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巻ノ弐百参拾七 自由な雲のように の巻

 大作はテレピン油の入った一升徳利を大事そうに抱き抱えながらお園と並んで歩いていた。目的地は小田原城の東にある蓮池だ。

 あそこの空き地ならお堀と池に挟まれている。だから万が一、火の勢いが強くなっても周りに延焼する心配は無いだろう。って言うかなったら困る。ならなかったら良いなあ。そんなことを考えながら二の丸の北辺を東に向かって突っ切って行く。

 南の方には住宅なのか兵舎なのか、あるいは倉庫なのかも知れないが大きな建物が沢山建ち並んでいる。とは言え、人影がほとんど見えないので随分と寂しげだ。

 まあ、特にイベントとかやっていない平日のお城なんて普段はこんな風に閑散としている物なんだろう。逆に賑わってたら変だし。大作は勝手に一人で納得すると謎の建物群のことを頭の中から追い払った。

 二の丸を東端まで歩いて行くとまたもや塀と門が建っている。そこにも例に寄って門番が暇そうに屯していた。

 何だか随分と無駄な人員配置だなあ。工事現場で作業している人より交通誘導員の方が沢山いるみたいな? まあ、アレのお陰で失業率が低く抑えられているのかも知らんけど。

 門番は大作たちの姿を認めた途端、弾かれたように姿勢を正して深々と頭を下げた。


「御本城様、御裏方様、岡本越前守様。本日は供回りも連れずいったい何方へお出かけにござりましょうや?」

「門番殿、好奇心は猫をも殺すと申しますぞ。可愛い猫ちゃんが死んじゃったら可哀想でしょう? って言うか、岡本越前守殿ですと!」


 素っ頓狂な大声を上げながら大作が振り返ると引き攣った笑顔を浮かべたテレピン油奉行が突っ立っていた。おっちゃんは目が合った途端、居心地悪そうな顔で軽く頭を下げる。


「ほ、本当だぁ~! ちょ、おま…… 何でくっついてきちゃったんですかな? 貴殿には今日からテレピン油奉行をお願いしましたよねえ? もしかして忘れちゃいました?」

「いやいや、奉行を仰せつかったからにはテレピン油とやらが如何なる物か知らねばならぬと欲しまして。故にご無礼とは存じながらもお二人の後に付いて参った次第。何卒お許し下さりませ」

「ま、まあ付いてきちゃったものはしょうがないですなあ。いまさら帰れとも言えませんし。でも、だったら始めから言って下されば良かったのに。この徳利を持つのを手伝って頂きたかったですぞ」

「では帰りには某がお持ち致しましょう。お任せ下さりませ」


 岡本越前守がドヤ顔で胸を張る。だけど帰りには中身は空になってるんだけどなあ。きっと分かっていて言ってるんだろう。

 このおっちゃん、毒にも薬にもならんような昼行灯かと馬鹿にしていたけれど意外と鋭い奴なのかも知れんな。

 大作は岡本越前守に対する警戒レベルを一段階引き上げた。


「とにもかくにも、門番殿。ここを通して頂いて宜しいかな? ご存知とは思いますが拙僧はこの城の御本城様ですぞ。空に浮かぶあの雲のように自由気ままに行きたいところへ行く権利を有しておると思うのですが? 違いましたかな?」

「ねえ、大佐。もしも曇だったら思った方には行けないと思うわよ。だって動力が付いてるわけじゃないんですもの。風に流されるだけだから何処に行くかなんて丸っきり風任せの運任せじゃないのかしら」

「そ、そうかも知れんな。だ、だけど自由なことは自由じゃないのかな? どうしてもあっちに行かないと駄目だとか、日が暮れるまでに帰ってこないといけないとか。そんなのって雲には無いだろ? そうですよねえ、越前守殿。門番殿もそう思われませぬかな?」


 お園から思いもよらぬ反撃を食らった大作は何とかして仲間を増やそうとする。だって雲のジュウ()が自由じゃ無いだなんてファンが聞いたら怒るぞ。これは何としても話を反らさねばならん。絶対にだ!


「ところで話は変わりますが雲って奴は何であんな風にぷかぷか浮いていられるかご存じでしたかな? 空気より重い物が落ちてこないって不思議でしょう? これって何でだと思われますかな? さぁ~あ、みんなで考えよう!」

「それは雲を構成する粒子の落下速度より上昇気流の方が早いからよ。雨粒の大きさは0.02ミリくらいだから落下速度は秒速一センチしかないの。だけど曇っていうのは上昇気流で生まれるでしょう。だから……」

「あ~の~なぁ~~~! お前が答えてどうすんだよ。お二人に考えて頂きたかったんだぞ。まあ、そんなわけで通して頂きますね」


 大作は一升徳利を抱え直すと門番に軽く頭を下げて門を潜った。

 蓮池とかいう大きな池の真ん中には木の生い茂った島があり、手前には細長い空き地が南北に広がっている。ここなら誰に遠慮することなくテレピン油の燃焼試験をやれそうだ。

 と思いきや、少し先の方に大勢の人たちが集まって何事か作業に勤しんでいるのが目に入った。


「あら、大作。こんなところで会うなんて奇遇ねえ。いったいどういう風の吹き回しかしら。もしかしてミニエー銃の射撃試験を見学したくなったの?」

「おお、萌じゃんか。お前こそこんなところで何してるんだ? って言うか、ミニエー銃だって? こんなところで射撃試験をやってたのかよ。俺たちはテレピン油の燃焼試験をやろうかと思ってここにきたんだ。ちょっと場所を借りても良いかなあ?」

「燃焼試験ですって? それならさっき済ませたわよ。今日やるって言わなかったかしら?」

「いや、あの、その…… 聞いてないんですけど。昨日の夕餉の時、もう何日か掛かるって言ったじゃんかよ。早く終わるのは悪いことじゃないけど俺にも予定って物があるんだよなあ。とにもかくにも燃焼試験はやらなくても良くなっちゃったんだ」


 テレピン油に対する興味が大作の中から急速に薄れて行く。と同時に、一升の徳利が途轍もない重量感となって両の手に圧し掛かってきた。

 捨てっちまおう。こいつぁニセモンだよ、よ~くできてるがな。大作は遠い目をしながら心の中で呟く。


「えぇ~っと、越前守殿。お手数ですが、このテレピン油を返してきてもらっても良いですかな?」

「は、はぁ? ねんしょうしけんとやらは如何致すおつもりにござりましょうや。もしや、お止めになると申されまするか?」

「実はちょっとした手違いがありましてな。此方に御座す萌が一晩でやってくれました。後で越前守殿にもコピーをお渡し致しましょう。では今日のところはこれでバレましょうか」

「バレるですって! いったい何がバレたのかしら? 大佐ったら、また誰ぞに懸想しているんじゃあないでしょうね?」


 お園が大きな目をキラキラさせながら話に割り込んできた。例に寄って目の付け所が常人とはかけ離れているなあ。大作はちょっと呆れつつも素直に感心する。


「いやいや、バレるっていうのは業界用語で解散するってことさ。あと、映ちゃいけない物が画面に映り込むこともバレるっていうみたいだけどな。とにもかくにも本日はこれにて解散。拙僧はミニエー銃の射撃試験を見学します故、越前守殿はテレピン油を返しておいて下さりませ。では、これにて御免」

「いやいや、御本城様。某も其のしゃげきしけんとやらを検分致しとうございます。何卒お許し頂きたく……」

「ミニエー銃の射撃試験は椎田さんの協力で軍が極秘に行うことになったんだ。君の気持ちはわかるがどうか手を引いて欲しい。君も男なら聞き分けたまえ。これは僅かだが心ばかりのお礼だ。取っておきたまえ」


 大作は精一杯ドスの聞いた声で言い放つ。そしてテレピン油の入った一升徳利を越前守の手に強引に押し付けた。

 おっちゃんは一瞬、何か言いたそうに口を開き掛ける。だが、暫らく躊躇した後に黙って徳利を受け取ると門を潜ってすごすごと帰って行った。


「ふん、馬鹿どもにはちょうど良い目くらましだ。んで、萌。テレピン油の燃焼試験ってのはどんな感じだったんだ? たとえば一リットルの火炎瓶でどれくらいの面積を火の海にできるのかな?」

「テレピン油の発熱量は軽油や灯油と大差ないのよ。ガソリンより引火点が高いから丁度良い具合にゆっくり燃えてくれるし。お陰で扱い易くて助かったわ。芯の代わりに適当に藁を混ぜて一平米に五百ミリリットルほど撒いてみたら二、三分くらいは燃えていたかしら」

「そ、そんなもんなのか? ナパーム弾なんて十分くらい燃えてるそうだぞ。思ってたより大したことないんだなあ。そういえばYoutbeなんかで見掛ける火炎瓶の動画とかでも辺り一面が火の海になってたりはしていなかったっけ。とは言え、第二次大戦中の米軍の資料で見たことあるぞ。日本の市街地を戦略爆撃で焼き払おうとした場合、一平方マイル当たり六トンの焼夷弾が必要だって見積もったとか何とか。ってことはアレだろ。えぇ~っと……」

「一平米当り2.3グラムってところね。これって二百倍も差があるじゃない。そもやそも、何でそんなに大きな違いがあるのかしら?」


 間髪を容れずにお園が即答する。相変わらず凄まじい計算能力だなあ。そう言えば、フォン・ノイマンはEDVACだかENIACだったかが完成した時に『自分の次に計算が速い奴ができた』って言ったとか言わなかったとか。

 ちなみに大作はフォン・ノイマンも大嫌いだ。奴は京都に原爆を投下するよう進言したそうな。ソ連に対する先制核攻撃も強行に主張したとか何とか。

 どんだけ好戦的なんだよ! 正に平和の敵みたいな糞野郎だな。地獄に落ちて永遠の業火に焼かれれば良いのに。大作は自分のことを棚に上げて心の中で二十世紀最高の天才数学者に呪詛を吐く。

 まあ、奴は核開発に関わったせいで大量の放射線を浴びたんだそうな。その結果、全身を癌に蝕まれて五十三歳で悲惨な死に方をしたんだとか。

 まるで絵に描いたような因果応報だなあ。餓鬼道にでも落ちていれば良いのに。そうだ、閃い……


「大佐、人を呪わば穴二つよ。あんまり憎まれ口なんてきかない方が良いわ」


 完全に脱線しかけた大作の意識がお園の言葉で急に現実へと引き戻される。


「そ、そうかなあ? なにも個別に用意しなくても一つの大きな墓穴に纏めて放り込んじまえば良いんじゃね? 米軍なんか日本兵の死体をブルドーザーで大きな穴を掘ってそのまま埋めちまったじゃん。硫黄島の滑走路なんて下に何千人埋まってるのか見当も付かんらしいぞ」

「なにそれこわい!」

「そ、そうかなあ? そんなん言うたら鎌倉辺りなんか今でも工事現場から人骨が出てくることが普通にあるそうだぞ」

「そう言えば沖縄では毎年八百件も不発弾処理があって、全部の処理を完了するには今のペースだと七十年も掛かるらしいわね」


 大作が脱線させた話題を萌が嬉々として拾い上げる。って言うか更なる脱線をかましてきた。

 これは一歩も後には退けないぞ。何でも良いからネタを披露せねばならん。絶対にだ!


「だ、だったらアレだ、アレ。うぅ~ん、閃いた! カンボジアには六百万発もの対人地雷が埋まっているそうな。全部を処理するのには何百年掛かるか分からんらしいぞ」

「それは一昔以上も前の話ね。最近は凄いペースで処理が進んでるから地雷による被害数も大幅に減ってるそうよ。ところでそろそろ話を戦略爆撃のことに戻しても良いかしら? M69焼夷弾の重さは2.7キログラムくらいだそうね。それって2.3グラムの千二百倍にもなるじゃない。ってことは三十五メートル四方に一発落とすってことでしょう? 昔の日本家屋は木造だったからとっても燃えやすいのよ。だからこれくらいで十分なんでしょうね」

「ふ、ふぅ~ん。まあそうかも知れんなあ。振袖火事なんて阿呆みたいな理由で江戸城天守まで焼け落ちちゃったくらいだしさ。ちょっと風が吹いてるだけで単なるボヤが大火事になっちまうんだもん。それか関東大震災の被服廠とか東京大空襲みたいに火災旋風(ファイアーストーム)を発生させればもっと効率的に焼き尽くせるかも知れんな。だったらもう……」

「恐れながら萌様。射撃試験の支度が整いましてございます」


 不意に背後から掛けられた声に話の流れがぶった切られる。声の主はと目を見やればナントカ丸の色違いみたいな小姓が突っ立っていた。

 萌は少年の方に向き直ると明るい声で返事を返す。


「ありがとう、若竹丸。それじゃあ始めましょうか。大作も見学して行くんでしょう? こっちにきなさいよ」


 萌の目線の先には細長いテーブルのような台が置いてあり、その上には手作り感溢れるベンチレストが四つ並んでいた。それぞれには火縄銃が一丁ずつ載っており、手前の椅子には職人風の初老の男が座っている。

 正面のずっと離れたところに白っぽい小さな看板のような物が四つ等間隔に立っていた。目を凝らすと同心円状の模様が描いてあるようだ。


「的はアレよ。ここから正確に三百メートル離れているわ。見えるかしら?」

「あのちっちゃいのが的だって? 三百メートルって思ったより遠いんだな。当たる当たらん以前の問題としてあんな物が正確に狙えるのかなあ?」

「それも含めての射撃試験よ。まあ、やってみようじゃないの。若竹丸、赤旗を上げて頂戴」

「御意!」


 さっき若竹丸とか呼ばれた小姓が大きな赤い布切れの付いた棒を掲げる。待つこと暫し、遠く離れた的の脇にも赤い旗が翻った。どうやら的の手前に監的壕が掘ってあって監的手が隠れているようだ。とにもかくにも準備OKってことらしい。


「では、長十郎殿。お願い致します」

「へい、畏まりましてございます」


 職人風の男は返事をすると火縄に息を吹きかけて火挟みに挟む。既に弾は込めているらしい。銃をベンチレストに固定すると火蓋を開いて静かに引き金を引いた。

 ほんの僅かなタイムラグの後、轟音と共に辺りが白煙に包まれる。耳がツーンとした大作は思わず顔を顰めた。萌やお園はと見れば二人とも耳を手で押さえている。職人の方を見てみればちゃんと耳栓をしていた。

 みんな用意の宜しいことで。大作も前に藁で作った耳栓をバックパックから取り出すと遅ればせながら耳に詰め込んだ。

 ところで弾はどこに当たったんだろう。単眼鏡を覗いて見るがさぱ~り分からん。と思いきや、的の下から先っぽに赤くて丸い物が取り付けてある棒が伸びてきた。棒は暫しの間、的の一点を指し示すように止まっていたかと思うと不意に引っ込んだ。

 鉄砲を撃った職人の隣に控えていた助手みたいな小僧が手元の紙にそれを書き写す。


「なあなあ、萌。今のってかなり外れてたよな? こんなんじゃあ実戦で役に立たないぞ」

「あのねえ、まだ零点規正すらしていないのよ。いきなり撃って当たる方がおかしいでしょう」

「そ、そうなんだ。じゃあ次は当たるのかな?」

「いいえ、しばらくは照準を固定したまま撃って散布界を調べるわ」


 そんな話をしている間にも職人風の男は槊杖の先っぽに湿らせた布を撒いて銃身内を綺麗にクリーニングし始めた。それが終わると今度は乾いた布を巻いた槊杖で銃身内を丁寧に拭く。火皿の滓を吹き払い穴を弄りで穿る。匙で慎重に火薬を計り銃口から流し込む。火皿に火薬を盛り、銃を傾けて軽くトントンと叩く。火縄に息を吹き掛けて……


 いつまでチンタラやってんだよ! こんなにのんびりしてたら第五使徒ラミエルが撃ち返してくるじゃんか!


『陽電子、加速再開! 目標に再び高エネルギー反応! まずいっ! 楯が持たない!』


 大作は心の中で一人芝居を続けるが決して顔には出さない。例に寄って得意の卑屈な笑みを浮かべながら上目遣いに顔色を伺う。


「あのさあ、萌。こんなに時間が掛かっていて大丈夫なのか? せめて三十秒くらいでやってくれないと実戦では使い物にならないぞ」

「そりゃあ実戦ではもうちょっと急がせるに決まってるじゃない。だけど今は命中精度のデータを取ってるんだもの。これくらい丁寧にやらないと意味が無いわよ」

「そ、そりゃあそうか。言われてみればそうかも知れんな……」


 痛いところを突かれた大作は曖昧な笑みを浮かべて頷くことしかできない。

 そうこうしている間にもようやく第二射が放たれる。今度も赤い目印の付いた棒が弾着箇所を示し、助手が紙に書き写した。

 またしても職人のおっちゃんは銃身を丁寧にクリーニングして……


 これはもう辛抱堪らん。こんな退屈な作業に付き合っていては退屈で死んじまうぞ。

 大作は『殺人犯と一緒の部屋にいられるか! 俺は自分の部屋に戻る!』といった感じでこの場を立ち去ろうとする。

 だが次の瞬間、視界の隅っこに二の丸から駆けてくる幼女の姿が目に入った。アレって誰だっけかな? ほのか? じゃなかった、未唯だ!

 息を切らせて走ってきた幼女は必死に呼吸を整えながら口を開いた。


「今ここに猫ちゃん(仮)が来なかった!?」

「何…… だと……!?」


 まさかこんなところでカリオストロの名セリフに出会うとは夢にも思わなかったぞ。大作は狂喜乱舞したい気持ちを抑えつつ銭形に変装したルパンになったつもりでハイテンションに叫ぶ。


「バッカヤロー! そいつがルパンだ! 俺に化けて潜り込んだんだ! でっかい図体して変装も見破れんのか、穀潰し!」

「ちょっと、大佐。それはちょっと非道じゃないかしら。いくらなんでも未唯が可哀想よ。それに未唯はでっかい図体なんてしていないわ。こんなにちっちゃくなっちゃったっていうのに」

「き、気になるのはそこかよ。って言うか、これはこの場面にピッタリの名セリフなんだよ。マジレスは勘弁してくれるとありがたいんだけどなあ……」


 予想外の反撃を受けた大作は思わず守勢に回る。だが、未唯はそれどころではないといった顔だ。


「そんなことより大佐、猫ちゃん(仮)がいなくなっちゃったのよ。さっき二の丸で遊んでいたら鉄砲の大きな音に驚いて走って逃げちゃったの。みんな探すのを手伝って頂戴な。きっと帰り道が分からなくて難儀してると思うわ」

「え、えぇ~~~っ! あの猫は銭百貫文もしたんだったよな? 勘弁してくれよ~~~!」


 大作があらん限りの声であげた絶叫は蓮池に響き渡る。女性陣や職人たちは勿論、遠くにいる門番までもが揃って顔を顰めた。


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