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巻ノ弐百七拾 栄光のエースナンバー の巻

 大作と愉快な仲間たちは五百石積みの弁財船に乗って伊豆半島周遊を続ける。日が西の空へ傾いたころ、船は伊東の港へと辿り着いた。

 出迎えに現れたのはこの辺りを治める小田原衆にして馬廻衆が一人、伊東九郎三郎政世とかいうおっちゃんだ。

 大作は持って生まれた得意の交渉術を駆使して一番安い部屋と豪華ディナーを無事にゲットしたのであった。どっとはらい。




 史実通りなら明日にも秀吉が五ヶ条の朱印状を送ってくるはずだ。どんな返事を書いたら受けるだろうか。夕餉を終えた一同は食後の腹ごなしとばかりに文面を考えた。ああでもない、こうでもないと無い知恵を振り絞る。

 そうは言っても下手な考え休むに似たり。結局のことろは時間を無駄にするだけだ。昼間に考えた文面から若干の手直しを加えただけで終わってしまった。


「では皆様方、これにて完成ということで宜しいかな? 何かご意見があれば今のうちに言って下さりませ。明日には投函しなきゃなりませんので」

「こんな物で良いんじゃないかしら。大事なることは文を出したかどうかなんでしょう? 真珠湾攻撃みたいに後から『卑怯な騙し討ち』とか言われたくないから日付入りの書状を出すんですもの」

「そうだな。まあ、ぶっちゃけアリバイ作りみたいなもんだし。んじゃ、これで完成っと。どなたかお客様の中で字の上手な方はいらっしゃいませんか!」


 突如として大作は大声を張り上げた。座敷にいた全員が困惑気味に互いの顔を見合わせる。牽制と譲り合いが入り混じった何とも言いようのない淀んだ空気が漂う。

 やはり自分から字が上手いと自慢できるほどの奴はいないんだろうか。あるいは面倒臭いことに関わり合いになりたくないのかも知れん。とにもかくにも立候補する者はいないらしい。

 大作は暫しの逡巡の後、安藤豊前守の顔色を伺いながら声を掛けた。西浦の代官をやっているとかいう胡散臭い爺さんだ。


「では良整殿、君に決めたぁ~! お手数ですが手紙の清書をお願いしても宜しゅうございますかな?」

「て、てがみ…… にござりまするか?」


 呆けた顔の爺さんが不思議そうに小首を傾げた。

 効いてる効いてる。大作は心の中でほくそ笑むが決して顔には出さない。


「えぇ~っとですね、手紙と申すは文のことにございますな。ちなみに有名な中国語あるあるでトイレットペーパーのことを手紙と言うっていうのがありますでしょう? だけども今時そんな古い言葉を使う奴はいないそうですぞ。トイレのことを厠っていうみたいなもんなんですと」

「と、といれとは厠のことにござりまするか。然れども厠と紙に如何なる関わりがあるのでござりましょうや?」

「そこは蛇の道は蛇、Need to knowでお願いできますかな? 好奇心は猫をも殺す、いわんや悪人をや。んじゃ、今晩中にお願いしますぞ。明日の朝イチに配達記録郵便で投函しましょう」


 大作は一方的に話を打ち切ると食器を片付け始めた。

 下書きを押し付けられた爺さんは一瞬だけ迷惑そうな顔になる。だが、すぐに諦めがついたんだろうか。諦観したような笑みを浮かべると深々と頭を下げた。


「では、今宵はここまでに致したとう存じます」


 言うが早いか大急ぎで一人用テントを組み立てた。その速さたるや超スピードとかそんなチャチなものでは断じてない。みるみるうちにテントが完成して行く。伊東九郎三郎政世や安藤豊前守は目を丸くしてぽか~んとしている。大作はお園の手を取ると逃げ込むように飛び込ん……


「ちょっと待ちなさいな、大佐。温泉を忘れてるわよ。折角、伊東まできたのに温泉に入らないなんて阿呆みたいだわ」

「そ、そうだったな。危ない危ない。もうちょっとで入浴料を損するところだったぞ」


 弱食塩泉でゆっくりと温まった一同は安らかな眠りへ就いた。




 翌朝早く、すっきり爽やかに目を覚ました大作たちは歯を磨いて顔を洗って…… って、小学生の絵日記かよ!


「どうしたの、大佐? 自分で自分に突っ込むなんて大佐らしくもないわねえ」

「そう思うんならお園が突っ込んでくれよ」

「突っ込むだなんて…… 年頃の娘にそんなこと言うもんじゃないわ。はしたないわよ」

「そうそう、ナイス突っ込み!」


 そんな阿呆な話をしながらテントを畳んでいると仲居さんみたいな人たちが膳を運んできた。

 

「鉄道写真家に中井さんっているよな。字が違うけどさ」

「SMAPにも中居くんっているわね。字が違うけど」


 朝餉のメニューは残念ながら豪華とは程遠いようだ。どうやら昨晩の食べ残しを温めなおしただけらしい。まあ、朝早くに出発するからって無理を言ったのはこちらだから仕方ないんだけれども。


「荷物にならなければお持ち下さりませ。冷めても美味しく召し上がれるよう工夫をしてございます」


 声のする方を見やれば伊東九郎三郎政世の隣に弁当らしき箱が山のようにうず高く積み上げられている。ひい、ふう、みい…… どうやらちゃんと人数分あるらしい。

 食べ物をくれる奴に悪い奴はいない。絶対にだ! 大作たちはぺこぺこと頭を下げると丁寧に礼を言った。




 一同は浜へと続く急な坂道を急ぎ足で降りて行く。船の上では水主たちは準備万端といった顔で手持ち無沙汰にしていた。


「いやいや、皆様方。お待たせして申し訳ございませんな」

「何を申されまするか、御本城様。我らも今しがた参ったところにござりますれば」


 船長(ふうなお)がどこかのバカップルみたいなセリフを口にするが本気にしない方が良さげだ。こういうのは確りと労っておいて損はないはず。大作は例に寄って例の如く、馬鹿の一つ覚えを繰り返す。


「これは僅かだが心ばかりのお礼だ、とっておきたまえ」

「いやいや、御本城様から斯様な物を頂く訳には……」

「君も男なら聞き分けたまえ!」


 唖然とする船長を放置して大作たちは船の上へと駆け上がった。




 船が沖へ出た途端、冷たくて強い風が北西の方向から吹き付けてくる。突風のような横風を帆に受けた五百石の弁財船は大きく船体を揺らした。水主たちは進行方向を風に向かって少しでも切り上がらせようと総出で帆を操っている。進路は北北東といったところだろうか。

 とは言え、一旦海に出てしまえば専門家に運命を任せるしかない。下手な考え休むに似たり。大作は考えるのを止めると艫矢倉の中へ逃げ込むように飛び込んだ


「今日って西暦だと1589年12月31日だな。いよいよ大晦日だぞ。この時代は紅白とか無いのかな?」

「こうはく? そんなの聞いたこともないわね。どうせ美味しくは無いんでしょう? んで、和暦にすれば天正十七年十一月二十四日よ。史実通りなら、いよいよ秀吉が五ヶ条の朱印状を発給するのよね。早く届かないかしら。私、早く読みたくて矢も盾も堪らないわ」

「いやいや、文面は昨日に教えたよな? あのまんまだと思うぞ」

「そんな筈ないわよ。だって私達は態々、京の都まで秀吉に会いに行ったんですもの。だから『上洛あたはず』のところだけは違ってるんじゃないかしら」

「そ、そうかも知れんな。まあ、楽しみに待とうじゃないか。みんなも楽しみだよな? な? な? な?」


 大作は助けを求めるようにサツキやメイ、ナントカ丸の顔を順番に伺う。だが、返ってきたのはこれっぽっちも興味ありませんという曖昧な愛想笑いだけだ。

 ふと視線を感じて振り返ると西浦の代官をやっているとかいう胡散臭い爺さんと目が合った。


「如何さなれましたかな良整殿?」

「昨夜、御本城様より仰せつかりました豊臣への返書。書き終わりまして御座います。お改め下さりませ」

「あぁ~あ、そう言えばそんなことをお願いしておりましたな。随分とお手数をお掛けしました。小田原に戻ったらすぐに投函いたしましょう。さて、小田原に戻るまで半日ぐらいですかな? それまでの間、何をして時間を潰したら宜しゅうございましょう」

「いや、あの、その……」


 急に話を振られた安藤豊前守(スキンヘッドじいさん)はまるで迷子のキツネリスのように目を白黒させている。

 あまりの狼狽えぶりを哀れに思ったのだろうか。助け舟を出すかのようにお園が話に割り込んできた。


「だったら大佐、さっき言っていた紅白をやりましょうよ。ねえねえ、そうしましょう。それで? 紅白って何をするのかしら」

「えぇ~っ! 何をするのかも知らんのにやりたいだと? 意味分からんけど凄いやる気だな。紅白っていうのは正式には紅白歌合戦っていうんだけれど……」

「か、合戦ですって! ここで戦をするっていうの? 私たちが?」


 説明を遮るように突如としてメイが大声を張り上げる。それはいくらなんでもオーバーリアクションなんじゃね? って言うかこいつ、分かっていてわざと茶化してるんじゃなかろうか。まあ、無反応よりかはなんぼかマシなんだけれども。


「まあまあ、餅付け。話は最後まで聞いてくれよん。今を遡ること…… じゃなかった、今から三百五十年ほど未来。第二次大戦終結から四ヶ月半後の大晦日に紅白音楽試合っていうラジオ番組がNHKで放送されたんだ。最初は紅白音楽合戦ってタイトルにするつもりだったらしいな。ところがGHQからバトルは不味いだろって言われてマッチに変えたんだとさ」

「バトルは駄目だけどマッチなら良いですって? 何だか随分と変てこな屁理屈もあったものねえ。まあ良いわ。んで? 話を勧めて頂戴な」

「へいへい。とにもかくにも、歌手…… 歌い手? 歌うたい? 何なそんな奴がいるよな。そいつらを適当に集めては男女に分けて交互に歌を歌って優劣を付けたんだとさ。まあ、一番最初の紅白音楽試合の時には審査員もいなけりゃ勝ち負けもなかったらしいんだけどさ」


 大作はスマホの情報を拾い読みしながら披露して行く。だが、例に寄って女性陣の感心は少しズレているらしい。メイがちょっと小首を傾げながら疑問を口にした。


「男と女が代わる代わる歌うって言ったわよね。それじゃあトランスジェンダーなお方はどうされておられたのかしら?」

「気になるのはそこかよ~! えぇ~っと…… 2007年の第五十八回では中村中ってお方が戸籍上は男なのに紅組で出場したって書いてあるな。やっぱ、最終的には本人の希望が通るんじゃね? まあ、俺達の中には今のところトランスジェンダーはいないだろ。その時がきてから考えても良いんじゃね?」

「メイ、分かった! それじゃあ紅組はお園、サツキ、私の三人。白組は大佐、ナントカ丸、良整様の三人ね。歌う(ついで)はどうするのかしら。誰から歌うのよ?」

「そ、某もでござりまするか? 某に歌を歌えと申されましたか?」


 不安そうな顔で爺さんがキョロキョロと視線を彷徨わせる。もしかしてこいつ、音痴なんだろうか。先手を打ってフォローしといた方が良いかも知れん。大作は爺さんの手を弱々しく握りしめると掠れるような声で呟くように囁いた。


「良整殿、紅白歌合戦のこと返す返すもお頼み申します。音痴なんて気にせずにジャ()アンみたいに堂々と歌えば宜しゅうございます」

「さ、左様にござりまするか。然れども、じゃい()んとは如何なるお方にござりましょうや?」

「良整様、マジレス禁止にございます。では、僭越ながら私がトップバッターで歌わせて頂くわね、大佐」


 これ以上の脱線を防ごうとでも思ったのだろうか。話の腰を複雑骨折させるようにお園が強引に割って入る。だが、その目論見はメイという予想外の刺客によって遮られた。


「とっぷばったあ? それって一番始めってことだったわよねえ。だけども大佐、一番はぴっちゃあじゃなかったかしら?」

「うぅ~ん。良い質問ですねえ、メイ。確かに守備番号の一番はピッチャーだと決まってるな。だから高校野球以だと一番がエースナンバー、十番が二番手ピッチャーってことが多いんだ。だけどもそれが大学野球になると一番、十一番、十八番になることが多いらしい。たとえば早稲田は右投手が十一番、左投手が十八番だぞ。んで、明治大学は十一番がエースナンバーなんだ。それが東都大学リーグとかになると一番が主将番号になるから十番台がエースナンバーになるみたいだな」

「ふ、ふぅ~ん。それじゃあプロ野球はどうなってるのよ?」

「当然それも気になるか。だけどもそれって凄くややこしいんだけど本当に聞きたいか? 聞きたい? しょうがないなあ…… 日本だと習慣で主力投手が十番台を着けることが多いんだ。その中でも特に十八番をエースナンバーって言うケースが多い。とは言え球団によって十七、二十、二十一なんかをエースナンバーとしているところもある。それに最近では十一が右のエース、四十七が左のエースになりつつあるような、ないような」

「あるのかないのかどっちなのよ!」


 それまで黙って聞いていたお園が不意に横から突っ込みを入れてきた。

 大作は目を合わせると軽くうなずいて謝意を示す。


「ナイス突っ込みお園。メイも今くらい的確に突っ込みを入れれる…… 入れられるようになってくれよな。んで、話を戻すけど阪神や広島みたいにエースナンバーが決まっていない球団もあるんだ。阪急、近鉄なんかも似たような感じだったしな。とは言え、さっきも言ったようにエースナンバーとしては十八番が一般的なんだろうな。ほら、歌舞伎でも十八番ってあるだろ?」

「か、かぶき? 傾くってことかしら。それって美味しいの?」

「それは歌舞伎揚のことを言ってるのかな? だったらサクサクした食感と甘塩っぱさは中々の物だぞ。ちなみに名前の由来は一枚一枚が歌舞伎の家紋の形をしているからなんだ。関西でいうところの『ぼんち揚』と似て非なる物だな。たくさん砂糖を使った歌舞伎揚は甘くて濃い味付け。鰹や昆布出汁を使ったぼんち揚は関西風の淡白な味わいだな」

「ふ、ふぅ~ん。そう言えば京の都で頂いたお料理も薄口で雅な味わいだったわねえ。そうそう……」


 こうして艫矢倉の中へ籠もった大作たち一同は楽しく明るい紅白歌合戦を…… 

 ち~が~う~だ~ろ~~~っ! 違うだろ~ぉっ!! 違うだろっ!!! このハゲ~~~!!!!

 心の中で絶叫するが決して顔には出さない。っていうか、スキンヘッドとハゲは違うのだ。違う! 絶対にだ!!!

 大作は鋼の精神力を総動員して柔和な笑みを浮かべると精一杯の優しい声音を絞り出した。


「それじゃあ一番ピッチャーはお園で良いかな? ちなみに背番号は十八番だぞ」

「そ、そうねえ。それじゃあ私から歌うわ。と思ったけど、大佐。野球って九人でするんじゃなかったかしら。私たち六人しかいないんだけれど足りないんじゃないの?」

「いやいや、野球をしようとおもったら最低でも十八人だぞ。それに塁審はともかく審判だって要るしな。だからと言って六人でできるってスポーツってなんジャラほい。水球やカバティは七人、バスケやフットサルは五人だろ。ビーチバレーくらいなら何とかなるかも知れんけど……」

「べ、別に本当に試合しなくても良いと思うわよ。六人チームのスポーツっていえばバレーとかあるでしょうに。んで、バレーのエースナンバーは何番なのかしら?」

「そりゃアレだ、アレ。栄光の背番号、四番だな。んじゃ、四番お園。歌ってくれるかな~?」

「いいとも~! 私の一番大好きな歌よ。大佐から初めて教えて貰った思い出の曲。『どんぐりころころ』です。聞いて下さい」


 お園は自分で自分の曲紹介をすると情感たっぷりにアカペラで歌い始める。小節を効かせた独特の歌い方はまるでベテラン演歌歌手みたいだな。大作は吹き出しそうになったが空気を読んで我慢する。

 一番だけで止めるのかと思っていたら場が盛り上がってきたので二番三番まで歌う。どんぐりが無事にお山に帰ったところで歌が終わった。一同は拍手喝采でアンコールとか言い出しかねない勢いだ。だが、紅白では決してアンコールは無い。絶対にだ!


「ブラボー、お園! 素晴らしい歌だったな。みなさん、お園にもう一度盛大な拍手を!」

「ありがとう、大佐。んで? 次は誰が歌うのかしら」

「私が歌うわ。私も大佐に初めて教えて貰った歌で良いかしら? 船で日向に渡った折に教えて貰った『故郷』よ」


 狭い艫矢倉の中でメイが大きな胸を張りながら詰め寄ってきた。大作はたじたじとなりながらも必死に後退りする。


「違うぞ、メイ。俺が教えた最初の曲はラジオ体操じゃなかったっけかな?」

「えぇ~っ! あれは歌じゃないと思うわよ」

「それに紅白は男女交互が原則だ。次は男の番だから俺が歌わせて貰うよ。と思ったけど、歌じゃなくて曲でも良かったんだっけ。それじゃあ、映画『未知との遭遇』の中の有名な一曲です。聞いて下さい」


 そんなことを言いながら大作はバックパックからアルトサックスを取り出す。勿体ぶった手付きでマウスピースを咥えると、かの有名な五つの音を吹き鳴らした。

 顔中に疑問符を浮かべたメイが小首を傾げる。


「レ・ミ・ド・ (1オクターブ下の)ド・ソ~ね。未知との遭遇ですって? 何なのよ、その曲は」


 流石は絶対音感のメイ。一度聞いただけでピタリを音階を言い当ててきた。大きな瞳が興味深そうにキラキラと輝いている。

 だが、お園の感心は丸っきり違った所にあるらしい。不意に腕組みをすると眉間に皺を寄せながら疑問を挟んできた。


「そんな曲を吹いて著作権の問題は無いのかしら? 確かあの映画の公開年は1977年のはずよ」

「ところがギッチョン。この五音はヤナーチェクの弦楽四重奏曲第一番第二楽章の中にも出てくるんだな。俺はその部分を演奏しただけに過ぎん。当然ながら著作権は切れているぞ」

「それって円周率の5億2355万1502桁目から123456789って数字が並んでるから著作権は存在しないって言ってるようなものよね? 円周率は無理数だから如何なる数列だって何処かに含まれている筈なんですもの」

「そ、その理屈で合ってるんじゃないのかな。良う分からんけど。まあ、そんなんで良いんじゃね? んじゃ、次に行こう。次に歌いたい奴は誰だ? 早い者勝ちだぞ」

「えぇ~っ? 紅白歌合戦って早い者勝ちなの? 歌の上手い下手には関わりが無いっていうのかしら?」

「いや、そんなことも言って無いけどさ。だけど先んずれば人を制すとも言うだろ? 言わない? 言わないんだ……」


 そんな阿呆な遣り取りをしている間にも船は小田原を目指して北へ北へと進んで行った。


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