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巻ノ弐百拾 猫の名は の巻

 翌朝早く、まだ空が暗いうちから大作たちを乗せた二隻の大型船は堺の港を出港した。

 天気晴朗なれど波高し。北西の強い季節風を受けた帆船は順風満帆で大阪湾を滑るように南に下って行く。

 大作と同じ船に乗ったお園、藤吉郎、未唯、ほのかは船乗りたちの邪魔にならないように艫屋倉の辺りに固まって無駄話に興じていた。


「ねえ、大佐。ずうっと後の世にはこの辺りに関西国際空港っていう一里四方もある大きな島が作られるんだったわよねえ。エ○ァ第拾六話『死に至○病、そして』でリ○コ博士も『関空にも便を回すわ』って言ってるんでしょう?」

「何故、左様に大きな島を斯様な所に作られたのでしょうな」

「それはね、藤吉郎。騒音問題を気にせずに二十四時間運用するためなのよ。陸地だと文句を言うお方が大勢いるんですって」

「ほほ~う。これはまた驚かしきことを。されど、海の上ならば確かに文句を言う輩もおりませぬな。なるほど合点が参りました」


 こいつら本当に分かっているのか怪しいもんだな。大作はちょっと気にならないこともない。だが、深く掘り下げるほどの気力も湧いてこない。

 そう言えば猫はどうしているんだろう。そっちの方がよっぽど気になるんですけど。

 艫屋倉の扉を開けて覗き込むと中では未唯が猫と楽しそうに戯れていた。


「いいか、未唯。可愛がるのは結構だけど船が海の上にいる間は絶対に紐で繋いでおくんだぞ」

「分かっているわよ、大佐。もし海に落ちたらお陀仏だって言うんでしょう」

「それとトイレだ。ゴソゴソしだしたらすぐにトイレに放り込め。なんせ最初が肝心だからな」

「はいはい、分かってるってば。そんなに憂えないでよ、大佐。自分を信じないで頂戴な。大佐を信じる私を信じて!」


 これ以上はないといった未唯のドヤ顔を見ているだけで突っ込のも阿呆らしくなってくる。考えるのを止めた大作は艫屋倉に潜り込むと未唯と一緒に猫と戯れることにした。




 猫と遊ぶのに飽きた大作はお園とほのかを連れ立って艫屋倉の外に出ると景色を見て時間を潰す。

 お昼前には地島と和歌山に挟まれた加太ノ瀬戸を通過した。幅一キロ足らずの狭い海峡だ。僅か数百メートル先に陸地が迫ってくる。


「あの辺りには未来では深山第一砲台跡があるんだぞ。もうちょっと南には海軍由良水雷隊跡もあるしな。友ヶ島も合わせて遺跡マニアには堪らん観光スポットなんだとさ」

「どっちも跡しか残っていないのね」

「そ、そうだな。もちろん跡になるより前には跡じゃなかったんだけどさ。跡じゃない砲台や水雷隊が見たければ1945年より前に行ってみたら良いんじゃないかな?」

「そう、良かったわね……」


 大阪湾から紀伊水道へと出た途端、船が強い波に晒されて大きく揺れる。

 田倉崎を通りすぎると真っ直ぐ日ノ御崎を目指して真南へと進路を変えた。船は見る間に陸から離れて行く。


「何だか急に揺れだしたわね。ずっとこんな調子なのかしら。私めはちょっと気持ち悪くなってきたんだけど」

「来るときもこうだったんだろ、ほのか? 冬の紀伊半島沖なんてこんなもんだ。我慢するしかないな」

「う、うぅ~ん」


 冷たい北風に晒されて身も心も凍て付きそうだ。これは堪らん。風を凌げるところに退避せねば。

 再び艫屋倉へ戻ると猫を抱いた未唯が嬉しそうな顔で詰め寄ってきた。


「見て見て大佐。猫が厠で尿(しと)をしたわよ。流石は私の見込んだ猫よね。なんて利口なのかしら」

「ほほぉう、大した猫だな。将来が末恐ろしいぞ。まあ、この調子で頑張ってくれ」

「まかせて頂戴な。きっと糞も厠でするに違いないわね」


 部屋の隅っこではほのかが一心不乱にリュートを練習を始めた。狭い艫屋倉に上手いんだか下手なんだか良く分からん音色が響き渡る。って言うか、同じフレーズだけを何度も何度も繰り返して練習しているので聞いていると頭がおかしくなりそうだ。

 とは言え、一生懸命にやっているのに止めてくれとも言い辛い状況だ。大作は黙ってバックパックから耳栓を取り出すと反対側の隅っこに腰を降ろした。


 日が暮れる直前に白浜の跡之浦湾へと滑り込むように辿り着く。二隻の船は砂浜の端っこに適当に乗り上げるように停泊した。

 残念ながらこの地には梶原備前守の知り合いはいないらしい。一同はそのまま船で一泊することになった。


 夕飯は船が停泊しているお陰でマトモな物を頂くことができた。炊き立ての白米、現地で入手した魚を焼いた物、味噌汁も付いている。

 猫はどうしているのかと目をやると生魚の切り身をもらっているようだ。美味そうにがっついている。

 食後には駿河屋でお土産にもらった羊羹がデザートに出た。

 未唯が自分の羊羹を一欠片だけ切り取って猫の鼻先に置く。猫は不思議そうな顔で暫く匂いを嗅いでいたが、やがて意を決したようにそれを丸呑みした。


「この羊羹とっても美味しいわよ。あんな変てこな茶碗の代わりにこんなに美味しい物を手に入れるなんて大佐もなかなかやるわね」

「どうだ、惚れ直したか? そうだ! この白浜で羊羹と交換にもっと美味しい物が手に入らんかな? わらしべ長者作戦だ」

「私はこの羊羹で沢山だわ。制服さんの悪い癖ね。事を急ぐと元も子も無くすわよ」


 お園はちょっと馬鹿にしたような顔で鼻を鳴らす。

 なんて無欲な奴なんだろう。まあ、羊羹より美味しいお菓子を知らないんなら無理も無いか。大作は考えるのを止めた。


 夕飯を食べ終わたころには外はもう真っ暗になっていて出歩くのは危なそうだ。月が出ていないので夜間航行も危険が危ない。他にすることもないので一同はさっさと床に就いた。




 翌朝も空が真っ暗なうちに白浜を出港した。船は紀伊半島に沿って南東を目指す。昼前には潮岬を掠めるように回ると東に向かって進路を変えた。


「あの辺りには串本海中公園があって海中展望塔や半潜水型海中観光船があるんだぞ。付近一帯は世界最北のテーブルサンゴ群生地で珍しいサンゴもあるらしいな。ラムサール条約にも登録されているそうだ」

「ふ、ふぅ~ん」

「ちなみに明石家さんまは串本町の旧古座町生まれなんだとさ。育ったのは奈良市らしいけどな」

「そう、良かったわね……」


 これっぽっちも良さそうで無いんですけど。退屈そうなお園の顔を見ているだけで大作の心は折れそうだ。

 何かナウなヤングにバカウケしそうなキャッチーなネタは無いんだろうか。無い知恵を絞って頭をフル回転させるがマトモなアイディアが何一つ湧いてこない。


「無理しないで良いわよ、大佐」

「左様にございます、無理は体に毒でございますぞ」

「そ、そうだな。ちょっと休ませてもらうよ」


 大作は卑屈な笑みを浮かべて黙って引っ込むことしかできなかっ…… いやいや、まだだ! まだ終わらんよ! 無駄薀蓄こそ人類の夢だから!


「知っているか、お園? ここからもうちょっと行った紀伊大島の樫野埼東方海上でオスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が遭難したんだぞ。何とびっくり、助かったのはたったの六十九人。五百八十七人もの方がお亡くなりになったんだそうな」

「えぇ~っ! その船には六百五十六人もの方が乗っておられたって言うの? どれだけ大きい船だったのかしら」

「気になるのはそこかよ~! 確かそんなに大きくはなかったはずだぞ。どれどれ…… 木造フリゲート艦エルトゥールル号は1864年建造で艦齢二十六年の老朽艦。全長は七十六メートルだったらしいな。サスケハナ号の全長が七十八メートルで三千八百トンに対して乗組員三百人だろ。それに比べたら凄い過積載かも知れんな。って言うか、こんだけ人がいたら食料や水の減りが半端ないぞ。大航海時代のゲームでもガレー船に五百人乗せてると食べ物がみるみる減ってくんだもん。奴らはまるで(イナゴ)の大群みたいだったな」

「それは難儀なことねえ。だからといって粗末な御飯じゃあ船乗りの方々も体が持たないでしょうしね。軽くて嵩張らず、それでいて美味しくて滋養たっぷりの食べ物が入用よ。さぁ~あ、みんなで考えましょう!」


 唐突なお園の提案により長期航海中の船乗りたちに向いた保存食の検討会がはじまってしまった。

 でも、それは無理な相談なんじゃないのかなあ。二十一世紀でもそんな便利な物は発明されていないんだし。海自の潜水艦なんかでも食事に関しては凄い苦労をしているみたいだ。

 とは言え、これといって他にすることもない。大作は腹を括ると車座に加わって激論を戦わせた。




 紀伊大島を通り過ぎた辺りで船は東北東へと進路を変える。このまま夜通し航海を続けて下田まで三百キロを一気に駆け抜けようというのだ。このコースなら少しくらい進路が北に逸れても陸地にぶつかる危険は無い。

 この時代の常識では陸地が見えなくなるほどの沖合を夜間航行するなんて命知らずの危険な行為だろう。ましてや月も出ていない夜にやるなんて自殺行為にも等しい。

 とは言え、往路での夜間航行のおかげなんだろうか。船乗りたちの感覚もすっかり麻痺してしまっているらしい。この無茶なプランも何の反対も無く受け入れられていた。


 西の空に日が傾いたころ検討会は何の結論も出せないまま夕飯の時間となった。一同は船倉に降りて夕食を頂く。そのメニューは朝に炊いたご飯と朝に焼いた魚の残り物だった。どうやら汁物は無いらしい。

 猫には焼き魚から塩分を洗い落とした物が与えられた。気のせいかもしれないが猫の顔がなんだか不満気に見えてしょうがない。


「ねえ、大佐。今夜は港に泊らずに夜通し海を進むんでしょう? もしかして明日の朝餉や夕餉もこんな調子なのかしら?」


 やり場のない怒りを含んだ口調でお園が愚痴を溢す。生気の無い表情と狂気を孕んだ瞳は鬼気迫るといった雰囲気だ。これはもう駄目かも分からんな。

 取り敢えず何でも良いから希望を与えておかなければ。大作は口から出まかせの希望的観測で誤魔化しを図る。


「明日の朝餉は船で炊くんじゃないかなあ? だってお櫃の中が空っぽなんだもん。それともアレか? 私が魔法の壺を持っていて、そこから炊きたて御飯が湧き出て来るとでも奴は思っているのか?」

「奴って誰のことかしら? だいたいそんな有り難い壺があったらこんな苦労はしていないわよ。とにもかくにもそれを聞いて安堵したわ」


 食後には例に寄って駿河屋の羊羹を頂く。残念ながらお茶を用意することはできない。だが、甘いデザートが出ただけでもお園の機嫌は目に見えて良くなった。

 だったらデザートを先に食べたら良いんんじゃね? いやいや、それじゃあデザートとは呼べんよな。大作は頭を振って阿呆な考えを頭から振り払う。

 猫にも羊羹の切れっ端を少しだけやる。猫は例に寄って暫く匂いを嗅いでからそれを丸呑みした。美味しいのか美味しくないのか知らんけど与えられた物は黙って食べる。それが彼の処世術なんだろう。


 他にすることも無いので艫屋倉でみんなで固まって床に就く。少し肌寒いので猫は格好の湯たんぽ代わりになった。大作はお園の反対側に未唯を侍らせ、二人の間に猫を配置する。


「猫は暖かいなあ。猫は心を潤してくれる。リリンが生みだした文化の極みだよ。そう感じないか? 未唯君」

「やっぱ猫は人類の至宝。まさに科学の勝利ね」


 この晩、大作はお園と未唯と猫の温もりを感じながら安らかな眠りに就いた。就いたのだが……


 草木も眠る丑三つ時。狭苦しい艫屋倉の中は寄せては返す波の音、吹き付ける北風の音、船体がギシギシと軋む音に満たされていた。

 騒音に加えてお園と未唯の寝相や船の揺れも相まって安眠には程遠い。大作はもう何度目になるか分からない中途覚醒に苛まれていた。


 その時歴史が動いた! じゃなかった、その時不思議な事が起こった!

 カッポ! カッポ! ゲェッ! どこからともなく奇妙な音が聞こえてきたのだ。

 これってもしかしてゴルゴムの仕業か? おのれディケイド、よくもこの儂を謀ったな! いやいや、船に穴でも開いて浸水してるんじゃなかろうな? だったら大変だぞ。こうしてはおれんぞ。

 大作は慌てて飛び起きるとバックパックからLEDライトを取り出して点灯する。

 だが、目に飛び込んできたのは気持ち悪そうな顔で首を伸ばしている猫だった。って言うか、もう吐いちゃってるやん!


「お~い、未唯! 起きてくれ。猫がゲロを吐いたぞ」

「うぅ~ん。勘弁して頂戴な、まだ夜の夜中じゃないのよ」


 眠そうに寝ぼけ眼を擦りながら未唯が気怠い返事をする。


「あのなあ、猫は夜行性なんだぞ。朝も夜もあるわけないだろ。それにしても凄い量だな。きっと餌をやり過ぎたんだ。体重三キロの猫の胃袋は百八十ミリリットルくらいなんだとさ。これって小さい缶コーヒーより少ないんだぞ」

「缶コーヒー? それって美味しいの?」


 目を瞑ったままのお園がうわ言のように相槌を打つ。ってか、これって寝言なんだろうか? 寝言に返事をすると魂が戻れなくなるとかならないとか。


「知らん! 俺は紅茶派だからな。とにもかくにも、未唯。飼い主なら責任を持って面倒を見てくれよ。お前の猫なんだからさあ」

「私、できたら面倒ごとには関わりたくないんだけどなあ」

「いやいや、動物を飼うっていうことはその命に責任を持つってことなんだぞ。当然のことながらそれに付随する大小便やゲロの始末も含まれるんだ。それが嫌ならaiboでも飼っとけって話だな」

「相棒?」


 寝ぼけた顔をしていた未唯が急に瞳を輝かせて詰め寄ってくる。何がこいつの琴線に触れたんだろう。分からん、さぱ~り分からん。


「はい~ぃ? それは右京さんとかの話だろ。とにもかくにもゲロの始末だ。糞と違ってそんなに汚くもないんだからさあ。ってか、何だか臭わないか? これってもしかして…… ウンチもしてるじゃんかよ。うわぁ~ん。もう、堪らんなあ……」

「何か摘む物か掬う物は無いかしら。私、猫の糞なんて手で触るのは嫌だわ」

「そんなの俺だって真っ平ご免の助だぞ。そこら辺に板切れか何か落ちていないか? それか、草鞋の裏で持ったらどうじゃろ?」

「私のは嫌だからね。大佐のでやって頂戴な」


 下田に着いたら猫の糞を始末する菜箸やヘラを用意すること。大作は心の中のメモ帳に極太明朝体で書き込んだ。




 その後もお腹を空かせた猫に起こされたりお園が変な寝言を喋りだしたりで気の休まる暇が無い。お陰で大作は安眠とは程遠い酷い寝起きだった。

 翌朝、東の空が白み始めると船は大海原の真っ只中を漂うように浮かんでいた。周囲三百六十度が見渡す限り海、海、海。まるで太平洋の遥か沖合に流されてしまったような景色だ。

 恐らくは数十キロほど北に遠州灘が広がっているはずだ。しかし霞のような薄靄に覆われて何も確認することができない。

 陸地が見えなことには現在位置を知る術もないので船は取り敢えず北東へと進路を変えた。


 朝食は期待していた通り炊きたての白米だった。残念なことにおかずは魚の干物と漬物しかない。とは言え、予定通りなら夕飯は下田で食べられるはずだ。

 いかにスカッドとはいえ、ここから急に船が漂流して伊豆の鳥島に流れ着くなんて超展開は無いだろう。

 捕まえたアホウドリを食いながら百四十三日間のサバイバル生活をしているうちに小田原征伐が終わってたっていうのも意外と面白いかも知れんけど。

 大作はそんな阿呆な想像をして一人ほくそ笑んだ。




 食器を丁寧に洗って返した大作たちは艫屋倉へと戻る。一足先に戻っていた未唯は猫に魚の干物をお湯で柔らかくした物を食べさせていた。


「なあなあ、未唯よ。その猫の名前ってどうなってんだ?」

「名前? 猫の? 猫に名前なんて入り用なのかしら」

「だって名前が無いと困るだろ? 吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。みたいな?」

「この猫は堺で生まれたんじゃないかしら。知らんけど」


 未唯は猫に向き直ると鼻先を軽く指で突っ付いた。


「いやいや、そういう問題じゃあないからさ。とにもかくにも名前がないとアレだろ。さ~あ、みんなで考えよう!」

「考えようって言われても私、猫の名前なんて思いも付かないわ。大佐が考えてちょうだいな」

「いやいや、飼い主のお前が責任を持って立派な名前を付けてやるべきだと俺は思うな。ちなみにシュレディンガーはNGワードだぞ。半分死んだ猫なんて嫌だからな」

「その猫は確か雄だって言ってたわよね。だったらナントカ丸とかで良いんじゃないかしらね?」 


 困り果てた顔の未唯を見るに見かねたんだろうか。お園が横から助け舟を出した。

 だが、未唯はさぱ~り分からんといった表情で首を傾げる


「ナントカ丸? それって小田原でお留守番をしている小姓だったわね? あの小姓が未唯の猫と何の繋がりがあるのかしら」

「いやいや、お園が言ってるのはあいつのことじゃないよ。○○丸みたいな? ○のところには一文字以上の任意の文字が入るんだ。正規表現の『.*』みたいなもんかな?」

「違うわ大佐。『*』は直前の文字の0回以上の繰り返しにマッチするのよ。『.』は任意の一文字にマッチするんだから『.*』は0文字以上の任意の文字を表すことになるわ」

「そ、そうだな。ご丁寧に解説してくれてありがとう。んで、話を戻して良いかな? 大事なのは他と被っていないユニークな名前を付けろってことなんだ。ネバーエンディングストーリーのクライマックスを思い出して素敵な名前を考えてくれよ。な? な? な?」

「しょうがないわねえ~ まあ、みんなで考えれば良い名前の一つや二つくらい思い付くんじゃないかしら。さ~あ、みんなで考えましょう」


 いったいどういう風の吹き回しなんだろうか。急にやる気を出したお園が音頭を取って猫の名前会議が始まる。

 他にすることも無い一同はああでもない、こうでもないと互いに変てこな名前を次から次へと挙げて行く。


 お昼前には北の彼方に陸地が見えてきた。海に突き出すような小高い丘から見て御前崎らしい。だとすると下田まで残り八十キロってところだろうか。どうやら日没までに辿り着くことができそうだ。

 ほっと安堵の胸を撫で下ろした大作は猫の名前会議に意識を戻した。


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