとか。


 大作はYoutubeで見た動画を思い出す。小さな布を銃口に当てて弾を木槌で叩いて押し込むのが大変そうだった。もっとも、その後は槊杖(かるか)で普通に押し込んでいた。恐らく銃口に叩き込む時に弾が変形してそこから先の抵抗はそれほどでも無いのだろう。

 それでも、多少の抵抗はあるはずだ。押し込み易くする工夫だろうか。槊杖の先が剣玉みたいに大きな玉になってたりするのが目を引いた。

 それと、少しでも手間を省く工夫だろう。蒲鉾板みたいなのに十個ほど穴を開け、布で包んだ弾をあらかじめセットしていたのも見たことある。

 大作の印象としては装填の手間はそれほどでも無い。むしろ早合(はやごう)なんかで発射速度を上げすぎると銃身のオーバーヒートが心配だ。


 ちなみに、この銃は白虎隊が使っていたことでも有名だ。幕末の会津藩が大量に装備していたらしい。きっと綾瀬は○かも撃ったことあるだろう。

 十五世紀末にはライフリングは発明されていたらしい。だが、いつ頃から普及したのかググっても良く分からない。この時代に影も形も無いのだけは間違い無さそうだ。


「ヤーゲルとはドイツ語のイェーガーという言葉が訛った物で猟師の意にございます。先日、筒に螺旋の溝を刻む工夫の話をしましたな。団栗(どんぐり)の如く尖った弾を用いると遠くまで真っ直ぐに飛ぶのではないかと」

「敵に真似されぬよう密むべしと申されましたな」

「そこでこうするのです。螺旋の溝は刻みますが弾は丸い物を使います。溝に食い込むよう布で包んで無理矢理押し込みます」


 大作は銃身に弾を無理矢理押し込むジェスチャーをする。


「それでは弾を込めるのが大層な手間にございますな」

「最初の一発だけにございます。二発目からは普通に込めます。どうせ敵は近付いて来ます故、それで十分でしょう」


 銃身の短さを弾丸の回転で補えば五十メートルくらいなら人に当てられるだろう。テストしないと分からんけど。二発目を込めてる間に敵の方から近付いて来てくれる。


「然れど如何にすれば筒に溝を刻めましょうや。筒の内側を削るのは至難の技」

「真金に溝を掘っておけば良いのではござりませぬか?」

「それでは真金を抜くことが叶いませぬ」

「初めの一巻きだけ溝のある真金で作りて、後は溝の無い真金と差し替えては如何かな」


 大作や小僧までが参加して口々に意見が交わされる。しかし良いアイディアは中々出て来ない。

 大作がほのかを見ると退屈そうに欠伸(あくび)をしていた。こいつ完全に他人事だと思ってやがるな。


「ほのか。お前も何か考えろよ。こういうのは門外漢の方が先入観の無い突飛なアイディアが出せるんだ」

「そんなの私めには分かるわけないわ。丸める前の鉄の板に(あらかじ)め斜めに筋を入れておけば良いんじゃ無いの?」


 が~んだな。適当に振ったつもりだったのにそんな簡単な解決策があったとは。青左衛門や小僧たちもぽか~んと呆けている。

 軟鉄製だから高温高圧に曝されたライフリングはどうせ長持ちしない。たぶん数百発も撃てばスクラップになる消耗品だ。もう、どうでも良いや。


「型を作ってプレスで対応しましょう。それが出来るまでの時間を使って拙僧は銃身の強度テストを行います。試作品と弾をお借りしますぞ」

「きょうどてすと?」


 青左衛門とほのかが急にハモる。こいつら出来てんのか?


「試し撃ちして壊れぬか調べるのです。尻の蓋が壊れて八板金兵衛は失明したなんて話もありますぞ」

「しつめい?」

「目が潰れて見えなくなったんだ」

「なにそれこわい!」


 ほのかが首を(すく)めた。そもそも、いきなり撃ってみるなんて無謀も良いところだ。本当の話だとしたら馬鹿なんじゃ無かろうか。


「明日の評定は面白きことになりそうですな」


 他人事だと思って青左衛門が気楽なことを言う。

 とりあえず失明だけは絶対に嫌だぞ。大作は心の中でぼやいた。




 試作品のバレルと鉛弾を持って弥十郎の屋敷に向かう。火薬はあそこの納屋にあるはずだ。

 さっきは留守だった弥十郎は帰宅していた。


「如何なされた大佐殿。今夜もお泊めいたそうか?」


 げぇ! こっちでもタダ飯を(たか)りに来たと思われたぞ。まあ、今まで散々厄介になったんだから仕方無いか。


「それには及びません。虎居に家を借り申した。もうご迷惑はお掛けいたしません」

「遠慮は無用。どうせ評定はここで開くのじゃ。して、本日は何用かな?」

「鍛冶屋の青左衛門殿が銃身の試作品を作りました。強度テストを行うため火薬を使わせて頂きとうございます」


 大作がバックパックから銃身を取り出す。それを見た弥十郎は目を丸くして驚いた。


「もう出来たのか! 一年掛かると申しておったのは何だったのじゃ?」

「これは試作品にて弾が飛ぶかどうかも分かりませぬ。とりあえず明日の評定までにテスト結果を纏めとうございます。お庭で試し撃ちをさせて頂いて宜しいでしょうか?」

「ここで鉄砲を撃つと申されるのか!」


 弥十郎が助けを求めるような情けない顔をした。




 さすがに屋敷の庭で鉄砲を撃つのは無理だと弥十郎に丁重に断られた。

 じゃあ河原はどうだろう。あそこも不味い。人目に付きすぎる。

 結局は虎居城の奥で行うことになった。


 弥十郎に連れられて城に向かう。そう言えば大作は虎居城に行くのは初めてなのを思い出した。

 城門の門番に弥十郎が軽く会釈する。顔パスらしい。大作とほのかも会釈して後に続く。


 虎居城は川内川が大きくヘアピンカーブした部分を天然の堀として使った山城だ。大雨が降っても大丈夫なんだろうか。大作は他人事ながら心配になる。

 まあ、周辺より二十メートルくらいは高いので何とかなるんだろう。

 この丘の地形が伏せた虎に見えるから虎居と呼ぶんだとか。

 奥行きは五百メートルくらいはありそうだ。例によって曲輪がいくつも並んでいる。


「手前から塩の城、小城、中の城じゃ」


 聞いてもいないのに弥十郎が説明してくれた。


「何故に塩の城と言うのでございますか?」

「知らん!」


 弥十郎が一刀両断に切り捨てる。お前はくも○いかよ! 大作は心の中で突っ込んだ。


 一番奥にある松社城まで進むと弥十郎は二人に暫し待つように告げて建物に入って行った。きっと射撃テストの許可を取りに行ったんだろう。

 すぐに弥十郎が粗末な着物を着た若者を二人連れて戻ってくる。大作は筵を何枚か用意して貰った。


 一行はさらに道を南西に川縁まで進む。八女ノ瀬と言う所らしい。1459年に城主の渋谷徳重の姫など八人の女性がここで溺死したとか何とか。

 いったい何があったのか知らんけどちょっと怖いな。川には近付かないでおこうと大作は心に誓う。

 ようやく目的地に辿り着く。距離はあったが高低差が少なかったので助かった。


「ここなら思う存分に試し撃ちが出来ようぞ」


 弥十郎がにっこりと笑って言う。

 何がそんなに嬉しいんだろう。そもそも成功するかどうかなんて全然分かんないのに。


「革新は失敗からしか生まれません。サイクロン式掃除機を作ったジェームズ・ダイソンは五千百二十七台もプロトタイプを作ったそうですぞ」


 大作は精一杯の予防線を張る。だが、弥十郎は例によってぽか~んとしていた。


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